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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

夢だと良かったね

作者: ゆかり姫


 わたし知ってるのよ。あなたがあの子にストーカーしてること。


 あんな子のどこがいいの?わかってるわよ。可愛いからとかそういうことじゃないのよね。誰にでも優しいからでしょ。


 そう。


 あなたのようにモテなくて暗い人にも気軽に話しかけてくれる。それが嬉しかったのよね。あの子の彼氏になんかなれなくても、いいえ、彼氏になろうなんてことはあなたは望んでないのよね。ただ、あの子が誰にでも平等に接してくれるという優しさ。あなたはあの子のそれが好きだったのよね。


 あなたにとっては平等ということが一番大事なことですもんね。


 だけどあなたはあの子のストーカーになってしまった。ストーカーになってしまった理由も知ってるわ。裏切られたのよね。


 平等に接してたのは嘘だったからよね。


 嘘?


 そう。あなたにとっては、それは嘘としか思えないことだったのよね。


 あの子には彼氏がいた。誰にでも平等だったはずのあの子は平等ではなかった。それが裏切りであり嘘だとあなたは思ったのよね。


 だからあなたはあの子のことが許せなくてストーカーになってしまったのよね。裏切られたと思ったあなたは、あの子に対しての大好きという気持ちが恨みに変わってしまった。


 今の時代、SNSがあって便利よね。思う存分ストーカーできるんだから。もちろん、SNSであなたはあの子から友達として承認はされていなかった。あなたがそれを望まなかったからね。そこは平等にこだわらなくていいの?


 わかってるわ。承認されなくてもあの子に話しかけることはできるものね。そして友達でもなんでもないあなたのことも、あの子は平等に返事をしてくれてたものね。



 ーーあなたがストーカーになるまではねーー



「裏切り者」

「嘘つき」

「許さない」


 そんなことを話しかけられたらもう返事なんかくるわけないもの。あなたも返事が欲しくて言ってたわけじゃないんですものね。


 あなたはブロックされた。だけどブロックされたくらいで諦めるわけがないわよね。あなたは本物のストーカーなんですもの。ただ嫌がらせしたいわけじゃないんですものね。アカウントなんていくらでも作れるものね。あなたはあの子から何度も何度もブロックされては、また新しいアカウントでストーカーを続けたのよね。


「彼氏を作ったことを責めてるんじゃない。彼氏を作るなら何故最初からそう言わないんだ。何故オレに笑顔を向けた。何故オレに話しかけた。何故オレを騙したんだ。許さない。絶対に許さない。わたしは彼氏なんか作りません。平等です。何故そんな態度をとっていたんだ。オレはお前に騙された。許さない。許さない。許さない」


 あなたは自分がおかしなことを言ってるとは少しも思わなかったのよね。あなたの勝手な思い込みに過ぎなかったのに。


 平等とか嘘とか裏切りとか、それはあなたが感じてることで、あの子には関係ない話。あの子があなたに直接、誰にでも平等にするって言ったの?彼氏なんか作らないなんて言ったの?違うでしょ。


 そんなことをずっと話しかけて、そのままで済むと思ったの?思わないわよね。その前に実行するつもりだったのよね。


 そしてついに実行する日がきたのよね。



 ーーだけど失敗してしまったわねーー



 あなた。成功すると思ってたの?おめでたい人ね本当に。わたしが助けてあげなかったらあなたは捕まってたのよね。良かったわ捕まらなくて。


 あなたも捕まりたくはなかったのね。実行する前に捕まると二度とできないかもしれないものね。だから「乗って!」そう言ったわたしの車に即座に乗り込んでくれた。


 ねえ。今どんな気持ち?その中で、今何を考えているの?まだあの子のこと考えているの?それとも自分のこと?


 あれから何日経ったのかしらね。まだ生きてるんでしょその中であなたは。少しは眠った?眠るのも怖いでしょ。目が覚めてもやっぱりその中にいるんですものね。夢なんかじゃないんですものね。


 あなたの心の声が聞こえるわ。早くあの子に会って実行しなくちゃいけないんだ。早くここから出してくれっていう声が。


 出すわけないでしょう。


 あなたは、わたしを裏切ったんだから。えっ?裏切ってなんかいないって?なんのことだかわからないって?


 忘れたの?


 わたしもあなたも他に友達がいない同士、似た者同士だから仲良くしていこう、他の人に機嫌をとってまで友達なんか作りたくないよねって言ったわよね。わたしは、あなたの側にずっといたじゃない。それなのにあなたはあんな子に夢中になった。


 あの子と友達になれるとでも思ってたの?いいのよ好きになるくらいなら。それは自由だわ。わたしは待ってたのよ。あなたが目を覚ましてくれる日を。なのに何?あの子のストーカーにまでなってしまって。ストーカーになるっていうのは、それだけ愛してるっていうことよね。今でも愛してるんでしょう。そこから出て実行したくてたまらないんですものね。


 わたしは、あなたに捕まって欲しくなかったの。だから助けたの。だってあなたが捕まってしまったら、あなたの側にいられなくなるんだから。


 わたしは、あなたの側にずっといる。


 すぐに誰かがみつけ出してくれるだろうって?そうね。いつかはこの場所を突き止めてあなたを助け出すかもしれないわね。でも、あなたが生きている間はみつからないと思うわ。


 もうすぐね。


 あなたとわたしは永遠にずっと一緒よ。また眠くなってきた?眠っていいわよ。


 次は永遠の眠りにつくはずだから。


 完







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