第2章 〜欲望と未来のインターセクト〜 ➖プライベートタイム➖③
さつりくちゃんのありがたーいおはなし
「皆さん、強制ボタン理論って知ってる?♡知るわけないよね♡だって、私が作った造語であり、持論なのだから♡簡単に説明すると、AくんとBくんがいます♡二人の目の前には、絶対に押してはいけないボタンがあります♡Aくんは押したくないけど、Bくんは押したいと考えています♡ですが、Bくんは自分の手を汚したくありません♡そこで、Aくんの手を掴み、そのボタンを無理やり押させました♡では、これはどちらが悪いでしょう?♡普通の人ならBくんと答えますが、今の社会ではAくんと答える人が多いんです♡その証拠に、『人のせいにするな!』って言葉があるでしょ♡無理やりやらせたと主張するAくんを貴方達社会は攻めてるんです♡つまり私が言いたいのは、人のせいにしてもいいんだよということ♡まあ、時と場合にもよるけどね♡今の社会って怖いよね〜♡ 以上、今回のテーマ[罪の意識]でした♡」
ー9日目ー
キーンコーンッ
「みんなー、おはようございます♡朝だよ♡起きて♡やっぱり、友人関係との交流は大事だよね♡うんうん♡私も昔――」
いつも通り、朝のアナウンスが聴こえる。
どの口が言っているんだよ。でも、あいつに便乗するわけじゃないけど、こんな状況とはいえ、みんなと話しても、バチは当たらないよね。
いつも通り支度をして、食堂に行き、ご飯を食べた。
それから廊下を歩いていると、どこかから声が聞こえた。
「彩里というものがありながら!」
ん?
声のした方向へ近づく。
そしてたどり着いたのは、ミーティングルームだった。ここも、あんまり来たことがないけど……
「彩里よりそんな女がいいっていうの!?最低!」
この声は……
好奇心を抑えきれず、部屋のドアを開ける。
ウィーンッ
しまった!
自動ドアだったため、扉が全開に開いてしまった。流石に気づかれた?恐る恐る、ドアの中を覗いた。
「もう、あんたなんて知らない!太平洋でも、どこへでも行きなさい!」
あれ?気づかれてない?
そこには、彩里ちゃんの後ろ姿があった。見た限りだと、彩理ちゃん1人だ。どうやら、気づいていないようだ。それにしても、あれは何をやっているのだろうか。
「勝手に……すればいいのよ……」
「……」
私はそっとミーティングルームに入り、腰を屈め、部屋の中を歩き回る。
抜き足……差し足……忍び足……抜き足……差し足……忍び足……
彩里ちゃんの背後を取る。
「彩里ちゃん?」
「やっぱり待って!私が悪かった!私が悪かったから!」
その距離なんと、50cm。独り言のようなものを言っていて気づいていない。どれだけ集中してるんだ?私は大きく息を吸い、その場で叫んだ。
「彩里ちゃん!!」
「だから……!だから……!」
ダメだ、これだけ叫んでも聞こえないなんて……私は中腰になり、彩里ちゃんのお腹周りに手をかけようとする。
よし、こうなったら……!
「こしょこしょこしょこしょ〜!」
そして、ついに手をかけた。制服越しからなら尚更分かったけど、スタイルはいいみたいだ。
「あひゃひゃひゃひゃひゃっ!」
彩里ちゃんは死にそうなくらいに笑う。どうやら効いたようだ。でも、私のこしょこしょ攻撃は終わらないのだよ。
私を無視した罰だ!思い知るがいい!
「こーしょこしょこしょこしょ!」
「うへっ!うへへへへっ!」
彩里ちゃんの笑い方がなぜか変わった。
なんか、このままじゃ、他の人に見られたら危ない人たちだと思われそうだからこの辺にしておこう
彩里ちゃんから手を離した。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
息を荒くする彩里ちゃん。身体は暑くなり、顔が普通じゃなかった。それからしばらくたち、彩里ちゃんはようやく落ち着いた。
結局、何してたんだろう?
「さっき、独り言みたいなのが聞こえたけど、何してたの?」
「うーん……強いて言えば、来る時を待ってた……かな……」
彩里ちゃんは天井を見上げて言った。
「ごめん、全くわからない……」
私にはさっぱり理解できなかった。いつものこととはいえ、少しは理解してあげたいな。でも、どうすればいいんだろう。
私は考える。
答えは簡単だった。相手をまず理解する……そうだ!まずは、彩里ちゃんのことをよく知ろう!
「彩里ちゃんってさ、スタイルがいいけど、何かしてるの?」
見た目からも褒めていくスタイル。それが、私だ。
「え!?そんな、彩里がモデルだなんてやだあ〜!でも、特に何もしてないかな。あ、モデルといえば彩里、ギャンギャンの読モに応募したことあるよ!」
「え!?ギャンギャンってあの!?」
ギャンギャンといえば、読者モデルたちが載っている有名モデル雑誌で、代表的なモデル雑誌でもあり、20代前半の女性を主要購読者層に想定しているっていう、あのギャンギャン!?
「そうなの!だけど彩里、1次審査は合格したけど、2次審査で落ちちゃったの……」
悲しそうな顔を浮かべる彩里ちゃん。
「そうだったんだ……」
「彩里、やっぱり向いてなかったのかな……ぶっちゃけ、彩里、取り柄ないし……」
その目には、涙も溢れ落ちていた。彩里ちゃんは落ちた時、どんな気持ちだったのだろうか。きっと、かなり落ち込んでいたはずだ。その想いを分かった上で、私は言う。
「そんなことないよ。彩里ちゃんは人を明るくできる力がある。審査なんて、顔だけじゃ通らないし、性格だって大事だと思う」
一様、私の通っている芸能事務所の審査は一発で通ったから参考にできることは言えないかもしれない。だけど、私の見解だけでもいい。持論でもいい。とにかく、伝えるんだ。彩里ちゃんは悪くないと。
「そう考えれば、審査員の人たちは彩里ちゃんを見る目がなかったということだよ」
「……ッ!?」
彩里ちゃんの瞳孔が大きく開く。驚いた表情をする。あれ?まずいこと言ったかな……?
「彩里……ちゃん……?」
「……」
彩里ちゃんは固まったまま、瞬き一つせず、動かない。どうしようか――
「結衣ーーー!!大好きーーー!!」
ギュッ
「うわぁっ!!」
と思ったら、突然抱きついてきた。お腹をがっちりとホールドされていて、身動きが取れなくなった。
「結衣は最高の友達だよ!ありがとう!お陰で彩里、元気が出たよ!」
「元気が出たなら……よかった……よ……でも……苦……しい……」
彩里ちゃんは私のお腹に腕を回して、力がだんだんと強くなっていった。かなりの激痛が、お腹周りを走る。
「はわわ!ごめん、結衣!」
その後は、腕を離してもらい、しばらく彩里ちゃんと話した。彩里ちゃんがまさか、読者モデルに応募していたのは驚きだったけど、また1つ、彩里ちゃんのことを知れた気がする。
こうしてまた、友情が深まった気がした。




