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第2章 〜欲望と未来のインターセクト〜 ➖プライベートタイム➖①

「ゲーム……したい……」


 ここに監禁されてからずっとゲームをやってない。


 なんでこのロケットはゲーム機が1台もないの!?……今度元山さんに作ってもらおうかな?じゃないと私のゲーム欲が……


「ゲームしたいゲームしたいゲームしたいゲームしたいゲームしたいゲームしたいゲームしたいゲームした――」



 ピンポーン!



 ピンポーン!



 また鳴ってるし……もしかしてここの中で私が一番鳴ってるんじゃないの?


 ドアの近くに行き、ケータイをかざす。


 ピッ


 ウィーンッ


「ヤッホー結衣ちゃん!遊びに来たよー!」


 扉が開くと、そこにいたのは花ちゃんだった。なんで、こんな元気なのだろうか。そんなところに疑問を抱いてしまう。


「ああ……花ちゃん……」


「どうしたの!?そんな青春をネトゲに捧げた廃人みたいな顔をして!」


 私、そんな顔をしてるのかな?まあ、遊びに来てくれたのは嬉しいけど……


「もしかして、なんか悩み事ー?じゃあ、花が聞いてあげる!」


「え……でも……」


 少し、申し訳ない気持ちだった。ここで話せば、こんなにも明るい花ちゃんを私の悩みなんかで明るさを打ち消してしまわないかと。


「いいからいいから!」


 結局、私のしょうもない悩みを、花ちゃんは聞いてくれた。



「なるほどなるほど……結衣ちゃんはゲームが好きと……」


「あれ?もしかして、データファイル見てないの?」


 確か、私のデータファイルにはゲームが趣味と書かれていた。もしかして花ちゃん、見ていないのかな?


「当たり前じゃん!あんな女が作ったやつなんか見るわけないじゃん!」


 やっぱりか……他にも、そこに私の個人情報がモロ書いてあったけど……まあ、見てないに越したことはないか


「花ちゃんは何か好きなものとか――」


「BLだよ!!」


 しまった……途中で思い出して口を止めたが遅かったか……

 花ちゃんは言ってしまった。

 禁断の言葉を。


「……」


「ちょ、結衣ちゃん!なんか引いてない!?」


 沈黙を続ける私に声をかける花ちゃん。なんというか、複雑な気持ちだ。


「ひ、引いてない引いてない!多分……」


「多分!?」


「あ、いや……そのー……」


 引いてはないのだが、改めて聞くと驚くものだ。私とあまり縁のないジャンルだからなのかもしれない。


「やっぱり、BLって嫌い?」


「え?」


 花ちゃんはうつむき出してしまった。私はなんで声をかければいいか、一瞬、戸惑った。


「みんな、花がBL好きだって知るとみんな引いちゃうの。それは彩里もそう」


 彩里ちゃんが?

 花ちゃんは悲しそうに語り出した。


「彩里とは本当に仲がいいから引かないって思ってたけど、引いてた。花に言わないだけで内心、かなり引いてたんだと思う」


 花ちゃんとも仲のいい彩里ちゃんですら引いていたBL。

 うーん、やっぱり難しい問題だな……

 そういうと、花ちゃんは顔を上げた。


「でもね、花はね、貫きたいの、このBL愛を。だって、花は花じゃん!花と言ったらBL!だから隠す必要もない。だからもっと、BLの良さを広めようと思うの!」


「あはははは……」


 小さく笑った。

 貫き通すのはいいことだと思うけど……反応に困るな……


「きゃはっ!ということで、その第一号は...結衣ちゃんです!」


「え?」


 花ちゃんは人差し指を向けて私を指した。

 私、何されるの!?


