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12.解けない封印

「完全ふっか~つ!!!」

「キャラが違うぞ、キャラが!」

 翌朝、腕を上げて立ち上がったシンヤにアキラが突っ込んだ。

「いいじゃん、たまには。でも思ってたより早く治ったな。もしかして傷、浅かった? オレ痛がりすぎ?」

「アオイのおかげだよ」

 控えめなフミヒコの言葉に、アキラが意外そうな顔になった。

「アオイの?」

 にぎやかな声にひかれて部屋に入ってきたアイが、すっかり元気そうなシンヤに目を丸くする。

「え、一晩で治ったの? シンヤ……ほんとに人間?」

「こんな時にジョークか?」

「まさか。だって、ひどい傷だったのに……」

「『癒しの手』だからな。死んでいなければ治せる」

 アイの後ろからアオイも入ってきた。

「アオイの能力?」

「そうだ。さすがに術者はどっと疲れるけどな」

「ああ、だから昨日はぱたっと寝ちゃったのね~」

 シンヤはあらためてアオイに向き直った。

「ありがとう、アオイ」

「気にするな。こちらこそ、私をかばってくれたこと感謝している」

 初めてアオイがにっこりと笑った。

 どこか余裕のある笑みは、政治家や会社の役員といった様子だ。

 ちょっとアオイに見入っていたシンヤが尋ねた。

「ええっと、それで昨日はどこまで話したんだ?」

 そのまま詳しく話したかったけれど、テスト前ということもあり、大学で五人はそれぞれの授業を受けた。

 昨日、襲われたこともあるので、アオイにはアイがずっとつくことになった。


 昼休みになって、食堂で食事がてら話し合うことになった。

「どう? なにもない?」

「今のところ大丈夫よ」

「良かった」

 心配そうなフミヒコにアイが笑顔で答えると、アキラも笑った。

「で、どうする?」

 だいたいアキラから事情を聞いたらしいシンヤが切り出した。

「相手の出方を待つか、こちらから行くかか?」

 鋭く返したのはアオイ当人だ。

「うかつに手を出したくないなぁ……」

 アキラにしては慎重な意見だ。

「なるほど。それは当然だな。なにしろ向こうは本気だから、私がここにいると知れば、この学校ごと葬り去ることすら惜しまないだろう」

「学校ごとって……戦争でもしてるの?」

「……そうだな。こちら風に言えば、『革命戦争』といったところだろうか?」

「聞いてない」

「言ってなかった」

「おいおいアオイさん。困るなぁ、知ってることは全部話しといてもらわないと」

「すまない。昨日は寝てしまったからな」

 アオイが寝落ちしたのはシンヤを助けてくれたからなので、黙ったアキラに変わってシンヤが問う。

「他には? まだ話してないことってあるのか?」

「味方とは別行動で私のすることがあったはずなんだが、それがさっぱり思い出せない。でも、それを済ますまで味方と連絡を取らない、という取り決めだったのだが……」

「結局、なにをするのか思い出して済まさないと話にならないってことだね」

「ということは、アオイの『封印』を先に解かないといけないのか」

 フミヒコにシンヤが答える。

「『解析』なら味方の中に強い能力者がいるが」

「連絡とっちゃいけないんでしょ?」

「……そうだ」

 重くなった空気の中、アキラが立ち上がった。

「とりあえずサークルに入ってもらおうよ。ちょうど5人だし、一緒に行動するのには便利だろ」


 さっそく放課後、アキラが教授に顧問を頼み、アオイは将棋部にサークルにも入ることを伝え無事にサークルを仮設立できた。

 サークルとサークル、サークルと部は併属できるらしい。

 サークルを本設立するには、3ヶ月の活動報告書を提出して、それが有効と認められてからだとか。

「将棋活動に支障無いように、と言われたぞ」

とのアオイの言葉から、建前の活動である旅行も、本来の目的である人間から無形宇宙人を分離させる方法を探すことも、今はなし。

 目下の目的は、アオイの『封印』を解くこと。

 サークル名は本設立時に登録するので、それまでに考えておくことが宿題になった。

「『若き青春の熱い絆』とかどうだ?」

「アオイはなんでそんな名前を思いつくのかな~? もっと『トラベラーズ』とかでいいじゃん」

「アキラはありがちすぎるよ。もっとひねって『ベラベラーズ』とか」

「え? もはや中身がわからないんだけど」

「えー? なんでだよ」

「……ごめん、僕、ちっとも浮かばないや」



「で、どうよ?」

「もうちょっとって感じもするんだけど」

「また失敗か……」

 あれから再三、アキラはアオイの『封印』を解こうと試みてるんだけど、さっぱり解けそうになかった。

「俺、思うんだけどさ~。やっぱこの環境がダメなのかも。こんなカフェの一角じゃあ集中できないって」

 確かに今いる場所は、テスト期間中で人が少ないとは言え、学内カフェの一角だ。

 学内の方がアオイが目立たないだろうと、いちおう気をつかった結果だった。

「狭いけど私の部屋でする?」

「うちもまだ未使用だ。遠慮なく使ってくれ」

「いや~。室内よりさー、どっかのびのびできる場所の方がいいかな」

「つまり、アキラはどこかに行きたいってことだね?」

「フミヒコ正解!」

「正解じゃないだろ!」

 アイとシンヤがハモった。

「まぁ、本来こういう作業は、気候のいい場所で精神を集中してするものだ」

 思わぬアオイの助け船に、それみろ、とアキラ。

「わかったわ。じゃあすぐにでも行きましょ。アオイ、今日の予定は?」

「今日は無い。明日も無い。テストも終わったし、ちょっとゆっくりさせてくれ、と言ってある」

「じゃあ問題はないかしら?」

「あ、僕、バイト先に電話しないと」

「フミヒコ、別にバイト休まなくてもいいんじゃない?」

「そうだよ。オレも直接は力になれないし、バイトに出たいから途中で抜ける」

「シンヤもフミヒコも、いくらでも送り迎えしてあげるわよ」

「俺が頑張ってんだから、おまえらも働くよな?」

 アキラがにっこり笑いながら言った。


 でもテストも終わったことだし、まずは遊ぼうということになり、アイは四人を連れて湖畔に飛んだ。

 以前『山の家』を借りたように、今回は『湖畔の家』を借りる予定だ。

 湖に続く道を歩きながらシンヤがつぶやく。

「今からだったら3時間くらいか」

「あ。よく考えたら、そろそろクリスマスだし、連絡いれたってバイト休めなかったよ」

 フミヒコのバイト先は、スイーツが有名な喫茶店だ。この時期のスイーツ需要は高い。

 と、突然、道ばたにたっていたラッパ型のスピーカーからチャイムが鳴った。

『ただいまから湖畔レースを開催します。参加ご希望の方は、湖入り口中央右にて、エアバイクを借りてください。繰り返します……』

「行ってみる?」

 アイの問いかけに四人は頷いた。

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