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崩壊する都市

#深夜のN分小説執筆 2018年3月24日開催分

使用お題:「つめたいコンクリート」「桜前線」「どこでもないところ」

他と重複

SFっぽくないかもしれませんが、自分縛りのためSFとしておきます。


「もう間に合わないんだ」

 祖父――とは言っても叔母の嫁ぎ先であり、血縁はなかった――が言った言葉を思い出していた。

「東京オリンピック、高度成長期にコンクリートを使った建物がたくさん作られただろ?」

 祖父は生コン会社を経営していた。祖父が亡くなった後には叔父――つまり叔母の夫だ――が継いだが。

「急いで作る必要があったからな。砂の質もよくない。それはコンクリートにも、中の鉄骨にもよくない」

 私はなんとか振り向き、祖父を見上げていた。祖父は私を膝に乗せたまま、庭を見た。

「と言っても、これから全部作り直すわけにもいかないだろう。だんだん建て直していくしかないんだろうな」

 祖父はやはり庭を見たまま続けた。

「どうにか延命する技術は開発されるだろうが。それでもいつまで持つものか。都市の働きを保ったまま、どうやってうまく建て直していくか。難しいな」

 祖父は私を持ち上げ、自身と向かい合わせた。

「そういうコンクリートは、命を失いつつあるコンクリートだ。都市も高速道路もな」

 祖父は私の頭を撫でた。

「どうだ? そういう仕事、それともいい鉄骨を作る研究、なんでもいいが、そういうことをしてみる気はないか?」

 祖父の家に泊まり、その話を聞いた数日の間に、庭の桜は一気に開いた。

 首都高を走っている時、祖父の言葉を思い出した。それは、眼下に桜並木が見えたせいかもしれなかった。

「すこしずつだけど、進んでいるよ」

 私は前に目を戻した。

「だけど、間に合うのかな。お祖父ちゃんが言ってた時もだけど、もう広大な空き地じゃないんだ。それに……」

 私はフロントガラスから上に見える別の路線に目をやった。

「これだけ複雑な構造体になっているんだ。そう簡単じゃないだろうね」

 前に目を戻すと、工事予告の看板が見えた。これは確実な延命だろうか。都市計画についてはよくは知らない。こうやって目にすることで気づく程度だった。

「死んだ都市、死にかけている都市」

 いいこととは思えないが、映画に撮られた高速道路が崩壊していくのを見るのもいいかもしれないと思った。失われない遺産はない。それは遺跡にはなるのかもしれない。どこもかしこもが崩壊した遺跡。祖父が第一線で働いていた時から何十年と経ち、私はそれへと向かう歴史を見ているのかもしれない。

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