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魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
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時間稼ぎ




 数歩引いた後、拳を腰だめに構えて走り出す。


 全身に帝龍覚醒を発動し、フルパワーでの攻撃だ。


 対する骸骨は、馬がやられた事には全く動揺していない様子で、虚空から2本の槍を引き抜き、迎撃態勢を整えた。


 タイミングを合わせて突き出される槍。それをひらりと回避し、一気に懐に潜り込む。


「黒龍拳:壱ノ型!『砕牙衝』ッ!!」


 回避不能な距離から放った拳に全力を乗せ、渾身の一撃を繰り出す。


 取った。そう思った。



 しかし、僕の拳が捕らえたのはただの空気だ。


 そして背後から気配。


 咄嗟に背中を部分龍化したが、鱗を貫通されるかのような威力の一撃を受け、海老反りで吹き飛ばされる。


 コレは…。きっとキリエと同じ、瞬間覚醒だな…。


 全く、クソみたいに厄介な相手だ。しかも、槍の一突きでこの火力とか…。ツボミと良い勝負なんじゃ無いか…?



 地面に手をつき、それを軸に反転。即座に体勢を立て直す。


 骸骨は両手の槍を構え直すと、今度は向こうから走って距離を詰めてくる。


 ……槍と素手だとちょっと相性が悪いかも知れないな…。


「あんまり得意じゃ無いんだけど…仕方ないねぇ。」


 僕だって魔法が使えないわけじゃ無い。ただ、攻撃魔法が驚異的にヘタクソなだけだ。


 攻撃魔法以外なら人並みに使える自信はあるし、造形魔法ならそこそこ得意なんだ。


 だから、崩された瓦礫を使って棒を作るくらいは出来るのさ。



 2本の槍に対抗するように2本の棒を作り出し、攻撃を受け流す構えを取る。


 骸骨の槍と棒が衝突する。このまま横に滑らせれば攻撃は回避できるし隙も作れる…。


 そう思っていた。


 現実はそう甘くは無かったようで、ぶつかり合った瞬間に、棒がぽっきりと折れてしまったのだ。


 棒を投げ捨て、腕を龍化。できる限りのエンチャントを乗せ、交差させながら槍をなんとか弾いた。


 2本目を繰り出す構えを取った骸骨だったが、体を反らしながら大きく後ろに跳躍したことで、僕は射程から逃れることが出来た。



 ……良い調子だ。あまり消耗無く時間を稼げている。


 このままツボミが回復するまで時間を作れればまだ勝機はある。


 それにしても、何故こんな強い奴がこんな場所に現れたんだ…。この骸骨はそのくらい強すぎる。一般のダンジョンに出ていたら間違いなく多数の被害者を出すだろう。


 そう言った面ではツボミの判断は正しかった。結果的に自身は傷ついたが、犠牲を最低限に減らしているのだ。


 でもツボミは自己犠牲とか嫌いじゃ無かったかなぁ…。まぁ良いけど。



 骸骨は槍を投擲する構えを取る。


 そうだ。このまま僕から攻撃する必要は無い。ただ回避するだけ。多少のダメージなら治癒で間に合う。モロに受けなければ良いんだ…。


 大げさに横に移動して回避すると、その場所に2本目の槍が飛んでくる。


 仕方なく龍化させた腕を横からぶつけることで軌道をずらし、2本目も受け流す。


 鱗は魔力で出来ているからすぐに治る。あまり難しく考えず、受け流すことだけ考えるんだ。



 ところがどっこい、そうも行かなかった。


 骸骨が再び槍を抜き放った後、瞬間覚醒で距離を詰めてきたのだ。


 さっきのように両腕をクロスさせて攻撃を防ごうとするが、今度の攻撃は突きでは無かった。


 下から半月を描くように振り上げられた槍は、僕をいとも容易く吹き飛ばす。



 空中で体制を整え、出来るだけ距離を稼いで着地。


 しかし、そこである事実に気がついた。


 ちらりと視界に入った腕、その鱗がボロボロにはがれたままなのだ。


 そして全てが繋がる。


 ………回復阻害か…。そりゃあツボミがああなってもおかしくは無いなぁ…。


 最初に一撃貰ったと聞いている。きっとそこで断界奥義に必要な体力を削り落とされ、ジリ貧で負けたんだろう。


 そして残念なことに、このままでは僕もジリ貧で負けるだろう。


 ……本当に…本当に厄介な相手だ…。


 だが回復阻害も永続では無いはずだ。キリエの回復魔法で少しずつ治っているのがその証拠だ。


 それに、僕はキリエほどではないが、ツボミの数倍は耐久力があるはず。まだまだ持ちこたえられる。


 いまは信じて時間稼ぎをするんだ。



 骸骨は再び距離を詰めるために走り出す。


 とにかくあの槍に触れるのはマズい。なんとか距離を保つんだ。


 だが、鬼ごっこというわけにも行かないだろう。


 ……難しく考えるのはやめだ。


「黒龍拳:壱ノ型!『砕牙衝』!!」


 迫り来る槍をすれすれで躱し、腹部に重い一撃を叩き込む。 追撃には持ち込まず、そのまま壁まで吹き飛ばした。


 本体を殴れば距離は離れるだろう?コレでジリ貧ループからは抜け出せる。


 後は僕の頑張り次第だ。



 立ち上がった骸骨は、2本の槍を流れるように投擲する。


 拳で弾くのは良くないと分かったからには、確実に避けるしか無い。


 射線をずらすのでは無く、大げさに動いて自分がライン上から外れるんだ。


 2本目を躱した辺りで、再び骸骨が瞬間覚醒。


 しかし、今度は予想しきっていたので、奇襲の一撃をなんとかしゃがみ込むことで回避。


 ただでは終わらないのが僕だ。腕を軸に体を回転させ、足払いをかける。


 そして再び壁まで蹴り飛ばし、僕自身も大きく距離を取る。



 順調だ。


 だが、このまま行くとも思えない…。さっきまでは不意打ちが上手く決まっただけのこと。それに、全力を乗せた拳でも余裕で立ち上がってくるようなバケモノだ。まだ何か隠し球があるだろう。



 キリエの方は、心なしか落ち着いたように見える。どうやら一命は取り留めたらしい。


 ツボミ…君が立ち上がるまで、僕が守り切ってみせる!


改稿作業に伴って、今回から話数が消えます。

と言うか何故か分かりませんが、改稿作業始めてからPVが倍近く増えてるんですが、一体どうしたんでしょう。


次回更新は10月14日(土)の20:00です。

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