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魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
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107話 グラスティア帝国




 グラスティア帝国。 ギルドなどが大きな権力を持つ、力が物を言う国だ。


 力と言っても、筋力だけでは無い。 魔力や知力など、あらゆる分野にて個々の技能を競い合い、お互いを高め合う、そんな国だ。


 そのため、取り締まりなども厳しく、治安もそこそこ良い。



「どうだ?良い国だろう?」


 遙か真下に見える町を見下ろしながら皇帝がそう言った。


「ええ、本当ですわ。素晴らしいですわね」


 答えたのは姫様。



 龍化し、ゆっくりと飛んでいるツバキ。その背中には皇帝と勇者、そして姫と変態が座っている。


 私達は頭の上だ。 だらしなく胡座をかく私の足の中に、すっぽり収まるようにしてキリエが座っている。


『お城が見えてきたけど、あそこに降りれば良いのかい?』


 龍化したツバキの声はずしっと響く。


「あぁ、前庭に降りて貰えるだろうか」


 言われた場所を目指し、ぐんぐんと高度を下げていくツバキ。


 そして、そのまま大地を揺らしながら着陸した。



 ヤバそうな巨体が急に降りてきたことで、城の中から沢山の兵士達がゾロゾロと現れ、厳戒態勢となってしまった。 まぁ予想は出来ていたが。


「諸君、武器を下ろせ。私だ」


 慌ててツバキから飛び降り、兵士達を鎮める皇帝。 これって、少し離れたところに着陸すれば良かったんじゃ無いか?


「まぁ色々あってな。フリード王国からの代表者と、私の客人達だ。粗相の無いようにもてなしてくれ。 特に、あの銀髪には絶対何があっても無礼を行うな。国が滅ぶ」


 ……まぁ後半は聞き流すとして、どうやらおもてなしをして貰えるらしく、案内されるがまま、城の内部へと向かう。



 フリードよりも大きな城で、内部もそこそこ入り組んでいる。 所見ではほぼ確実に迷ってしまうレベルだ。


 丁寧な説明を受けたが、それですら複雑すぎて最初の方を覚えていないような規模だ。



 最終的に、遅めの朝食、と言う事で食堂へと案内される。


 使用人の数もそうだが、1人1人が優秀なようで、案内されている間に、準備は全て整っていたようだ。


 長机では無く、丸いテーブルで、等間隔に7つの椅子が並んでいた。


「並びなどは気にせず、好きな場所に座ってくれ」


 好きな場所に、といわれると少し困ってしまうよね。


 でもそこはフリーダムなキリエさん。即行で一番近い席を確保。 続いて「じゃあ僕も」、とツバキがキリエの右隣に座る。


 私もキリエの隣が良かったが、「快適な空の旅だった。ツバキ殿は本当に素晴らしいな」といいながら皇帝がキリエの横に座り、その隣には勇者が座る。


 そんなこんなで変態と姫に挟まれる形で私も着席。



 私達が席に着くと、メイドさんが慣れた手つきで素早く料理を運んできた。


 コンソメ風味の野菜スープが個々に配られ、テーブルの中央にパンやピラフなどのバイキングが置かれる。 朝だし、軽めで良いだろう。


「さ、遠慮せず自由に食べてくれ」


 今回も一番最初に動いたのはキリエ。 カレーピラフなのか、香辛料の匂いが漂うご飯を皿に盛り、コッペパンとジャムをそこそこ大量に確保。 キリエさんは飛び抜けて大食いである。


 キリエに続くように各自が取っていき、私も習って小さなクロワッサンを1つだけ取る。


「ツボミ様は小食なのですね」


 隣の変態ニンジャが私の手元を見て、そう話しかけてくる。


「まぁ元々小食ってのもあるけど、朝は特に、かな」


「そういえばいっつも僕達がご飯食べに行くとき、ツボミは来ないよねぇ。いっぱい食べないと大きくならないよ?主にこの辺が。」


 そう言って胸の辺りを指さすツバキ。 華麗に無視することにした。



「………でさ、ずっと聞きたかった事あるんだけど、いい?」


 隣の変態をつんつんして話しかける。 小首をかしげる変態ニンジャ。


「姫はなんとなく分かるよ? でもなんで忍者まで居るわけ? ってか、お前何者よ?」


 そんな私の疑問に乗るような形で皇帝が口を開く。


「では改めて、詳しい自己紹介でもしようか。お互いのことをもっと詳しく知っておくべきだと思うのだ」


 目線で確認されたので頷いておく。


「提案者の私から行こう。 私はシルヴィア・グラスティウス。このグラスティア帝国の皇帝だ。 今回の件について、詳しい話はまた後ほどすることにしよう。 宜しく頼む」


 次はお前だ、とでも言うように皇帝が隣の勇者をつんつんする。


「弟で、勇者のルザリオ・グラスティウスです。傭兵やってます。困ったことがあったら、言って下さいね」


 そういえばコイツの声聞くの、初めてくらいじゃないか? 前にもあったっけか?



