↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
66/158

94話 赤き獣

今回ちょっと長いです



 走る。走る。走る。赤い魔力の濃い方へ走り続ける。


 そして僕達がたどり着いたのは大きな扉の前。いや、違う。扉だったモノの前だ。


「………ツボ…ミ…?」


 視界に入ったのは、血のように赤い獣だった。


 瞳は血を湛えたように赤く輝き、髪は立ち昇る赤い魔力で宙になびき、不敵な笑みを浮かべ、手首や口から、視認できるほどの濃い魔力が漏れ出している。そして、その息づかいはまさしく獣のそれだった。


 そして、獣のように鋭くなった右手は、引き千切った首を掴んでいる。すぐ側には豪華な法衣を纏った首の無い男の死体が。恐らく教皇だったのだろう。


 次いで視界に入ったのは2人の男と1人の女。そして十数人の女の魔物の死体だ。虚ろな目で臓物をぶちまける魔物の女達は、例外なく服を着ていない。


 体を黒一色に固めたオールバックの男、大きな体で斬馬刀を持つ、上裸の男。そして黒いビジネススーツを身に纏った妖艶な女だ。あのオールバックは聞いていた特徴からして魔狩りのウァレオス。きっと残りも魔狩りだろう。普通の人間が、この濃い汚染魔力の中で立っていられるわけが無い。


「ツボミ!正気に戻るんだ!このままでは、何の罪も無い人々が死に絶える事になる!」


 魔狩り達は呼びかけた僕に気づいたようだが、今はツボミを敵と見なしているのか、再びツボミに向き直った。


 ツボミも、ゆっくりと僕の方向を振り向く。ツボミが動いたことで、割れた大きな窓から月が見え、漂う赤い魔力と相まって、赤い月のように見えた。


「私が戦う理由…。それは自分のためだ。そして、自分が守りたい物のためだ。私の守りたい物を傷つける物は消す。この連中は私の目の前で、魔物達を、11人も殺した。それも、ただ殺しただけじゃ無い。だから私はコレを消す。邪魔立ては許さない」


「ツボミ……それが君の本心だって言うのか?」


「本心?違う。私が本当に目指す物はもっと先にある」


「それは一体何なんだい…?キミは心の奥底に何を秘めている!?」


「………ツバキでも…邪魔するなら敵と見なす。私がこいつらを殺すまで、黙ってみていてくれる?」


 ツボミ…確かに僕も、魔物を殺した連中は許せない…。でも、コレは何かが間違っている!


 キリエの方を見ると、僕の意思を感じ取ったのか、大きく頷いた。


「敵でも構わないさ。僕はツボミを止める。」


「………今度は…私が助ける番」


「……そう。…前から一度、ツバキとは本気で戦ってみたかったんだ。キリエも一緒なら手応えはあるだろう。仕方ない。メインディッシュは前菜の後にしよう」


 ツボミの体から吹き出す赤い魔力が一気に量を増す。今のツボミは何故か武器を持っていない。そしてあの外見。もしかすると、マンティコアの姿と同調しているのかもしれない。


 魔人の姿のスピード。マンティコアのパワー。勝てるだろうか。いいや、絶対無理だ。でも、負けない。勝てないけど、僕は負けない。


「魔狩り諸君、今は共闘しないかい。逃げようとすれば死ぬ。僕達が負けてもどのみち死ぬ。ならば、今は共に戦おうじゃ無いか。」


 憎き魔狩り連中だが、今は手段を選んでいられない。魔狩りもそれが分っているのか、無言で頷いた。


「良いよ。五対一だ。素晴らしいじゃ無いか。かかってくると良い」


 オールバックが懐から取り出したナイフを投げる。それが戦いの開始となった。


 常人には視認できないほどの速度で放たれたナイフは、ツボミが前に出した教皇の首に突き刺さる。そのまま教皇の首は投げ出され、亜音速まで加速し、オールバックの男へ向かった。


 オールバックも素早い動きでそれを躱し、教皇の首は壁に当たって、泡のように弾けた。


 その一連の隙を突いて、残りの2人が駆け出す。不本意だが、合わせて僕も駆け出す。


 女はどこからか、鎖を取り出し、叩き付ける。ツボミはほんの少し体を動かし、それを避けると、右手を軽く振り、巻き起こした魔力の爆発によって、女を壁まで吹き飛ばす。


 上裸は、手にした斬馬刀を叩き付けるが、左手で掴まれる。ツボミの手は傷つかないどころか、そのまま力を込め、握っていた場所を粉砕した。


 だが、これにより、右手と左手、それぞれに隙が生じた。真後ろからの攻撃、防いでみろ!!


