第2章 〜欲望と未来のインターセクト〜 ➖探索編2➖ ⑨
私たちは殺戮ちゃんに言われるがまま、4階の大浴場へと足を運んだ。大浴場の扉は木製でできており、まだ扉の前だというのに、檜の香りが微かに香る。
「じゃあ、最初に岩下ちゃん、山村ちゃん、山本ちゃんの女子3人組から入ってね♡先生たちは女子が出てくるまで入っちゃダメだよ♡」
殺戮ちゃんは手を前にして指でバツを作る。別に入浴するわけでもないのだから、入っても問題ないのではないんじゃないの?それとも、何かあるのかな?
「どうして入っちゃダメなんですかね〜?紹介ぐらいなら問題ないのではないんですかね〜?」
「プライバシーを配慮してよ♡もし、大浴場にいる人と違う性別が入った場合、扉の下に隠れているセンサーに反応し、レーザーで身体を撃たれ、サイコロステーキになります♡」
「サイコロステーキ!?」
殺戮ちゃんは笑顔で言った。
笑顔で言うことでもないんだけど。それに、サイコロステーキって何?よくわからないけど、レーザーで撃たれるのは嫌だな。
「えっと、つまりどういうことだ?」
畑山さんは理解が追いついていないようだ。確かに、今の説明だと少しわかりづらいな。
「簡単に言うと、女子が入っているときは男子は入っちゃダメ♡男子が入っているときは女子が入っちゃダメっていうことだね♡私は例外だけど♡」
「要は、覗き防止策ってことね!そうすれば、大黒先生が覗きに来ないから安心だわ!」
彩里ちゃんは大黒さんを指差して言った。
大黒さんはいつも疑われてるな。可哀想に。
「なんで僕なんですか〜!?」
「今のは束縛に追加しておくね〜♡」
ポケットから音が鳴る。ケータイを開くと、新たに束縛が増えていた。
(18.大浴場への異なる性別の入室を禁止します。)
「ということで、レッツゴー!♡」
私たち3人は殺戮ちゃんに連れて行かれ、大浴場の扉の奥へと進んでいった。
中に入ると、ホームセンターのような檜のいい香りが強く漂ってきた。
着替えの籠や体重計など、ここは脱衣所のようだ。
こんな場所じゃなければ、存分に寛げるのにな。
「ここからは、ここで自由に探索しちゃってよ♡大浴場のことでわからないことがあれば、どんどん聞いてね♡」
そういうと、花ちゃんは2階へ。彩里ちゃんはお風呂場の方へ散っていった。殺戮ちゃんと私は脱衣所に取り残される。
こんな子に構ってないでさっさと調べちゃお。
最初に目についたのは、小さな籠に入った五つほどの緑色の袋だった。
私はそれを手に取り、まじまじと見つめる。
「殺戮印の入浴剤強?」
「お客様、お目が高い♡それは、殺戮印の入浴剤強♡それをお風呂場に入れるだけで、5メートルの範囲でどんな匂いでも完全に消せちゃうし、美肌効果もある優れもの!♡」
胡散臭い説明を始めた。美肌効果はともかく、匂いを消せれるのは入浴剤と言えるのだろうか。
言葉通りの意味でいえば言えるけど、匂いを完全に消されるなんて聞いたことないし。
次に行こう。
「え、ちょ、無視!?♡」
殺戮ちゃんを無視して、2階のほうに行った。
「花ちゃん、何か見つかった?」
2階にいた花ちゃんに声をかける。花ちゃんは手を振って、笑顔で返してくれた。
「大発見だよ!なんと、この窓からお風呂場が丸見えなんだ!」
「大発見?」
花ちゃんの指差している窓に近づき、窓を覗く。そこには、大きな温泉のようなお風呂場と、探索をしている彩里ちゃんがいた。
ここから下まで6メートルぐらいか。飛び降りたら骨折しそうな高さだ。
「でも、なんでこんなところに窓なんてあるんだろうね」
「そんな深く考えなくていいよ。ここ、そういうの多いし」
主に、ガソリンスタンドとか。
「それもそうだね」
しばらく2階を探索したけど、これといって気になるものはなかった。窓もそんなに怪しいとは思わないし。しばらく花ちゃんと話した後、彩里ちゃんのいるお風呂場に行くことにした。
「でか!?」
上から見てたから大きいのは知ってたけど、いざ見ると本当に大きいな。パッと見、縦横20坪ぐらいはあるな。
それに、もはや温泉。
そもそも、なんでこんなでかいお風呂場がこんなロケットに?
「どうやらここは、天然温泉みたいね……」
奥で探索をしていた彩里ちゃんが呟いた。
「どうして温泉だって言えるの?」
「殺戮ちゃんが言ってたから〜!」
前言撤回をして申し訳ないが、温泉なわけないでしょと言ってあげたい。だって、ここはロケットなわけだし、天然温泉なんてどこから湧いてくるのやら……
「ここも特にこれといってなさそうだね」
「そうだね。温泉での探索はこれくらいかな」
その後、私たち3人は殺戮ちゃんの指示で、大浴場から出た。外では暇そうにしている畑山さんと大黒さんがいた。
「やっと戻ってきましたね〜。では、僕たちも行きましょうかね〜」
「そうですね――」
「おい、待てや!」
大黒さんと畑山さんが会話をしていると、割って入ったかのように、さっきまでいなかった橋田さんが突然現れた。
「束縛に新たなルールが追加されたから何かと思ってきてみれば、こんないい風呂ができてんじゃねえか」
「なんのようですか、橋田さん」
畑山さんは冷静な口ぶりで橋田さんに言葉をぶつける。怒っているようにも聞こえた。だが、返ってきたのはとんでもない言葉だった。
「今からひとっぷろ浴びるから。お前ら、俺が風呂に入ってる最中に一歩でもここに入ったら殺すからな」
言いたいことだけ言って、橋田さんは扉の奥へと消えていった。
なんて、自由な人なんだろう……
「あ〜なるともうダメだわ♡さっきの女子3人組はもう帰ってていいよ♡畑山ちゃんと大黒ちゃんは私と一緒に扉の前で待ちましょう♡」
「おいおい!橋田さんを止めるのもあんたの役目じゃないのか!?」
「止めるのもめんどいから待ちましょ♡」
ここにも自分の役目を忘れた自由人がいた。待つ方が面倒くさいと思うんだけど。とにかく、ここで待たないといけないな。
「じゃあ、ここで解散といたしましょうかね〜」
「え?でも……」
「大黒さんの言うとおりだ。お前たちは探索終わったわけだし、特に全体で話すこともない。あとは部屋で休んでいいぞ」
畑山さんは被さるように言う。花ちゃんと彩里ちゃんは納得しているみたいだし。
ここは、畑山さんたちに任せよう。
「わかりました」
そのあとは各自部屋に戻ったり、橋田さんが出てくるのを待ったりしていた。
でも、やっぱり、ミソナさんと海ちゃんが心配だ。ミソナさんには元山さんが付いているけど、海ちゃんは今は一人だ。
なんとかしなくちゃ……




