〜プロローグ〜 ハジメテノデスカイ ⑨
「なーんてね♡ほらよく見てよ!♡ 目だけ動いてるでしょ♡喋れないけどね♡私がそうしてあげたのよ♡それに、あとで胴体くっつけてあげるから♡そしたら生き返るから♡やだぁ!♡ 殺戮ちゃんやっさしぃー♡」
バラバラになった顔を見ると、目だけがギョロリと動いていた。
なに…あれ…
「つまり、畑山先生は死んでないってこと!?」
川山さんは感情的になっていた。
川山さんと畑山さんは同じところで働いている。
それで心配というのがあるのだろう。
「そーいうこと♡」
この子が言っていることは本当なの?心臓が止まるかと思った。
もし本当なら、笑えない冗談とはこのことだ。
「さあーて、うるさい奴も黙ったことだしちゃんと聞いてね♡ちなみに束縛って名前にしたのは私が縛ることがだぁーい好きだから♡はぁ……はぁ……♡」
「……」
もう心の中で突っ込む気力も失せた。
「まあ、見てちょうだいな♡これがこの修学旅行での束縛でーす♡」
でも、今は従うしかないか。
私は、その束縛の一覧に目をやった。
そこにはこう記しるされていた。
〜殺戮学院束縛〜
1.殺戮学院での共同生活は貴方たち10人をクズとみなすため期限はありません。
2.夜10時から朝8時までのナイトタイムは、食堂とミーティングルームが閉鎖されスローテッドロケットの入り口も閉鎖されます。
3.殺戮学院引率教師殺戮ちゃんへの暴力を禁止します。
4.殺戮ちゃんが生徒同士での殺戮に関係する事はありませんのでご安心を。
5.修学旅行中に調べるのは自由とします。特に行動に制限はかけません。
6.スローテッドロケット内の器物損壊をしてはいけません。
7.生徒が一度に行える殺戮は2人までです。
8.修学旅行中に生徒による殺戮が起きた場合、全員参加によるデス会が開かれます。
9.デス会で正しい殺戮者が指摘できれば、殺戮をした殺戮者だけが殺戮を行われます。
10.デス会で正しい殺戮者を指摘できなかった場合は、殺戮者以外の生徒である他の生徒全員が殺戮されます。
11.殺戮者が勝利した時点で殺戮学院から卒業し、地球へ無事帰還することができます。
12.他の生徒たちが勝ち続けた場合は、最後の3人以下になった場合厳選投票をおこないます。
13.死体発見ブザーは、3人以上の生徒が死体を発見すると鳴るようになっています。
14.殺戮学院の束縛に違反するような生徒がいた場合、殺戮ちゃんからの殺戮が行われます。
15.なお、殺戮ちゃんの気分次第で校則は順次増えていく場合がありますのでご理解ください。
意味のわからない言葉ばかり並んでいた。まさか、これを私たちが守れってこと?
「みなさーん♡分かりましたかー♡」
殺戮ちゃんは手をメガホンみたいな形にして小学生の遠足の先生みたいに大声で言った。
「何が何だかさっぱりですね〜」
「あーん♡もーん♡先生しっかりしてよ〜♡」
「イヤ、無理デショー」
こんなことが理解できるという方がおかしい。
突然こんなところに誘拐されて、生きているとはいえ目の前で人が殺されて、さらにはわけのわからないルールを守れって?
「しょうがないなぁー♡まず、君たちにはここで一生暮らしてもらいまーす♡」
え……?今、なんて言ったの……?ここで一生暮らす……?
「いやだいやだいやだいやだいやだいやだ帰りたい帰りたい帰りたい……ぐすんっ」
花ちゃんは泣き崩れてしまった。
でも、私は自分のことでいっぱいでどうすることもできなかった。
「花、落ち着いて!」
彩里ちゃんが落ち着かせるが、花ちゃんの耳には届かず、ずっと泣いたままだった。
「あー、ぶっ壊れちゃったね♡まあ、そのうち戻るっしょ♡はーい、静かにね♡殺戮しちゃうよ〜♡」
「んっ……んっ……」
花ちゃんは殺戮ちゃんの言葉を聞いて渋々しぶしぶ泣き止んだようだ。
とはいえ、泣かした本人はこの子なんだが。
「全くうるさい子ばっかりね〜♡でも、そんな君たちにチャンスをあげよう♡」
チャンス?
私たちの中に一筋の希望が見えた。
「チャンス? 帰れるの、私!?」
上村さんの目は帰れるというワードを聞いて輝き始めた。
帰れるなら私だって帰りたい!
そのためならなんだってする……!
「ええ、帰れるわよ♡誰かをこ、ろ、せ、ば、ね♡」
殺戮ちゃんが口にしたのは衝撃的な言葉だった。
殺……せば……?