「黒龍拳:壱ノ型!!『砕牙衝』!!」


 これは拳に魔力を集中させ、回転を加えながら叩き込み、内部で破裂させる技だ。これが僕の戦い方。近接戦闘術『黒龍拳』だ。


 ツボミは恐ろしい攻撃力の反面、耐久力は低く、脆い。この一撃で粉砕する!!


 死角からの一撃。命中したかに思えたそれが、ツボミに届くことは無かった。


 限界の壁を取り払い、片足を軸にして繰り出された後ろ回し蹴り。赤い魔力を濃密に帯び、壁を突き破った隣の部屋まで僕を吹き飛ばす。


 すぐに僕と魔狩りの女にキリエが回復魔法をかけてくれる。凄まじい回復力によって、すぐに回復し、再び立ち上がる事が出来た。


「一度阻まれたくらいで止まりはしないさ。僕はまだまだ戦える…。」


 ウァレオスが口を開く。


「4人同時攻撃ならばなんとかなるかもしれません。支援は任せましたよ」


 その言葉を言い終わると同時に、私達は再び突進。キリエは支援のスタンバイをする。


 ウァレオスは懐に隠していた長い針のような物を取り出し、逆手に構えると、懐に潜り込もうとする。上裸は砕けた斬馬刀を振り下ろす。女は二本の鎖を振るう。動きからして、僕に一撃を任せて自分たちは隙を作ろうとしているのが分る。癪だが、策に乗ってやるとしよう。


 キリエに目配せをすると、キリエは頷いて、行動を起こす。なにやらぶつぶつ言った後に、キリエを中心として大きな円を描くように、光の輪が広がった。内部に綺麗な紋章の描かれたそれは、キリエの『聖域』という魔法で、内部の指定者のステータスを上げる効果だ。


 ステータスの上がった3人の攻撃を、ツボミは事も無げにあしらう。首を動かして針を避け、斬馬刀を受け止め、鎖を空いている手で受け流す。今だ。


「黒龍拳:参ノ型!『緋雨六連』!!」


 参ノ型は連撃型。緋雨六連は強力な外部破壊攻撃を同威力で六回繰り出す技だ。今度こそ当ててみせる!


「良い攻撃だ。ただ、遅すぎる」


 静かなツボミの声が耳に届く。一撃目は、3人を吹き飛ばした左腕が、そのまま横薙ぎに振るわれて弾かれる。二撃目は体を横にずらされ、避けられる。


 三撃目。僕は、その攻撃を繰り出すことが出来なかった。



 胸に痛みが走る。有り得ない激痛だ。それもそのはず。ツボミの腕が、胸を貫いていた。


 体から血の気が引いていく。


 貫通した腕には、心臓が握られていた。


「終わりだ」


 氷のように冷たい言葉と共に、心臓は握りつぶされ、僕はあっけなく崩れ落ちた。


「………!…ツバキ!!」


 キリエの悲鳴だ…。あぁ、クソ…。もう…動け…ない…。………ツボ…ミ…



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 腕を引き抜くツボミ。崩れ落ちたツバキの体からは、大量の血が流れ出した。


 ツボミ…一体どうしちゃったんだ…。私を助けてくれた、あのときのツボミはどこへ行ってしまったんだ…。


「……ツボミ…もとの…優しいツボミに…戻ってよ…」


「キリエ。生憎、どっちも本当の私だ。キリエを助けたのも、ツバキを殺したのも、どっちも私だよ」


 でも、ここで折れる私じゃ無い。今までなら立ち直れなかったかもしれないけど…。私は強くなった。


「………ツボミは…私が…助ける!!」


 私の放った次元斬。勿論当たるわけは無かったが、魔狩りが切り込む時間は稼げた。


 鎖がツボミの右腕に絡みつき、拘束する。斬馬刀が横薙ぎに振るわれる。そして再び投げられたナイフ。そのナイフを追うようにオールバックが繰り出した正拳突き。ツボミは避けられない…はずだった。


