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 今日は何だか寝つきが悪かった。明日はライブ本番というのに、寝返りを何回うったことやら。夢の中と現実の境目がなくなろうとしていた時、俺はとても暗い交差点に立っていた。

「ここの交差点、見たことがあるような、ないような……」

 今振り返れば、ベッドに寝ていた俺が交差点にいること自体おかしな話だ。だが、その時はそれが現実に起こっているような錯覚に陥っていた。

「信号が青になりました」

 暗闇で歩行者用の信号機が青に変わった。信号機の明かり以外には奥に切れかけの街灯が明滅を不規則に繰り返しているだけだ。

 そして横断歩道が向かう先はその街灯のある方向だった。別にここから動かなくても良かったはずななのだが、俺は「行かなきゃ」という意識に駆られ、足を前に踏み出した。横断歩道はまだまだ向こうへと続いているはずなのに、切れかけの街灯は車道の真ん中にあった。冷静に考えればおかしな空間にいる。だが、夢へと滑り落ちてしまった俺は全く気付くことがなかった。

「誰かそこにいるのか」

 人気を感じた俺はそこから向こうへ延々と続く横断歩道の方へ向かって声を出した。自分のすぐ上にある街灯がちらついて良く先が見えない。暫くすると、信号が赤になろうとしていた。

「渡り切らないと」

 俺は街灯を過ぎて横断歩道を渡りきろうとした。だが、いつまでたっても横断歩道に終わりが見えない。ここでやっとまずいことに気付いた俺は引き返そうとした。すぐそこにまだ街灯があるはず。

「あれ……」

 だが、さっきまでちらついていた街灯は自分の視界から跡形もなく消え去っていた。俺は暗闇に取り残されることになってしまった。信号機の光も見えなくなっていた。

「ここはどこだ」

 もはやそこは、交差点でもない、横断歩道でもない。只々無限に広がる暗闇だった。人間は真っ暗だと酷い恐怖感に襲われる。俺も例外ではない。その時、かなり遠くで街灯が一つ灯った。そこには人影が薄っすらと見える。しかし、顔はよく見えない。

「ここから逃げて。なるべく早く」

 女の声がした。例の人影が喋っていると容易に想像がついた。ここにいてはいけない。意味はすぐに分かった。俺は方向感覚も分からなくなっていたが、ひたすらに走った。段々と汗をかいてきて息もあがってくる。そして、もう走れないと思ってきた時だった。

 地面が崩れ落ち、一瞬身体が浮いたかと思えばそこから一気にどこまで続くか分からない下へと落ちていった。

「死ぬ!」

 そう叫んだ瞬間、目が覚めた。スマートフォンのアラームが最終段階の大きな音で鳴っていた。物凄く気分が悪く、汗もかなりかいていた。今日はライブ本番だと言うのに縁起でもない夢を見てしまった。一日の始まりを最悪な気分で迎えた。

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