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天の艦隊 ~人類絶滅指令~  作者: はかはか
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ふたつの希望 その13

 宇宙では、地上とは異なり、視界を遮るものが全く無い。

 戦場は、自ずから相手の状況が丸見えになり、互いの手の内を曝け出したまま戦う事になる。

 そこでは、勝敗を決するのは、ふねの数、攻撃種類の質量、艦隊運動の練度、そして、艦隊司令官の能力であり、これらの条件は、ひとつでも欠けてしまったら大きなマイナスになってしまう。

 ……筈だった。

 ≪ネオ≫との戦いが始まる頃、戦力的に優勢だった連邦側は、遅かれ早かれ勝利で終わるだろうと楽観視していた。ふねの数は、連邦軍が上回り、経験豊富な司令官が揃っている。機械は柔軟性に乏しい。例え、冷徹無比なAIが相手でも、数字が見せる現実を引っくり返すのは極めて難しいと思われていたのだ。

 しかし、≪ネオ≫は、AIである。AIには、人間を遥かに凌駕する情報処理能力と伝達能力がある。連邦軍艦隊の僅かな判断ミス、連携の遅れを見逃す事無く、劣勢の艦隊量を緻密な運動力で補う事で戦力差を縮める戦いをした。連邦軍が戦術を変えれば、過去のデータに照らし合わせて、最も被害の少ない対応を早急に採る術を身に付けていた。

 最低でも引き分けさえすれば、次に勝つチャンスが出て来る。数を頼みに攻め寄せて来る連邦軍を相手に、≪ネオ≫は致命的な敗北を避けながら戦いを続けた。

 そんな中、ようやく≪ネオ≫が連邦軍に対して主導権を奪った戦いが≪ケープタウンの戦い≫だった。

 当時、遠方の≪ネオ≫との戦いが続いていた事で、長距離の補給を強いられていた連邦軍は物資輸送に大きなコストをかけていた。そこで、連邦軍は、前線との中間点に位置していた惑星≪ケープタウン≫に巨大な補給基地を造り、莫大な物資を≪ケープタウン≫に送り込んだのである。

 ≪ネオ≫は、機械らしからぬ賭けに出た。

 手持ちの艦艇のほとんどを使って、≪ケープタウン≫への遠征を行ったのである。

 連邦軍の前線二個艦隊をスルーしてまでの強行策だった。失敗すれば、≪ニューフロリダ≫は丸裸になり、≪ネオ≫の敗北は決定的になる程の奇策だった。

 充分な防衛艦隊を置かず、予想外の攻撃を受けた≪ケープタウン≫は、徹底的な破壊を受けてしまう。

 連邦軍の前線部隊は、物資補給もままならず、艦艇・兵員の八割を失うという前代未聞の敗北を喫してしまった。

 戦力の立て直しに時間がかかってしまった人類を他所目に、≪ネオ≫は支配域を一気に広げる。その後、数年で連邦支配地域の六割を手中に収めてしまった。

 それ以降、主導権を失った人類は、二度と勝利を得る事が出来なくなってしまったのである。

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