 ツボミは避けなかった。避ける必要が無かった。前方で再び赤黒い魔力の爆発が起こる。


 攻撃中だった3人は避けられずに吹き飛ぶ。鎖はちぎれ、斬馬刀は手を離れ、宙を舞う。今だ。


「……ツボミ!」


 斬撃波を飛ばす。間髪入れずに次元斬でツボミの後方、左右を切り払う。ツボミから学んだ戦術だ。1つ避ければ別の攻撃に当たる。退路をふさいで一撃を当てる。ツボミの得意なやり方だ。


「………ッ!」


 ツボミは初めて大きくその場を動く。次元斬の範囲外までバックステップしたツボミ。大きく体勢を崩しているのが分る。追撃なら今しか無い。だが…今ツボミまで届く攻撃が無い…。


 その時だった。足元から影が飛び出す。


「黒龍拳:参ノ型!!『虚影乱舞』!!!」


 白い炎のような光が無数の人型へと変化し、ツボミに襲いかかる。魔力で出来た、実態を持つ分身だ。


 腕を交差して防ごうとするツボミだったが、驚異的な破壊力の拳が一瞬のうちに何度も襲いかかり、防御を弾かれる。


 崩れた防御をツバキは見逃さない。


「黒龍拳:弐ノ型!!『炎龍三連』!!」


 炎を纏った左手を振り下ろす。そのまま回転を利用して右足にツボミを引っかけて地面に叩き付け、更に遠心力を乗せた右手を腹部めがけて叩き下ろす。


「がはッ!」


 目を見開き、口から赤い物を吐き出すツボミ。血か、血のように赤い魔力かは分らなかったが、大きなダメージが入ったことだけは分った。


 イヤ違う。問題はそこじゃ無い。胸に空いていたはずの穴のふさがったツバキ。なぜ死んだはずのツバキが立ち上がり、ここまでの攻撃を繰り出せたのか、だ。


「僕は1回だけじゃ死なない。固有スキルの『クロノライフ』は、再使用可能までに一週間程度かかるが、致命傷を受けても、その前の状態まで自分を巻き戻すスキルだ。僕を殺したかったら二回続けて殺してみるんだね。」


 衝撃で跳ね上がったツボミを回し蹴りで奥の壁まで吹き飛ばすツバキ。


 ………もうなんて言ったら良いのかよく分かんない…。生きてて良かったって言うのと、ツボミの仲間だけあって相当狂ってるって言うのが、私の中でぐるぐる回ってる。



 ゆっくりと壁から起き上がるツボミ。


「流石ツバキと言うべきか……キリエとの連携もばっちりだし……そのキリエ自身も強いし……」


 目を閉じるツボミ。直後、赤い魔力の濃度が跳ね上がる。


「………最高に面白いじゃ無いか!!まだまだやれるんだろう!?全力で来なよ!!」


 見開いた瞳に狂乱を湛えて叫ぶツボミ。まるで自分を押さえつけ続けてきた枷が壊れたかのようだった。


「キリエ、覚悟は良い?僕達がツボミを止めるんだ。」


「………ん。…ばっちし」


 ツバキは真の力を解放する。帝龍覚醒の発動。魔狩りなどお構いなしだ。ならば私も、神装を発動しよう。


 二対の盾と純白の剣が現れる。ステータスも向上する。


「良いねぇ!最高に面白そうだ!レッツパーティーと行こうじゃ無いか!!」


 ツボミはケイオスアクセルも使っていないのに、それを超える速度で飛び出す。標的はツバキ。だが、ツバキは引くでも無く、避けるでも無く、その攻撃に攻撃で返す。


「黒龍拳:肆ノ型!『焔流』!」


 帝龍覚醒したツバキは圧倒的な身のこなしで、走り込んでくるツボミの腕を逆手で掴み、斜め後ろに受け流す。そのまま後頭部に向けてハイキックを叩き込んだ。


 私もそれを見逃さない。


「……光翼斬」


 不可視の大剣を同時発動し、長射程になった一撃目。ツボミの体を絡め取り、空中へ打ち上げる。自分自身も振り上げた勢いで飛び上がり、空中で二撃、三撃。そのまま振り上げた剣ごと、ツボミを地面に叩き付ける。


