マッドランドの終わり
「それにしても不死鳥殿は腕を落としたな!拙者如きにやられるとは!以前など、失った部位を一瞬で修復していたではないか!!」
どうやらコイツは、マジで私とアイリスを間違えているらしい。
純粋な不死鳥ならばその再生力も分かるが、私は元々マンティコアだ。火力特化の耐久皆無だぞ。無理に決まってるだろ。
「言っておくけど、私は不死鳥ではないし、英雄のアイリスでもないよ。今名乗るけど、私はツボミ。マンティコアだ」
「なんと!そうであったのか!!確かに、最後に変身した姿が違った気がしたが、そういう訳か! ……しかし、あの赤い魔力、アレは不死鳥殿の物と類似していた。 口振りからしても知り合いなのであろう? 一体どういった関係なのだ?」
コイツマジで脳みその代わりにただの味噌詰まってんじゃねぇのか…。
「……私は一応アイリスの生まれ変わりって事になってる。でも、私の体にはアイリス分もあるからあの赤い魔力は確かにアイリスの物だ。……ってか、魔力見ただけで誰だか分かるんだな」
「いや、普通は分からんが、あのように汚染された魔力を持つ者など、そうは居まい。更に言えば、拙者を迎撃したときのあの一撃と気迫はまさしく不死鳥殿の物であった。見間違うはずがあるまい!」
なるほど、と言う事はあの覚醒に近いアレはアイリスの奴だったんだな。
それにしても、アイリスの記憶も受け継いでるはずなのに、覚えてることと覚えてないことがバラバラだな…。
「そういえば、古の時代から生きてた……いや、死んでたらしいけど、その間何してたの、とか、昔は何してたの、とか色々聞いて良い?」
「うむ!あの迷宮に入ってからはな……。……? 寝てた……?」
なんで自分で困惑してるんだよ…。
「寝てたって、軽く数百年は経ってるけど、そんな長いこと寝てたの?」
「うむ!きっとそうだ!それならば気づいたときに死んでいてもおかしくないな!ヌハハハハ!!」
これってもしかして私がおかしいのかな。私がおかしいから、コイツが異常に見えるのかな。
「先程も申したが、昔は、仲間達と大戦を終わらせるために戦っていた! 異世界の神の力も、仲間達と共に得た物だ!」
「仲間?」
「うむ!拙者の他に、四人の仲間がおったのだ! 不死鳥殿も、仲間を1人連れておっただろう?先程ツボミ殿の救援に駆けつけたあの帝龍を」
そういえば…そうだった気もしてきた…。
というか、今は先にやることをやろう。
「他にも色々聞きたい話はあるけど、それは向こうでやろうか。今はここを抜け出すのが先決だ」
「しかし、拙者は元に戻ったらまたアンデット扱いになるのではないか?」
「どういう訳か知らないけど、ここから出られた者は、脱出時と同じ状態で普通の世界に戻るんだ。つまり、君がここから出られれば、その姿のまま戻れるわけだ」
「ほう!して、脱出方は?」
残った脱出法。それは残り1つしか無い扉をくぐり抜ける事だ。
1つの扉につき1人まで元の世界へ帰ることが出来る。つまりどちらかは永遠にここから出られずに死ぬのだ。
しかし、この魔法を考えた奴は想定していなかったんだろうなぁ…。“もう一つの脱出法”を。
「とにかく、赤い光を放ってる扉を見つけて、そこをくぐれば良い」
「む?それなら拙者、さっき見かけたぞ? あれであろう?」
武が指さした方向には、野原のド真ん中に堂々とそびえる扉が。
なんで私は気づかなかったんだ…。 やっぱりポンコツは私なんじゃ…。
「ほれ、君がくぐれ。そんで、もし回復系の魔法で修復以外を使えるなら、キリエと一緒に私の体にかけておいて欲しい」
「うむ!しかと引き受けたぞ!!」
武はヌハハハハ!!と笑って、扉をくぐり抜けて行った。
さて、私だけ残されてしまった訳だ。
それじゃあ、“もう一つの脱出法”、始めようか。
この魔法は、いわば魂を閉じ込めた“別の世界”を作る魔法だ。 ならば…。私は持っているじゃ無いか。
“世界を断つ奥義”を。
さぁ、一暴れと行こうじゃ無いか。
さっきも一発ぶちかましたが、“断界奥義”は、通常世界で使うには危険すぎる技だ。
文字通りマジで世界を断ちきる訳では無いが、軽く使ったとしても使用後に残るのは、滅んだ大地と消滅した物体だけだ。 そして、少なからず世界にもダメージが残る。
今までは出力を控えめにして撃っていたが、今は手加減する必要も無いわけで。
この作られた世界の強度チェックと行きますか。
まずは1発目。
以前は詠唱頼りだったが、崩壊の魔力をコントロールすることにも慣れてきたので、今は無でいける。
「断界:火之迦具土ッ!!」
大鎌を作り出し、そこに真っ赤な魔力を乗せて振り上げる。 次第に鎌は赤黒い炎を纏い、小規模な爆発を放ち始めた。
次の瞬間、紅に染まった大鎌が振り下ろされる。
前方の敵では無く、大地そのものを狙ったかのような攻撃。
激しく巻き起こった爆裂と共に、豪炎が吹き上がり、周囲を緋色に染め上げる。
しばらくして爆発が収まった頃、そこにもはや草原の面影は無く、丸く抉れ、クレーターのようになった大地の所々で赤黒い火が燃えさかっている、まさに地獄のような光景が広がっていた。
爆発の範囲外でも、近隣は地面が焼け爛れ、木々は炭のように燃え尽き、世界の終わりを感じさせる。
さぁ、どんどん行こうか。この調子でレッツ破壊だ!
ダンボール戦機、擬人化されるので、今のうちに本家もう一回やっておこうと思い、データ消してやり直してます。
昔は良く“ジ・エンプレス”使ってたなぁ…。
次回更新は10月24日(火)の20:00です。