第2章 〜欲望と未来のインターセクト〜 ➖探索編2➖ ⑤
「ここは……」
あれからしばらく歩いていると、スーパーのようなコンビニのような建物が見えてきた。
あれ?
どこかで見覚えが――
あ、最初の惑星にあったマートだ。中に入ろうとすると、一人の男性が煙を出してタバコを吸っていた。
あれは橋田さんだろう。
だけど今は、殺戮ちゃんよりも会いたくない人だ。気づかないうちに去るとしよう。
後ろを振り返り、抜き足差し足でその場を去ろうとする。
「おい、待て」
後ろから声が聞こえる。バレたか。
「なんですか?」
不機嫌そうに橋田さんに声をかける。この人のせいでみんなに誤解を生ませたのだから当然の対応だ。
「裏切り者がこんなところで何してやがる。調査のふりして、俺を観察して情報収集ってか?」
「あなたみたいなお金のことしか頭のない人なんて観察するまでもありませんし、私は裏切り者じゃありません」
相手が年上だろうが、はっきりと言うのがこの私だ。事実、この人は事務所の生徒たちを道具のように扱っていた。許せない。
「んーだと、コラッ!!」
眉間にしわを寄せて怒鳴ってきた。もはや、社長ではなく、暴力団の組長なのでは?
「感情的になる人ほど、周りを見ていないんです。そんなんじゃ、いつか足元を救われますよ」
「けっ。言ってくれるじゃねえか。やっぱり気に入った。俺の事務所に入れよ」
意外なことに、怒るどころか橋田さんは笑顔になった。というか、またこの話?私のどこをどう見たらそんな言葉が出てくるのだろうか。
「前にも言いましたよね。私は入りません」
「まあいい、俺は諦めねえからな」
タバコを灰皿に捨てると、再びタバコのケースからタバコを取り出し、火をつけた。
「さりげなく2本吸ってないで、それを捨ててください。本当に身体に悪いですってば」
「るっせえ!俺の身体だ!イライラするんだよ!」
橋田さんは不機嫌そうに2本目のタバコを吸う。あれ?あのライター……
「そのライターもしかして、川山さんの時の――」
「これは特注品のライターでな、俺の名前が貼ってある以外にも、火に溶けにくく、水に錆びにくいライターなんだよ」
川山さんの事件の時にトリックの一つとして使われたライター。そんなものをよく、なんのためらいもなく使えるな。
「ライターの性質なんて聞いていません。それ、川山さんの時にトリップで使われたライターですよね」
「それがなんだ。これは俺のだ。俺が使ったところで、なんもおかしくねえだろ」
「そ、そうですね……」
それにしても、ライターへのこだわりを自慢するほどだから相当気に入っているんだな。こんなもの、いくらしたんだろうか。
「どうだ?俺についての情報は集まったか、裏切り者さんよお」
橋田さんはニヤニヤしながら言う。本当に、腹立たしい人だ。
「ええ、集まりましたよ。ライター大好きおじさん」
「だ、誰がライター大好きおじさんだ!ぶっ殺すぞ!」
私もニヤニヤして挑発するように言った。殺すとか言ってるけど、この人には殺さない。なんせ、束縛があるから。
「それではさようなら、ライター大好きおじさん」
「て、てめえ……!!」
橋田さんを無視して、私は次のところへ向かうことにした。こんな橋田さんだけど、いつか私たちと仲良くなれる日が来るのだろうか?




