後始末
私達は今、お城にやってきていた。
そろそろ合同訓練も終わって帰ってくるらしいし、先回りして待っていようと、まぁそういう訳である。
いろいろ迷惑かけてしまったと思うし、やっぱり謝らないとね。
待ち伏せしてほんの少し経った頃、遠くの方から、馬に乗った二人とそれに併走する一人、そしてその護衛達が迫ってくるのが見えた。
その騎馬の中央、皇帝が私に気づき、その右手を大きく振る。 そして、少し離れた場所に馬を止めた。
しかし、両サイドが止まらない。 むしろ、更に加速して私へと一直線で突っ込んできている。
「ねぇ、あれヤバくない?」
私の左右に居た二人に助けを求めるが、その二人は既に離れた場所に避難している。
私も逃げようかな、と思ったが、間に合わなそうなので、どうにかして受け止めようと、全身に疑似神装を纏う。
次の瞬間だった。
「お姉様ぁぁぁ!!」
「クロユリ様ぁぁぁ!!」
片方は馬から砲弾のように飛び出し、もう片方はマジの弾丸並に突進してくる。 その二人を、私はなんとかガッシリ抱き留めたが、足元で土が抉れるような感覚を感じた。
マジで危ねぇ…。コレが私以外だったら確実に全治三ヶ月とかそこらだぞ……。
「お姉様!ご無事だったんですね!!私、心配で…。もし何かあったらどうしようかと……」
私に抱きついたまま、軽く目尻に涙を浮かべる王女様。
「本当に心配かけてゴメンね。キリエとツバキのおかげでなんとか助かったから、私は大丈夫だよ」
片方の手でぎゅっと抱きしめ、もう片方で頭をなでる。 どうやら私はマジでこの子に弱いようだ。
確かにキリエにはもうこれ以上ないくらいデレデレだが、この子の前だと、変態性や下心すら剥がされ、完全に浄化されてしまうらしい。
「クロユリ様、本当に大丈夫だったのですか?もの凄く疲弊しているように見えるのですが…」
「うん、このくらいなら私の特性ですぐに回復するから大丈夫。あと、ツボミって呼んでくれると嬉しいんだけど…」
クロユリというのは一応偽名だし、なんとなく今の私はクロユリっぽくないからね。
「ツボミ殿。ご無事で何より。そして、本当にありがとう。貴殿がいなければ、我が国の騎士団は壊滅し、もしかすれば他国の侵入を受けたかもしれん。今は些かデリケートな時期だからな。本当にありがとう。私達に出来ることがあったら言って欲しい。全力で力になろう」
「いや、それより私もお礼を言わなきゃね。だってキリエ達をこっちに向かわせたのは皇帝さんでしょ?本当に助かったよ。ありがとう」
合同訓練をしていたキリエ達には、私がヤバいかも、という情報が伝わるわけもないし、二人に聞いてみたところ、皇帝さんが直々に私の援護に行ってくれるように頼んだんだとか。
コレは命の恩人3人目だね。むしろ私が力にならないといけないくらいだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そんな感じで次は研究所に来た。進度はどうなっているだろうか。
研究室の前にやってきたとき、私がドアノブに手をかけるよりも早く、そのドアが激しく開かれる。
「おや!ちょうど良いところに来ましたね!たった今、分析結果が出たところなのですよ!」
メガネの研究員は、私達に中に入るように促した。
「この魔銃のみ、解析が終わっております。今から説明致しましょう」
そう言って取り出したのは、あの単発ハンドガン。
「この武器は、何らかの装置によって製造された模様です。本物のアーティファクトとは異なり、現在に存在する物質で作られておりました」
ふむ。数も数だし、それは予想できたな。
というか、口振りからしてアーティファクトって現在に存在しない物質で出来てるのか。
「生産スピードに関してですが、恐らく1つの機械で一日一個といったペースでしょう。これは危ういですね。もしかすると、一般市場に出回るのも時間の問題かもしれません」
マジかよ…。もしその機械が複製できるのならば、その数は更に増える…と。
単発銃とて、一般人を殺すには十分な代物だし、某火縄銃戦法を用いるならば、リロード時間などは問題にならなくなる。
かなりマズい展開だ。こうしている間にも、連中の軍事力は増していると、そういう事か。
「そして、再現率ですが、この武器は元になったアーティファクトの約10%を再現しているようです」
10か…。これからまだまだ発展性のありそうな数字じゃないか…。
皇帝さんにも早急に伝えた方が良いな。
「この件、皇帝さんにはもう連絡した?」
「ええ。先程通信魔道具で行いました。もうすぐいらっしゃるでしょう」
この件は実にデリケートになりそうだ。
面倒くさくなってきたな……。
早くスキーがしたいなぁ...と思うような季節になって参りました。台風が過ぎてから、寒くなりましたねぇ...
あっ、この土曜に行われる遊戯王ショップ大会にシャドール握って出てきます。頑張って環境デッキ倒すぞ...
次回更新は10月28日(土)の20:00です。