表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
79/158

106話 お風呂



 そんなわけで王城前へと舞い戻ってきた。


 町中で私の悪評が流れていないことから、例の件は隠蔽されているらしい。


「ちょっと王様と面会がしたいんだが、今会って貰えるだろうか」


 流石の私も、立場的に特攻は出来ないので、門番に許可を求める。


「王から、貴方が来たらすぐに王の間へと通すように言われております。どうぞお入り下さい」


 門番さんがさっと開けてくれたことや、王の言葉からして、招かれざる客というわけでは無いようだ。



 そんなこんなで王の間の扉の前へやってきた。随分慣れたもんだ。


 コンコン、とノックする。


「ツボミ様ですか?」


 中から王様の声が聞こえてきた。何故分かったんだ…。


「入っても?」


「一体どうしたのです。いつものように派手に特攻して来ないなんて。とにかくお入り下さい」


 流石の私も自分のしたことくらい分かってるさ。


 あんなことをしといてドアを弾け飛ばすような特攻なんて出来ねぇよ…。



 ドアをガチャッと開けて中に入る。


 すると、私に向かって何かが飛び込んで来た。


「お姉様ぁ!!助けて下さって、本当にありがとうございますわ!!」


 私にがしっと抱きついたお姫様は少し泣いているような声だった。


「本当に…怖かったのです…。お姉様に助けて頂けなかったら、今頃(ワタクシ)は…。うっ…」


 そのまま私の胸に顔を埋めて泣き出したお姫様。


 そうか、これが守りたい物を守った結果か。


 なんだ。やっぱり正しかったじゃ無いか。



「私からもお礼を言わせて頂きます。ツボミ様、私達を助けていただき、本当にありがとうございました」


 今度は王妃様から。


 それをニヤニヤ笑いながら見ている王様。 私の葛藤も、お見通しって訳か。


 しかし、王様は普段の凜々しい佇まいを取り戻すと、口を開いた。


「私からも感謝を。妻と娘を助けて頂いたのですから、お礼を言わねばなりません」


 そう言って頭を下げる王様には、やめてよ、といっておいた。



「今日、私が来た理由、どうせ分かってるんでしょう?」


「ケジメをつけに来た…というべきなのでしょうか」


 やはりお見通しか。


「人間の国で、殺人というのは重罪だろ?私が魔物だからといってそれが適応されないわけでは無い。 場合が場合と言っても、武器を捨て、逃げ出した者を殺したのも事実だ。 判断はあんたに任せる。私はそれに従うだけだ」


 それを聞いた王は、一つ、大きなため息をついた。


「ツボミ様。私は感謝はしていますが、貴方を責める気など、一切ありません。貴方が助けた者は、私達だけですか? 先日の襲撃者騒動の時、最も貢献した者は一体誰だというのです。 ですよね?皇帝殿」


 王が向いた方向から、ひょっこり現れたのは皇帝さん。


 一体何処に居たんだろうか。


「むしろ、表彰ものの活躍では無いか? なんせ、あの場には二人の国のトップがいたんだからな。 そんな場所で襲撃事件が起き、怪我人は警備の兵士たった1人だけと来た。それも軽傷で済んでいる。 何がいけないというのだ?」


 ……どうやら私は色々と深く考えすぎていたようだな。


「そう言ってくれるなら、お言葉に甘えるとする。 それで…会談の結果とか、尋問とか、どうなったか聞いても良い…?」



「結局、ツボミ殿の案で行くことにした。 尋問は今だ難航しているようだ」


「ちなみにツボミ様…。もしかして単身で一国くらい潰せたりするのですか…?」


 皇帝が答えてくれた後に、王様が爆弾を落としていく。


 単騎で国を敵に回して勝てるかって? バカじゃねぇのか。


「戦いは質も大事だが、やっぱり数だ。流石に無理……と答えたいんだが…。 生憎、今の私にはそれ分を補って余りある回復力があるわけで…。 規模にもよるけど、多分ソレイジくらいならいけるかも知れない…」


