第2章 それは願いのような約束 そして僕たちのルール
~それは願いのような約束~
僕たちは、大地を動かす。山を動かす。川を作る。
そして、その地が持っているエレメント、
火、水、土、風、光などを使って、大地の力を整えることも出来る。
だけど、必要とされているところ、必要とされている分だけにすること。
僕らが星のために、人のために手を加えすぎてはいけないんだ。
世界は広い。
助けを求めているところ、僕らを必要とするところに果てはない。
最初の石の人が生まれてから長い時間が経っているけれど。
君たちが痛まずに生きていられるように、泣かずにすむように、
助けを求める所に僕たちは行く。
それは、願いのような約束。
僕たちを突き動かすもの。
僕たちの全てを掛けて、守りたい、助けたいという気持ち。
急かされる思いがある。
僕たちは旅をする。
星の中に還る、その時まで。
~僕たちの、お仕事~
最初の石の人の中には、やる気に満ち溢れていてテンション高めの人もいたかもしれない。
やるぞーとばかりに、ね。
石山の尖りをパクっと食べたり、ペンペンと叩き直して、なだらかな山に作り変えたり、
ハイハイハイっと山を寄せて集めてみたり、かっこいいから少し尖り山を残したり。
湖を作ったり、見事な滝も出来上がる。
石の人は小さいの大きいのといるから、小さい石の人は大きな人が削った石を食べて地面を綺麗にしてくれる。道を作るのも得意なんだ。まっすぐも曲がったのも、ぐんぐん作っていく。おんなじ要領で、川も作るよ。狭い川を広げたりするのも大事な仕事。
段々と、美しい住みよい星になっていくんだ。
けど、やることが山積みなんだ。
干からびてたり元気のない土地を、エレメントや、お水で整えたり、緑を増やすために種や苗を植えたりもする。旅をしながら、新しい種や苗を僕らは集めたり、石の人同士で交換したりもする。
声を聞くのも、お仕事なんだと思うんだ。
大地・土地の声を聞く
君たちの声を聞く
必要とされるところ、助けを求めるところに僕は行く。
そして、僕らは旅をする。
~星に還る魂の旅 石の記憶
石の人にも寿命がある。
僕たちが足を止める時も来る。
でも、大丈夫。思いは繋がっていくから。
寿命が尽きた体は岩山になるかもしれない。
ぽっこり三角の緑の山になるかもしれない。
大地の上に何も残さず消えていくかもしれない。
大きな体から石の玉に戻るだけ。
心、僕達の核となるもの、命、魂が固まったようなもの。
僕たちは命石と呼んでいるよ。
命石の姿で少し眠っていると、だんだん沈むように溶けるように星の奥に進んでいく。
僕たちは、石の形の光のようなものになっていく。
そのくらいになると、沢山の僕らで溢れていて賑やかなんだ。
僕たちの旅の記憶を交換しあったり、おしゃべりをする。
果たせなかった思いや願いも、伝え合う。
僕たちは、ついには光になって混ざり合っていく。
そして、また新しい命石になって核になり生まれる。
だから、石の人として生まれたとき行かなきゃならないところが解ってるんだ。
僕たちが兄弟だった頃の記憶も覚えてる。
人として生まれると、命石の頃の記憶を忘れてしまうのは何故だろう。
生きることに精一杯だからかな?
短い命を精一杯生きないといけないからかな?
でもね。人の記憶の中にある、心の豊かさや感情の動き、経験の濃密さに圧倒される。
きらめくような命の記憶。
僕たちのことを忘れてしまうのは少し寂しいけれど、
命の煌めきを持つ、この可愛い人たちを守りたいと思うのだ。