第2章 〜欲望と未来のインターセクト〜 ➖探索編2➖ ⑱
「くそっ……!!どうなってやがる……!?俺の力でも開かねえだと……!?」
中に入ると、畑山さんがお風呂場の扉を必死で開けようとしていた。
畑山さんの力ですら、びくともしない。もしかすると、内側からも押さえつけられているのかもしれない。
すると畑山さんは手を止め、こちらを向く。
「確か、ここ2階にお風呂場を見下げられる窓があったよな!?そっから飛び降りればまだ間に合うはずだ!!」
「無茶です!!何メートルあると思ってるんですか!?」
二階からお風呂場の一階までの距離は約6メートル。そんなところから飛び降りれば、いくら畑山さんですらただじゃすまない。
「うるせえ!!お前は服でも着てろ!!俺がやらねえで誰がやるってんだ!?俺は倉庫に行って防具服か何かを持ってくる!!」
畑山さんは大浴場を出て倉庫に向かって走り出した。畑山さん、あの距離を本気で飛び降りる気だ。
なんとかしないと――
って、私バスタオル1枚じゃん!?
とっさに服を着て、畑山さんの後を追った。
「これか」
私と畑山さんは階段を降りて倉庫につき、数着合った防火服のようなものを着る。
「着るのは俺だけでいい!お前は戻ってろ!」
「彩里ちゃんとミソナさんは私の友達なんです!私も着ます!」
すると、畑山さんの目は変わり、覚悟を決めた目をして私の目を見る。
「どうなっても知らねえからな!」
畑山さんは着替え終わり、再び大浴場に向かって走り出した。私も早く着て助けに行かないと!
しばらくして着替え終わり、階段を登って大浴場へと向かった。
「なんなんだよこりゃ!!」
大浴場の2階に着くと、窓は粉々に割れ、部屋には熱がこもっていて焦げ臭い。そしてなにより、窓から下を覗くと、床が見えないほどに火が一面に充満していた。
畑山さんはその場にあった消化器を手に取り、引き金を引き、割れた窓から下の炎に向けて噴射していた。
「結衣!!水を大量に持ってきて俺に渡せ!!早く!!」
「はい!!」
私は階段を降り、大浴場を出ようとしたその時だった。
「はぁ……はぁ……貸しイチだからな……」
大浴場の入り口にいたのは橋田さんだった。橋田さんはホースのようなものを持ち、息を荒くしていた。
でも、どうして橋田さんが……
いや、そんなことよりも――
「ありがとうございます。これ借ります」
橋田さんの持ってきたホースを持ち、二階へ駆け上がる。それにしてもこのホースめちゃくちゃ重い。よくこんなもの、橋田さん持ってきたな。一体、どこに繋がってるんだ?
「畑山さん!これを使ってください!」
畑山さんにホースを受け渡す。
「こんなものがこのロケットにあったのか!?ありがとう!使わせてもらうぜ!」
畑山さんは引き金のレバーを押した。
すると、ホースから大量の泡が出てきて、炎にかかる。
「うおーーーーー!!七岡中熱血教師、畑山義昭を舐めんじゃねえーーーーー!!」
数十分後、炎は畑山さんによって全て消された。その姿は、まるで消防士のようだった。だが、ここから降りる手段がない。
「よし、ここから飛び降りれば骨折ぐらいで済むだろうか……いくぞ!!」
畑山さんはぶつぶつ言いながら窓枠に足を掛け、飛び降りようとしていた。
「ちょ……!!畑山さん……!!ダメですってば……!!」
私は飛び降りようとしている畑山さんの腰に抱きつき、必死で止める。
「離せ!!彩里が!!ミソナさんがいるんだぞ!!」
「畑山さんまで怪我したらどうするんですか!?」
「子供を守るのが大人の義務なんだよ!!」
言い合いは続く。ダメだ。私の力じゃ止められない。このまま畑山さんを離せば畑山さんは無事じゃ済まないだろう。
かと言って、他に手段はないし……
「お前ら本当にアホか。そこにある非常用梯子を使えばいいだろ」
「え?」
後ろを向くと橋田さんが左腕で口を押さえていた。橋田さんの右手で指を差す方向には非常用梯子があった。
「お、おう……」
畑山さんは非常用梯子を手に取り、梯子を下まで垂らした。
「危なくなったら、すぐ助けを呼んでください」
「わかった」
畑山さんは非常用梯子に足を掛け、降りていった。
私は窓から下を覗く。だが、畑山さんの姿は死角になっていて映らなかった。
「畑山さん!下の様子はどうなっていますか?」
だが、返事がなかった。
「畑山さん!返事してください!」
それでも返事はなかった。下で何かが起きている?こうなったら、私も降りるしか――
「俺は……俺はまた救えなかった……」
しばらくすると、ボソボソと畑山さんの声が聞こえた。
……救えなかった?
……救えなかったってなにを?
……救えなかった?
……救えなかった?
……救えなかった!?
「畑山さん!!今すぐ内側を開けられるようにしてください!!」
……
「畑山さん!!」
……
「おい!!熱血教師!!そこを開けろ!!」
すると、下の方で木の板が落ちるような音がした。私と橋田さんは下に行き、お風呂場の扉へと向かった。
扉が開いて、最初に私たちを迎えたのは熱い熱気だった。
きっと大丈夫。
彩里ちゃんもミソナさんも無事。
そう思っていた。
だが、私たちの眼球に刻み込まれた風景はその心を簡単に歪めた。
お風呂場の入り口には、皮膚の全身が赤くなった元七岡中学校生徒の山村彩里ちゃんと、主婦のミソナ・エレガントさんの死体があった。




