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天の艦隊 ~人類絶滅指令~  作者: はかはか
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ふたつの希望 その12

 エアカーは、静かに艦隊本部の建物を通り過ぎ、広大な敷地を奥に進んで行く。

 かつては、ユナもこの景色の中で軍服に身を固めていたひとりだった。敗北続きの焦燥感漂う中で、何とか反撃に出る為のきっかけを見付け出そうとしていた。

 艦隊本部の施設が集中する辺りを過ぎると、車は森が広がる一帯に吸い込まれて行った。森の地下には、敵の攻撃を避ける為に強化装甲で守り固めた艦隊基地が何層にも重なっている。

「結局、全て君の言う通りになってしまった。君は、まるでノストラダムスだな」

「私を怪しい占星術師と一緒にしないで下さい。私の説は、厳密な計算に弾き出された結果を元にしています」

「君の頭脳を理解する想像力が我々に足りなかったという事だ」

「先生は、私の味方をして頂きました」

「いやあ。結局、君に失礼をしてしまったよ。作戦計画書を作らせておきながら、何の結果にも繋げられなかったんだからな」

「それでも、私は嬉しかったです……」

 ユナは、目を細めて足元を見詰めた。


 しばらくして、車は地下施設に沈み行くスロープを軽快に下っていた。

 トンネルの中は、天井に据え付けられた高規格ライトで煌々と照らされている。

「貴重な資源をこんな所で垂れ流しているんですか?」

 ユナがまた責めるような口調で言った。

「軍の施設じゃよ。手抜きは許されん」

「軍を支えるのは、名も無き市民です」

 ユナの断固とした口調にグレイナーは苦笑いをした。

「もう、そんな事を言ってられる時期では無い。人類の存亡がかかっているのだ。明日の生活の為に今日の犠牲には目を瞑らねばならん」

「その考え方は嫌いです」

 ユナは、自分の前から姿を消して行った多くの知人達の顔を思い浮かべた。

「結局、損するのは市民ばかりなり……」

「その市民を君の手で救ってやって欲しいのだよ」

 グレイナーは、柔らかな声で白い壁面を眺めているユナの後ろ姿に向かって言った。

「……もう、今となっては遅いですよ」

 ユナは、振り返りもせず答えた。

「まだ、あの時なら、何とかなったんです」

 あの時なら……。

 まだ、連邦軍の戦力が揃っていた時に≪A計画(Aプロジェクト)≫を実行に移していれば、≪ネオ≫に勝利するチャンスは何割かあった。

 あった筈だ。

「今は、何も残っていません。何も……」

 ユナの見せる寂しい横顔を見ながら、グレイナーは意味有り気な笑みを浮かべていた。

 まるで、ユナの本音を見透かしたかのような笑みだった。

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