ツボミのマッドランド 2
ウサギは時折ポケットから懐中時計を取り出し、時間を気にするそぶりを見せながら草原を走り抜けていく。
僕も走って追いかけるが、ウサギは唐突に姿を消した。
不思議に思ってウサギが消えた辺りへ向かうと、大きな穴がぽっかりと口を開けていた。
危ないなぁ…。平原のド真ん中にこんな穴開けとくなよ…。
覗き込んでみても底が見えないが、ツボミからの指示が無いので、まだ追えと言うことだろう。
覚悟を決めて飛び込む。罠などの類いは一切無く、ただただ落下するのみだった。
………どこまで続いているんだろうか。もう人間なら燃え尽きる程度のスピードが出ている気がするのだが。
と思っていたらやっと地面が現れる。翼を出して落下の勢いを消し、ゆっくりと着地しようとするが、ふと足元を見ると穴の真下に大量の画鋲が散らばっていた。
……嫌な罠だ…。と言うか、別に踏まなくても、踏むような奴なら落下の衝撃で死んでると思うんだよ…。
少し離れた場所に着地し、辺りを見渡すと、そこは1本の通路だった。そして、少し先の曲がり角をウサギが駆け抜けていくのが見えた。
曲がり角を曲がると、その突き当たりの壁に小さな扉があるのと、また近くに凄く小さなテーブルがあるのが見えた。
テーブルの上には、クソ小さい鍵があり、試すまでも無く小扉の鍵である事が分かる。
もう何も考えずに鍵を開け、そこの中を見てみると、扉の向こうに花畑が見えた。
………僕ここ通れなさそうだなぁ…。でも暴れるとマズいかもしれないし…。 探索、か。
そう思って振り向くと、テーブルの上にあからさまな瓶が一本置いてある。
ラベルには大きな文字で『飲んでね』と書かれていた。
瓶を手に取ろうと思って近づくと、瓶の横にメモがあるのに気づく。
「ギミック無視して外に出ろ」
……こういう感じで指示が来るのか……。
まぁ、公認を頂いたからには、暴れるとしますか。
「黒龍拳:壱ノ型。『砕牙衝』~。」
右手を軽く引き、壁に一撃。
以外に壁は脆く、一瞬で瓦礫と化した後、晴れた視界には様々な色が入り乱れる花畑が飛び込んで来た。
僕が部屋から外に出ると、その部屋は屋根を支えきれなかったのか、がらがらと音を立てて崩れ落ちる。
ナイスタイミングだ…。ちょっと遅かったら下敷きだったね。危ない。
そういえば、ツボミが『狂った世界』とか言っていた気がしたけど、今のところ全然そんな要素が無いんじゃないか?
ツボミらしい鬼畜仕様も、落とし穴以外見受けられないし…。
そんなこんなで花畑を歩いていると、前方から、大きなネズミのぬいぐるみが歩いて(?)くるのが分かった。
どう見ても異様な光景だ。やっときたか。
ネズミは僕に近づき、どこからか声を漏らす。
「全く、いけない子だ。物語を無視するなんて。お仕置きが必要だね…」
ネズミの体の中から、金属と金属がこすれ合うような、嫌な音が聞こえる。
……一体どういうことだ…? ツボミの指示には従ったはずだが…。
ネズミの内部から、何かを断ち切るような音が聞こえた後、腹部から大きなハサミが飛び出してきた。
それと同時に、全身から尖った金属が飛び出し、体中を引き裂きながらその形を変えてゆく。
針が眼球を貫き、胴体は歯車や金属に引き裂かれ、腕からは、どう見ても紙を切る用途には使えないような、裁ちばさみが飛び出し、脚は尖った金属に貫かれている。
金属の殺戮人形のような見た目になったネズミは、再びどこからか声をあげた。
「サァ、処刑の時間だ…。道を踏み外した者の裁判だ…」
体内の歯車が回転を始め、体中の金属が逆立つ。
……まさか、『飲んでね』がツボミからの指示だったのか…? 分かりづらいんだよ……。
それどころじゃ無いか。まずはこの目の前のバケモノをどうにかしないとな…。
原作をガン無視していくスタイル。
やっぱりこのメンバーに童話なんて似合わないよねぇ…。
大きくなったり小さくなったりするツバキも書いてみたんですが、一瞬で没にしました。
きっとキリエは大丈夫じゃないかな(適当)
次回更新は10月18日(水)の20:00です。