 隙を見ながら横を見やると、魔狩り達は既に気絶していた。


「………クッソ……この力…慣れてないせいで…スキルも発動できない…」


 ツボミの纏う赤い魔力が心なしか弱くなっている気がした。


「………私は………私は……」


 どんどん弱くなる魔力。なぜだか分らないが、ツボミがどんどん弱体化しているようだ。吹き出す魔力も勢いを落としている。


「ツボミ。今のキミじゃ僕達には勝てない。なぜだか分るかい?」


「………冷静さを……欠いたから……だね」


「それもあるだろう。でも、それだけじゃ無い。キリエに聞いてみたらどうだい?」


「………どう……して?」


 力なく訪ねてくるツボミ。そんな物わかりきっているだろう。


「…大切な物を…守るために…戦っているから」


「……ハハ………私の……負けだ………」


 崩れ落ちるツボミ。倒れると同時に、汚れた赤い魔力は雲霧賞賛する。


 意識を失っているようだ。詳しく見ていないせいでよく分らないが、体に蓄積したダメージも相当だろう。とりあえず回復魔法をかけておこう。


「キリエ、ここに長く居すぎるには不味そうだ。こんな深夜で宿も取れないだろうし、赤い魔力のせいで、町中もざわついてるだろう。とにかく、雫を探して合流しよう。」


 うむ。それが良いだろう。こんな派手に中央教会の窓ぶち壊してあるんだし、人が来ないのが不思議なくらいだ。


 ツボミと私を脇に抱え込むツバキ。再び翼を顕現し、亜音速で飛び出した。


「………あそこらへん」


 レーダーにかかった雫に場所を、指さしで教える。翼をしまい、降下するツバキ。着地地点には、ふくれっ面の雫がいた。


「私だって…勇者なのに…置いてけぼりだ…」


 座り込んでなにやらぶつくさ言っている雫。


「………ほら…立つの」


「うわびっくりした!って蕾ちゃんが居る!ダブルびっくり!!」


「やかましいねぇ…とにかく、今はどこかに隠れるんだ。事が事だし、追っ手が来るかもしれない。僕達だって、見られてない保証は無いからね。」


「ちゃんと後で説明してくれるんでしょ?」


「もちろんだ。ここまでのことがあったんだし、流石に黙っていられないよ。」


 私達は深夜の暗闇に紛れ、路地から路地へと隠れていった。



 そして、朝がくる。


「追っ手、来なかったねぇ……」


「そろそろ何があったのか教えてくれない?」


 だが、ツバキが話そうとしたとき、彼女が背負っていたツボミがもぞもぞと動き始める。


「………イッテェ…。体中が超痛い…。2人とも…手加減してよ…」


「何言ってんだい、僕の心臓握りつぶしたくせに。」


「そんなの、ツバキだから大丈夫だって前提の上だよ…。元々2人を殺す気は無かったんだ…」


「僕を過大評価し過ぎじゃ無いかな…。マジで死ぬかと思ったんだからね?」


 だが、立ち上がろうとしたツボミは苦痛の声と共に崩れ落ちた。


「…やり過ぎた?」


「いや、違うね。汚れた魔力をあんな大量に使って、体が持つわけ無いじゃないか。回復力を加味しても数日はまともに動けないさ。」


「みんな…あそこで何があったの?」


「とにかく宿を探そう。話はそこでだ。」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




 ツバキの背中からベッドに下ろされる。座っただけでも痛いのに、横になれなんて言われてその通りにしたらもっと痛くて。まぁこれ以上酷くはなりたくないからじっとしておこう。


「ツボミ、キミは何を見たのか。何を知ってあそこまで怒ったのか。何を憎み、何を恨むのか、教えてくれないかい。」


 どうやらこれから私は質問攻めに遭うらしい。黙秘は通用しなさそうだ。自業自得か。


「魔物奴隷化計画。聞いたことはある?」


 首を横に振る一同。


「モーガイの屋敷、それから昼間忍び込んだ王城。そして例の中央教会の全てにそれ関連の書類があった。いろいろ漁った結果、概要を掴んだ。これから説明するから良く聞いてね」


