表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

15.桜の後に

連続投稿しています。最終話です。

 サークルと部室だけの棟、通称『マンション』の一室で、シンヤは相棒のマシンに向かっていた。

(なんでオレがこんな文章を打ってんだか)

 止まらぬ早さで書かれているのは、月刊活動紙の記事だった。


『花見速報! 意外な穴場は近くにある! 大学近辺のツツジの状況は下の地図でバッチリだ! 一緒に食べたいお弁当屋さんは、おにぎりマークで示しているぞ! 彼女と一緒なら手作りがいいけど、たまには俺が作ろうかなっていう彼氏のために、花見弁当のレシピもつけたぜ!』


「シンヤ、レシピ完成したよ!」

「OK、『フミヒコ』。ん、いい感じ。これ、どうしたの?」

「彼女に教えてもらったんだ~」

「へえ、あのOLの?」

「そう。おかげで俺も料理にハマっちゃったよ」

「助かるよ」

(フミヒコも、あんないい彼女置いていっちゃって)


「シンヤ、弁当屋のデータそろったよ~」

「サンキュ、『アキラ』。じゃ、こっちの地図におにぎりマーク描き込んで」

「わかった」

(アキラも1回くらい活動紙を書いてみれば良かったんだ)


 ノックが響き『アオイ』が入ってきた。

「シンヤ、ツツジの絵、描き終わったわよ」

「早いね『アオイ』。うん、相変わらず繊細な絵だね。OKだ」

「それじゃ、私はこれで失礼するわね」

「ありがとう。またよろしく」

(『アオイ』はすぐに戻ってきたのに、顔も見せないんだからな!)


 シンヤの隣でノートパソコンを打っていた少年が顔を上げた。

「シンヤ、怒ってる?」

「べつに」

「怒ってるよ」

「怒ってない!」

「怒ってるって」

「しつこいぞ。オ・レ・は・お・こ・っ・て・な・い。わかったらさっさと編集しろ」

「はいはい。ったく鬼編集長なんだから」

 ぎろり、と少年を睨むシンヤ。

「やりま~す」

(ったく、しかもアイは大学にいないようなもんだから、人数合わせに苦労したぞ。マスターの息子って聞いた時は驚いたけど、こいつが暇してて本当に良かった)


 はぁ、とシンヤの口からため息がもれる。

(別に今のメンバーに不満があるわけじゃない。オレがアキラと同じ立場なら同じ事をしただろうし。地球人を巻き込みたくなかったのはわかる。わかるんだけど……)

 シンヤがキーボードを打つ手が止まっていた。


(「きっと戻ってくるよ」って、アサヒ兄さんは言ってたな。オレも信じたい。きっと、きっと無事に戻ってくるって。戻ってきたら覚えてろよ? まずはアキラを思い切り殴って……)


 ノックの音がシンヤの思考を遮った。


「はい?」

「すいませ~ん、見学したいんですけど」

「どうぞお入りください」

 営業スマイルで、シンヤはドアへと向かった。

 新入生が入ったばかりの今は勧誘のピークなのだ。

(あいつらが帰ってくるまでは、部活に昇進することを目標に頑張るしかないな)

 シンヤの目の前で、勢い良くドアが開いた。

「ただいま~。じゃなかった、初めまして~」


 そうして、黄昏の時間はまだまだ続く。

読んでいただき、ありがとうございました。

これで完結です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