 まぁキリエとツバキが協力してくれたらフリードでも多分余裕だが。


「……ツボミ様、冗談は笑いながら言うものですぞ…」


「いや、オズウェル殿、目がマジだ。 どうやら冗談ではないらしいぞ…」


 顔を合わせて苦笑いする2人。


 どうやらマジモンの爆弾を落としたのは私らしい。



「オホン、まぁそれは良いとして、ツボミ殿、このまま帝国に来てくれないか?」


 ん?どういう話の流れだ? 勧誘は受ける気は無いぞ。


 しかし、そんな私の思考を読んだのか、王様が言葉を付け足した。


「帝国の人員と設備で、例の複製アーティファクトの調査をしようという話になりまして。 そこに本物を扱っているツボミ様の意見が欲しいと」


 ふむ。なかなか興味深い話題だ…。


 実は私自身、例の複製品についてもの凄い気なっていたんだ。


「……なかなか素晴らしい話なんだけど…仲間にも聞いてみないと…」


「ああ、それなら大丈夫だ。今日も滞在するんでな。明日の朝、出発する。同行して貰えるのならば、明日の朝、王城前に来てくれ」


「分かった」



 って事は、雫とはしばらくお別れか。


 雫はフリードの勇者なんだし、流石に無理だろう。


 まぁともかく帰って2人に聞いてみよう。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




「って訳で、帝国、行かない?」


「キミはいつも唐突だねぇ…。 まぁ、僕もちょっとあのパチモンには興味があったんだ。」


「………ツボミの…居るところが…私の…居場所…」



 そんなわけでもの凄い速度で同意が取れてしまった。


 キリエのこの真っ直ぐな好意が、私のハートを射止め続ける理由なんだろうな。可愛い。



「そういえば、あの複製アーティファクト、本物に比べてどのくらい再現できてるんだろうね」


「ううむ、元になった物が風化してほぼ使い物にならなくなっていると考えるなら、80%はいけてるんじゃ無いかねぇ…。」


 ふーん、そんなもんか。


 まぁそれなら100%でも脅威にはならないだろうな。


 ただし、実物が完璧で、まだ1%位しか再現できていないとすれば、十分脅威になり得る。 やはり早めに潰すべきなのだろうか。



「そういえば、ツバキたちが現役だった時って、こんなのがあふれかえってたんでしょ?」


 そう言いながら白夜を見やる。


 すると、ツバキはそれを手振りまでつけて否定した。


「いやいやいや!そんなのいっぱいあったらヤバいって! それはアイリスのお手製なんだよ。それで、危ないからって、僕が預かってたんだ。」


「ふぅん、そんなもんなの?」


「まぁ、最高性能品でツボミの今のそれ位だろうねぇ。それに、古代の物だし、今になったら十分性能は落ちてると思うよ?」


 そう言ってツバキが指さしたのは私の腰のカースオブキング。


 そう考えると私の武器ってヤバいんだな、って実感する。


 でも確かアイリスはこのカースオブキング、まだ真の姿じゃない的なこと言ってたな…。


 ……え? アイリスが知ってるって事は、もしかしてこれもアイリスのお手製なのか? ……流石に考えすぎか…?



「………ツボミ…あれ…使った……体…大丈夫…?」


「そういえば全然平気だ…」


 そういえば、前回あの赤い獣が発動したときは体がボロボロになったっけ…。


 融合の影響で、私の体も赤い魔力に適応するように変化したのかな。


 っていうか、赤い魔力も普通の魔力も扱えるんだけど、私の体ってどうなってるんだ?