 この計画はラネシエルとリスティ、両国合同で企画された計画だ。


 人間の国全てに対魔教を広め、魔物領へ侵略、そして捕らえた魔物達を奴隷とし、労働力や愛玩用に用いる、というものだ。魔物は個体にもよるが、食事はほぼ必要ないし、人間よりも強靱だ。奴隷には最適、と言う事だ。


 勿論この計画が進んでいけば戦争になるだろう。魔物側と人間側の総力戦だ。そして、私が止めなければいけない戦争だろう。


「それだけじゃないんだろう?」


「対魔教の秘密。国民全員が対魔教なんておかしいと思わないか?魔物と暮らしたくない人々や、魔物を敵対視する人々だけが集まったなんて考えるのは不自然じゃ無いか?」


「………洗脳…って…こと?」


「キリエの言うとおりさ。教会に洗脳装置やそんな感じの魔法を設置し、周囲を洗脳する。この国、やけに教会が多いと思わない?奴らはなぜ、ソレイジ王国に教会を作ろうとした?」


「そういうこと…だったんだね」


 調べ回ったが、この国の教会にはそのような仕掛けが例外なく施されていた。そして中央教会には最も大きい物があった。


「もう、じれったいじゃないか!早く喋ったらどうだい?僕は最初から、キミがどうしてああなったのか、を聞いてるんだ!」


「そんなすぐ声を張り上げて。どうしたんだ?低血圧?」


「黒龍拳:壱ノ型……「ああ!分った分った!話すからやめて!!」


 雫の前ではあまり話したくなかったが仕方ない。ここで臓物をぶちまける展開はノーサンキューだ。


「教皇が、ヤってたんだよ。魔物の女の子達に危ないクスリを使って、無理矢理ね。そして魔狩り達は終わった魔物達をゴミ処理のように殺していた。それをみたら、さ。思考がぼやけてきてね。いま自分がどっちの姿だったのかもよく分らなくなってね。自分が誰だかすらよく分らなくなったときに、ふと右手をみたら、首を持ってたんだ。教皇の首だ。そして、どうしようも無く魔狩り達を殺したくなったんだ」


「ツボミ…キミは…」


「あのときはどっちも私だ、なんて言ったけど本当は結構怖かったよ。自分が別の自分になったみたいで。そっちが元の私なんだろうけどね。多分本能って奴だ。私は本能で殺戮を求めていたんだよ」


 視界に移っているのは私の言葉の続きを待って、顔を覗き込むキリエとツバキ。そして、驚愕と恐怖と絶望が混ざったような表情を浮かべる雫だった。


「私だけ…話について行けてないよ…結局、私以外はみんな魔物だった訳だよね?」


 震える声の雫。私が答えづらそうにしていると、ツバキが代わりに答えてくれた。


「今まで黙っていて悪かったね。改めて自己紹介をしないかい?」


 ツバキはいつもなかなかの名案を思いつくもんだ。


「僕から行こう。僕は古の時代を生きた黒帝龍のツバキだ。今はツボミの召喚獣になっている。本当の体はとうの昔に死んでるよ。ほら、次は雫の番だよ。」


「えぇ……分ったよ…。私は小春川雫。一度死んで、転生してきたよ。勇気があるわけでも無いし、勇敢でも無いけど職業は勇者。……なんか恥ずかしいね」


「………キリエ…………ワルキューレ……ツボミの眷属」


「ツボミ・キノシタ。不完全に蘇った。種族はマンティコア。目標は、世界平和ってことにしておく」



 ツボミは思った。雫は十分勇気もあるし勇敢である、と。


 雫は思った。眷属と召喚獣って、一体何だろうか、と。


 ツバキは思った。絶対に世界平和では無いな、と。


 キリエは思った。今はとにかく眠たい、と。




「さぁ、自己紹介も済んだし、質問再開と行こうか。」


 どうやら私が自由になれるのはまだまだ先のようである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。