第1章 うまれた。
~僕達の旅~
僕達は一つの大きな星になろうとしていた。
僕達の大きさは色々。形も色々。色も色々。
大きいの、小さいの、とげとげの、丸いの、ごつごつしたの。
見た目は違うけれど、愛しい兄弟。
星の欠片の兄弟。
僕たちは、一つになろうと決めた。
どんな星になろう。
想像は広がっていく。
それはもう、嬉しくてワクワクする喜びの時。
けれど。大きくて黒いモノが僕達を吹き飛ばしてしまった。
あるいは、揺らぎ。大きなモノの、くしゃみのようなもの。
離れていく。離れていく。
この途方も無く広い宇宙の中では、どこまでも引き離されて2度と会えない。
怖かった。
どうにも出来ないまま、離れていく。
悲しい。
僕らの中の奥底に、締めつける様な痛みが走る。
大好きな兄弟から離れていく。
大好きな兄弟が離れていく。
僕たちは、叫ぶ。
兄弟たちの名を。
僕たちは悲しみを知っている。
喜びを知っている。
そして、愛しいものが消えていく恐ろしさを知っている。
愛しい者が壊されて、そして自分から離れて行く悲しみ。恐怖。
自分が傷つくよりも、愛しいものが傷つくのは恐ろしいこと。悲しいことを知る。
だから、僕らは心の痛みを知っている。
散り散りになった僕らを救い集め、彼女と彼は,涙も僕らも包み込んで星になった。
そして、僕らは生まれる。
柔らかで小さな体。
僕らは生まれる喜びを知る。
~生まれた。~
彼女は海の姫、彼は地の王だった。二人は結ばれて、新天地を求めていた。
散り散りになろうとしてた僕たちを救い集めて息子・娘として体をくれた。
あたたかで柔らかな体を。
そして、僕らは、ここで生まれて生きていく。
生まれて間もない、この世界・星は柔らかな肌の僕らには厳しいものだった。
荒々しい世界。
この星もまた、生まれて間もないのだ。
天気、気候。自然は容赦なく僕らに試練を与える。
山は緑多い起伏の優しいものではなく、尖った剣山のような岩山が連なっていたし、
雨が降れば、容赦なく僕達に押し寄せる。
晴れても、強すぎる光が僕らを照りつける。
これからの世界。人も、この世界も、これから育っていく世界。
僕らは生まれる順番を、星の中で待っている。
彼女は、人が生きるには厳しい環境に心を痛めていた。
僕らは体を与えられて人として生まれることが出来る。
僕達の兄弟であるヒトが困り果てている。
彼女が悲しみ、困っている。
星には、なれなかったけれど兄弟と共に生きていける。
ありがとうしかないのに。
涙が流れている。
「助けて」と、声がする。
喜びしかないはずなのに。
ならば。
僕達が、頑張れば良い。
柔らかな体でなくても良い。僕達が出来ることが出来るように。
体は大地から貰えばいい。
そして、僕らは生まれた。
僕らは大地を動かす。
人として生まれるか、石の体を持って生まれるか、それは生まれる時に決まるけれど。
心、僕達の核となるもの、命、魂。
それは、同じもの。
だから。僕らは、ずっと兄弟で有り続けられるのだ。
愛しいもの。それは、ずっと変わらない。
僕たちは、大地を動かす。山を動かす。川を作る。
助けを求める所に僕らはいく。
だって。僕達が生まれたのは、その為だから。
行かなくちゃ。早く早く。急かす思いがある。
愛しい君たちのいる所に僕らは行く。
旅をしながら、僕らは行く。
~旅~
僕は旅をする。
僕らは旅をする。
一つドコロに留まることも出来るのに。
でも、どうにもならない気持ち。
先へ。僕に出来る限りの、僕の命いっぱいを使って前へ。
だって、進んだ先に君がいる。
君たちがいる。
時には、思いを受け取って僕が引き継ぐ。
僕が足を止める日が来たとしても、
僕の思いを引き継いで、先に進む。
いつか、星に戻る。
そして生まれる。