 まぁ、考えても仕方ないか。



「キリエ一緒にお風呂入らない?」


「………ツボミ…エロいから…やだ…」


 ガハッ…。


「じゃあ僕と入ろうか。まな板同盟だし…。」


 ツバキは自分で言ってて悲しくなったのか、少し寂しそうな顔をしていた。


 それにしても、誰かとお風呂に入るなんて、初めてじゃ無いだろうか。




 ちゃぽん


「「はぁ~」」


「やっぱり風呂は良いねぇ。」


「わかるぅ~」


 ツバキにすっぽり抱え込まれるようにして湯船に浸かる。


 それにしても、ツバキの肌はなかなか柔らかいな…。当てる瞬間だけ部分龍化するから、近接戦闘特化でも筋肉質じゃ無いのか。


「……ツボミ、今なんか変な想像しなかったかい…?」


「気のせいじゃない?」



「こうしてツボミとお風呂入ってると、あの頃を思い出すよ。アイリスとも、よく一緒に入ったなぁ…。」


「えっ、百合…?」


「違うわ!!」


 良いツッコミだ…。


「ってか、その頃にもお風呂あったんだ…」


「そらあるさ。でも、アイリスはお風呂が好きじゃないみたいでねぇ…。いつも体を流すだけで済ましてたから、僕が無理矢理一緒に入っていたのさ。」


 アイリス…。風呂嫌いだったんだ…。


 不死鳥って炎っぽいし、そういうことなんだろうか。



「ねぇ」


「ん~?」


「なんで私は胸、無いのかな」


「いや、知らないよ。僕だって無いし…。」


「私よりはあるじゃん?」


「……あるね。」


「キリエとかずるくない?」


「絶対B以上はあるね、あれ。」


「実は雫も私達よりあるよ」


「……ってか、ツボミも極端だよねぇ…。」


「前世はAのBに近い方だったんだけどね…」


 ………何でこんな会話になったんだ…。虚しいだけじゃ無いか…。


「王妃様のあれ、羨ましいな…。DかEだぞ、あれ…」


「でもそこまで行くとむしろ動きづらそうだよねぇ…。」


「まぁ戦いと生きてるような私達には…。これでいいのか…。」


 2人の頬をキラリと水滴が伝った気がした。


 それでもなお、ぐだぐだした会話は終わらない。


「姫も、私の妹みたいな感じなのに、C位あるぞあれ…。抱きつかれる度に押しつけられる感覚、分かって欲しい…」


「そういえばあの踏んで下さいの子も、そこそこあったねぇ。お姫様くらいだったかな?」


「ニンジャって、何で何処でも巨乳なのかな…。私もニンジャになったら増えるかな…」


「無理じゃ、無いかな。」


「私だって押しつけてみたい…」


「まぁそんな相手も居ないんだろう?」


「キリエが居るじゃん…」


「うわぁ……。流石にちょっと引くよ…。」


「そういえばアイリスも完全に私みたいだったよね…これアウトじゃ無いかな…」


「いや、もうすでにアウトなんだよ…。」



「………そろそろ上がろうか…」


「…心が持たなそうだねぇ……。」



 結局、自分たちの心を自分たちで抉っただけの結末になった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 そんなこんなで翌朝となった。


「おお、早かったな、ツボミ殿。 そちらはお仲間さんかな?」


 王城前へ到着すると、既に皇帝殿が馬車を準備していた。


「キミが皇帝かい?僕はツバキ。黒帝龍だ。宜しく頼むよ。」


「……キリエ……ワルキューレ……」


 挨拶する2人。 そういえば私は名乗ってなかった気がするな。まぁ良いか。



「黒帝龍とワルキューレ…? 冗談では……無いみたいだな…」


 なんだか明らかに動揺している皇帝。まぁそれもそうだろう。


 ワルキューレなんて超希少種だし、黒帝龍なんかになればもはや伝説上の生き物だ。


「ちなみにツボミ殿は…?」


 私…か。何だろうな。 マンティコア…だったが、不死鳥混ざってるからな…。 力的には両方互角くらいに使えるし…。


「分かんない。多分マンティコアだと思うけど不死鳥かも知れない」


 曖昧に答えておくことにした。


 皇帝も、大きくため息をついて深くは聞いてこなかったので、まぁ良かったことにしよう。



 少し時間が経って、王様達が出てきた。


「今回、我が国から同行するのはこの2人です」


 どうやら同行者がいるらしい。


 そう言われて前に出てきたのは、よく見た2人だった。


「改めまして、王女、メアリア・フリードですわ。宜しくお願い致しますわ」


「私は、御影(みかげ)と申します。どうぞよろしくお願いします」


 王女と…。変態…。


 変態は御影って言うのか…。


 無駄に格好いいな畜生。



「では早速向かうとしよう。オズウェル殿、世話になったな。今後とも、宜しく頼む」


「ええ。こちらこそ。道中お気をつけて。 ツボミ殿は…心配要らなそうですな」



「そういえば、私達、馬車の数百倍速いけどどうする?それ、フリードの馬車でしょ?」


「……そういえば龍と言っていたな…。もしや乗せて貰えたりするのか?」


 ツバキの方をちらっと見る。


 帰って来たのはサムズアップ。


「良いみたいだよ?」


 再び王様の方を見てみる。


「それならば、私からも頼みました。むしろ安全性が上がりそうですし」



 と言う事で、龍の背に乗って帝国へ向かう事になった。


 龍の背に乗ってって、格好いい響きだな。

次回は22日の20:00です。


やっとこさお風呂回ですが…。

どうしてこんなに歪んでしまったんだ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