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魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
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ツボミのマッドランド 3




 クッソ…キリが無い…。


 この殺戮機械達、壊しても壊してもどこからか現れてくる…。


 逃げる僕の後を追うのは、軽く30は超えているであろう数の殺戮機械だった。



 しかも、己の肉体で戦う僕にとっては、針や歯車で出来た此奴らとは超が付くほど相性が悪い訳で、今のところ逃げるしか無いのである。


 更に気色悪いことに、花畑に咲いている花の全てが、ニヤリと不気味な笑みを浮かべる口を現わし、不敵な笑い声を上げている。


 空も、不気味な色に塗りつぶされ、上空からも降ってくるような不気味な笑いが響き渡る。


 クッソ……ツボミめ…。どんな趣味してるんだッ…!!



 そんな時だった。


「キリエの救出が終わったから来てみれば、大変なことになってるね…」


 どこから現れたのか、ツボミが花畑の端に立っている。


 そして、その近くには、青い光を放つ扉が。


「罰ゲームルートのクリア条件は100体以上倒して、この扉をくぐることだ」


 …ッ!?100体以上!? 無理無理無理!!


 此奴ら、一体一体が結構強いんだよ! しかも、殴ったら確実に僕もダメージ喰らうし、絶対無理!


 とにかくツボミの方向へと走るが、ツボミも僕の方へと歩いてきた。


 否。僕の後ろの連中に向けて歩いているのだ、と悟ったときには、既にツボミの腕の中に大きな鎌が現れていた。


 そして、僕がツボミを通り越した時、それは起こった。



「断界:建御雷神(たけみかづち)ッ!!」


 赤紫色の稲妻を纏った鎌を大きく掲げたツボミは、そこに自身の魔力とアイリスの魔力をフルで乗せ、その鎌を振り下ろす。


 直後、大量の殺戮機械の上空から、閃光を伴った天雷が降り注ぐ。


 僕の視界を、いや、世界をも一色に染め上げるほどの激しい光と、大地が砕け散るような衝撃、そして轟音。


 その全てが収まった頃、咲き誇っていた花畑はその面影を消し、所々にガラス質を残す、枯れ果てた大地が残っていた。


 機械達は跡形も無く消え去り、空は、今起こったことが青天の霹靂であったかのように晴れ渡っていた。



「ほれ、100体は倒したんじゃ無い?」


 ツボミが指さした扉は先程の青とは違い、今度は赤い光を放っていた。


「……はぁ、アイリスよりも強力じゃないかい?」


「…まぁ、私分もプラスされてるからね。そりゃ火力も上がるさ。火力だけだけど…」


 むしろここまでの火力があれば、他に何も要らないのではないか、と思ったが、どうしてこうなったのかを考えてみれば、そんなことも無いんだろう。


「ほれ、その扉をくぐればゴールだよ?」


「ああ、そうだね、助かったよ。じゃあ、お先。」



 手を振って見送るツボミを背後に捕らえ、扉をくぐる。



 その時、僕は気づくべきだったんだ。


 キリエを助けたはずのツボミが、どうして僕と一緒に脱出しなかったのか、と言う事に。





 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




 時間は少し遡る。



 私が目を覚ますと、そこは見知らぬ場所だった。


 ツボミはどこへ行ったんだろうか。まだ全然怪我が治っていないのに…。


 とにかく周りを見渡してみると、その視界に、なんだかよく分からない物が3つ映り込む。


 もの凄く大きなトランプに手足が生え、動き回っているのだ。


 なんだか、大きな白薔薇に、赤い塗料を塗りたくっているような、そんな感じだ。



 遠目に見ているだけではよく分からないので、近づいてみることにする。


 気配を殺し、足音を立てないようにしてそろそろと近づいていくと、なんだか口論しているような会話が聞き取れた。


 赤い薔薇を植えなければならなかった場所に白い薔薇を植えてしまい、このままでは首をぶった切られるらしい。


 そんな感じで、責任をなすりつけ合っているようだ。……なんて醜い…。



 そんな感じでもめている3人の脇には街道のような道が続いていた。


 とにかく、ここがどこか分からない以上、進んでみるべきなのかな…。


 周囲の様子を把握しようと、加護を発動してみる。


 すると、街道の向こうから、沢山の人が歩いてくる様子が分かった。 そのうち1人は、神輿のような台座に座って、担がれている。



 とにかくどこかに隠れようと、周りを見渡すが、辺りに隠れられそうな物は何も無い。


 ………むぅ、面倒な事になってしまった。


 逃げる、というのは、いかにも悪いことをしているようで嫌だな。 何もしていないんだから、堂々と通り過ぎるとしよう。



 そんなこんなで、集団に向かって歩いていると、次第に目視できるようになってきた。


 さっきの3人のようなトランプが、ハートの描かれたドレスを着た人物を神輿担ぎして歩いている。 まるで大名行列だ。


 これは、無視というわけにも行かないだろう、と思い、様式美でその場に跪き、頭を下げた。


 早く通り過ぎないかな、と思っていると、その集団は、急に私の前で立ち止まる。



「そなた、見かけん奴じゃな。一体どこから来たのじゃ」


 声の主は、ハートの人。 偉そうだったので、頭を上げないまま答える。


「………しら…ない……」


「なんじゃと!? 知らぬと申したか!? そんなわけ無かろう!! 打ち首じゃ!!」


 えぇ……理不尽……。


 ヒステリックに声を張り上げるそのハートの人の狂乱具合に、どこか親近感を覚えてしまうのが悲しいところだった。



 いや、そんなことを言っている場合ではない。


 周りのトランプ兵達が、やれやれ、と言った顔をしながら、私に近づいてきたのだ。


「打ち首じゃ!打ち首にせよ!!」


 ハートの人が怒鳴り散らす。


 ……逃げよう。



 私が走り出そうとしたときだった。


「オイ、私のキリエに何するって?」


 少々ドスのきいた、殺気の籠もった声が、静かに通り抜ける。


 私にはその声の主が一瞬で分かった。



 次の瞬間、ハートの人の脇に現れたツボミが、おもむろにその顔面を掴み、宙に持ち上げる。


「“私の”キリエに手を出そうとして、ただで済むとは思ってねぇよな、オイ!!」


 まるでヤクザである。 格好良い……。



 トランプ兵達は、「女王!!」と叫び、ツボミに武器を向ける。


 アァ…きっとここから蹂躙なんだろうな…。


 私は遠くを見つめるしかなかった。


寒いですね。私の部屋は今朝2℃でした。

いや、寒すぎませんかねぇ。

早く雪降らないかな…スキーしたい…。

でも雪かき面倒くさいなぁ…。


あと、全く関係ないですけど、アンダーテール素晴らしいので、皆もやってみてね!


次回更新は、10月20日(金)の20:00です。

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