「私のBL愛を聞いてくれる!?聞いてくれる人がいなくて困ってたの!!」


「う、うん……いいよ……」


 あまりの威圧感につい、了承してしまった。


「やったー!」


 まあ、さっき私の悩みを聞いてくれたし、少しくらいはいいか。

 花ちゃんは息を整え、再び語り出した。


「じゃあまず、BLの基本から説明したいと思います!まずBLとは、ボーイズラブの略称でそれはすなわち、愛なのです!」


「急に飛んだね……」


 略称を言っただけであり、愛までにはならないのではないか。いや、突っ込んだら負けか。


「愛に障害はつきもの……でも、それを飛び越えてこその愛だと思うの!」


 言ってることがめちゃくちゃだ……でも、間違ってはいないかな。


「じゃ、じゃあさ、BLの魅力を教えてよ」


 私から話題を振ってみる。いや、BLに目覚めたとかそういうのじゃなくて、彼女たちがハマる理由がただ知りたかった……そう、知りたかった……


「もちろんだよ!まず、BLの良さはいくつかあるけど、そのうちの3つを紹介します!」


 3つか。わかりやすいように説明してくれると助かるんだけど。花ちゃんは一旦、深呼吸をして語り出した。


挿絵(By みてみん)


「まず1つ目は、さっきも言った通り、性別という超えられない壁を超えた恋愛にときめくということ!これは、さっきも言った通り、愛には障害がつきもの!しかし、その先に待つ彼らの姿に花たちBL好きは胸がしめつけられるのです!」


 花ちゃんのマシンガントークが続く。花ちゃんは楽しそうで何よりだけど、そろそろ、何か意見でも言った方がいいな。


「つまりリスクはでかいけど、エンディングに辿りついたらその分の幸福感は大きいってこと?」


「さっすがゲーマー!たとえもそれっぽいし、わかってるー!」


「そう……かなー……」


 ゲーマーと言われたことに嬉しさを感じてしまった。ゲーマーということは自覚していることだし、褒め言葉だと個人的に思うんだ。


「2つ目!両想いになるまでのハードルが高くて切ない……!」


 花ちゃんは自分の胸に手を当て、目を閉じる。なんか、聞いてるだけだけど、こっちまで切なくなってきたな……


「あー、たしかに、恋って両想いになってからが本番みたいなところもあるしね」


「そうなの……自分は男だけど、彼のことが好き……でも、彼には好きな女の子がいる……だから、どう振り向かせて、どうやったら両想いになれるかが大事だと思うの!」


 私自身、男じゃない……というより、恋すらしたことがないから具体的なことはわからないけど、人並みの乙女心は持ってますから。


「そこで悩んでいる主人公とかをみて、読者の人たちもキュンとくるのかな」


「そうそう!結衣ちゃんよくわかってるじゃん!あ、もしかして、結衣ちゃんもBLに興味あるとか!?」


「ど、どうだろう……?」


 あんまり話を合わせすぎると、誤解されかねないな……まあ、花ちゃんが楽しそうならいいんだけどね。


「そして3つ目!」



 ごくり...



 つい、生唾を飲み込む。いつのまにか、気になってしまっている自分がいた。


「腹の立つヒロインが出てこないこと!」


「腹の立つヒロイン?」


「結衣ちゃんも恋愛ゲームとかアニメとかでみたことあるでしょ?主人公やその友人を平気でいじめるクズ女」


 なんとなく、イメージはついていた。いわゆる、悪役ポジション的なキャラクターのことだろうか。


「ま、まあ、そういうキャラクターに腹は立ったことはあるかな」


 実際、私は過去にそういうキャラクターに出会ったことはある。その子が主人公のことをいじめたせいで、助けられた主人公の祖父が助からなかった、という胸糞な展開。あまり、好きな展開ではないかな。


「なんとBLには、女のヒロインは出てきません!」


「あ、よくよく考えればそうだね」


 BLだから、女の子のヒロインが出てこないのは普通っちゃ普通なんだけど……


「そして補足をしておくと、BLの登場人物には、ほぼイケメンしか出てこないので、ストレスなく、快適に読めるということです!」


 だからイケメン同士の恋……か……

 気がつくと私はうっとりしていた。


「ほらほら!豚さんたちが男同士で恋をしてたらさすがの花も引くからね!」


 豚さん……?豚さんって、あの動物の豚さん?豚さんたちが男同士で恋をする?んー……?


「じゃあ次は、BLの歴史について喋ろうかな!BLはまず――」


 その後も花ちゃんの熱烈BLトークは、数時間に渡り続いた。BLはあまりいい印象ではないジャンルではあるものの、花ちゃんのおかげで私の中でそのわだかまりが少し解消されたかな。


 BL……ここを出たら少し、手にとってみようかな。


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