 流れ的に次は姫だ。


「メアリア・フリードですわ。フリード王国の王女です。得意なのは魔力の糸を使った操作系の魔法ですわ。どうぞ宜しくお願い致しますわ」


 と言う事は次は私か。


「ツボミだ。肩書きも得意なことも特にないけど、まぁ宜しく頼む」


 そして次はお待ちかねの忍者。


「御影と申します。今回はメアリア様の護衛として同行することになりました。本職はフリーの忍者です」


 あっ、そのままなんだ…。


 なんだか上手いこと暈かされたような気もするが、まぁ良いだろう。


「僕はツバキ。黒帝龍だ。他は…特にないかな。まぁよろしく~。」


「……キリエ…ワルキューレ…」


 この2人の自己紹介はいつも同じだな…。



 ちなみにスープは具材によく味がしみこんでいて、結構美味しかった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



「それでは朝食も終わったことだし、早速解析を行うラボへ向かおうじゃ無いか」


 食べたばかりで少し休ませて欲しいが、どうやらそうも行かないらしい。


 というか結局半分以上キリエが食べたが、他の人は大丈夫だろうか。



 王城を出た一行は、案内されるがまま王城近くの、ある建物へと案内された。


 ガラスなどが使われた清潔感のある入り口とは裏腹に、奥の方は厳重な警備が施され、中も全く見えないようになっている。


 ガラス戸を開け、中に入ると、1人の白衣の男が現れた。


「どうも皆様。私が解析をさせて頂くチームのリーダーです。どうぞよろしくお願いします」


 礼儀正しくお辞儀をする男。その後にメガネをクイッとあげる。インテリだ…。


「そういえば気になってたんだけど、解析って何するの? どうやって作ったか、とかそう言う事?」


 私が訪ねると、よくぞ聞いてくれましたとでも言わんばかりに身振り手振りを交えながら話し始める。


「その武器はアーティファクトを解析して作られた物でしょう?ならばそれを解析することで、元になった物がどの程度の脅威を持つのか、と言う事を割り出すのですよ。 加えて、アーティファクトのテクノロジーがあれば、様々な技術の発展が狙えます。 様々な方面での向上が見えてくるのですよ!」


 熱く語る男は、流石科学者とでも言わんばかりの、のめり込み具合だった。



「で、僕達は何をすれば良いんだい?」


「ツボミ殿やツバキ殿、キリエ殿はアーティファクトに詳しいのだろう?是非その知識を借りたい。 姫様は私達とラネシエルの件で、だな。」


 ツバキの質問に答えたのは皇帝。


 でもそう言う事ならちょっとキツいぞ…。


 なんせ、私達はアーティファクトを扱ったり、それを扱う者を知っているが、構造とか技術とか、よく知らないんだよ…。


 でも、アイリスは創ることも出来たみたいだし、もしかしたら私も出来るかも知れないね。


「では詳しいお話は奥で。現物も交えて致しましょう」


「メアリア殿、それでは私達は王城に戻るとしよう。 ツボミ殿、よろしく頼むぞ?」


 白衣の男に案内され、建物の奥へと向かう。


 なんだか流されてる気がするなぁ。 ちょっと面倒になってきたぞ…。



「この部屋です」


 重たい扉を開け、入った部屋は、かなり広く、様々な機材が置かれている部屋だった。


 研究者は案内してくれた男を含めて5名。男性3人と女性2人だ。


「じゃあ早速これを渡しておくよ」


 そう言って私がインベントリから武器を取り出して渡すと、科学者達は大切そうにそれを包んで、テーブルの上へと運んだ。


「大切に預からせて貰います。 では早速説明をさせて頂きますよ」


 まずは、とメガネが奥の機械を指さした。


「あの機械で内部構造をスキャンします。 その次はアレで何を参考に作られたのか、大まかに割り出し…」


「言われてもよく分からないから、そこは皆さんで頑張ってくれ…。 で、私達は何をすれば良いの…?」


 ううむ、と首をかしげる科学者。


「そういえば皇帝はあなた方に何をして貰うつもりだったのでしょう…。 もしかするとテストとかですかね。 それならば3日後辺りにもう一度来て下さい」



 まぁそんな感じでいきなり暇になってしまった。


 堅苦しいのもいやだし、適当に宿でも取ろうかな…。


 あぁ、ご飯作ろうっと。 急だけど、作りたくなったんだ。仕方ないね。

次回は24日の20:00です。


最近は再びTRPG熱が湧いてきました。

私、GM経験100回以上あるんですよ。自作シナリオとかも別名義で上げてたりします。

本日のどうでもいい話でした。

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