113話 VSオーディン1
蓄積したダメージに、思わず私は膝をつく。
オーディンはそんな私を見下すと、少し残念そうに、炎の中から2本の槍を取りだした。
とどめとでも言いたいのか? 私だって…こんな所で終わるわけには行かない!!
「来るなら…正面から来いよ…!」
ふらつく足で立ち上がり、白夜と、取り出したブラックオブディスペアーを構える。
二刀流の防御で、傷が癒えるまで防ぐ事が出来れば…。
だが、コイツはさっきから槍を投げるだけだ。この程度なのか…はたまた遊んでいるのか…。
オーディンは両手の2本の槍を交差させるように振るう。槍は雷のようなオーラを纏い、力強く私に襲いかかる。
だが、ただ喰らうだけの私じゃ無い。
両手の剣を、その槍にカチ合せ、攻撃を受け止める。
だが、弱った私の体は、力強い薙ぎ払いの威力を殺しきれず、持ち上げられるように吹き飛ばされることになった。
壁まで吹き飛ばされ、背中を打ち付ける。
口や、傷からはゴボッと血が溢れだした。
これ…ヤバいな…。魔物は人間と比べてあまり血液に頼ってないが、ここまで出血したら、流石に出血多量で死ぬぞ…。
ってか、普通にダメージ蓄積しすぎて余裕で死ぬわ…。
そして更に絶望的なことに、オーディンがもう動けない私に向かって、投擲モーションを取ったのがぼやける視界に映り込む。
あぁ、私はこの程度で死ぬのか。3回目の死を経験するのか。
絶望的なはずなのに…。
絶望的すぎるはずなのに…。
私のこの疼きは何だ?
溢れんばかりの力が立ち昇ってくるようなこの感覚…。そして、体が燃えさかるかのようなこの感覚…。
これは一体何だ?
クリアになり始めた視界に映り込む2本の槍。
それを、反射的に動いた私の腕がつかみ取る。
その私の腕は、赤黒い崩壊のオーラを濃く纏い、つかみ取った槍を破壊し始める。
口の中にも違和感。
目立つ八重歯だったが、それが今では牙のように鋭く尖っている。
そして背中だ。
見えないはずだが、なんだか燃えさかる翼でも生えたかのような感覚がある。
マンティコアの時も翼はあるが、それとは少し違った感覚だ。 そして、動かそうと思えば動くことも分かる。
更に、みるみるうちに傷口が治り、ふらついていた体にも、絶好調の時のように力がみなぎっている。
見れば、全身からは赤黒い魔力が噴き出しているが、いつかの暴走状態とは全く比べものにならないほどの安定感を保っている。
オーディンですら、一歩引くような力の放出。
しかし、
「また前と同じか…」
スキルが使えないのだ。
「まぁ良い!殴り勝てば良いだけの話だッ!!」
さて。反撃開始だ。
オーディンはとっさに馬を操りながら槍を投擲する。
私は飛んできたその槍の横を薙ぎ払うように殴りつけ、その進路をそらす。
壁に突き刺さった槍を見ると、私に殴りつけられた部分が抉り取られたかのように破損していた。
どうやら今の私は破格のステータスに加え、常に崩撃発動のようだ。
さて、借りは返させて貰おう。
私はオーディンの、その骸骨の目を見つめる。オーディンもまた、私を見つめる。
「この命を賭けた勝負…勝つのは私だ!!」
力強く、その一歩を踏み出す。
前方に打ち出されたかのように一直線で距離を詰め、振り上げた拳を突き出す。
オーディンもまた虚空から作り出した槍を2本交差させ、攻撃を受け止めるが、今の私の火力は異常で、その槍ごと、オーディンを吹き飛ばす。
更に、馬の方もオーディンにともなって吹き飛んだ。
後方では私の踏みきった地面がほんの小さなクレーターのように凹んでいるのが分かった。
だが、奴はこんなもんじゃ沈まないだろう。追撃に備えねば…。
再び拳を構える私。しかし、オーディンが立ち上がる気配が一向に無い。
それどころか、オーディンは砂のようになって、地面の奥へと消えていった。
……逃がしたのか?
部屋中を覆っていた障壁も消えているし、不意打ちというわけでは無いんだろう…。
そしてもう一つの扉は、誘い込むかのように開いている。
ここで一度撤退するのも手だが…こんな奴を野放しにして良いのか?
………追うか。
私は下りの階段に向けて歩き出す。
その階段はらせん状で、まるで地底のそこまで続いているかのようだった。
足音が反響する。
この先に一体何があるのだろうか。
この三連休を利用して、大規模な改稿を行うことにしました。
なので、3連休中は更新出来ません。
もしかしたら話数も変更になるかも…。
そんな感じで次回更新は10月10日(火)の20:00です。