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魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
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90話 ソレイジごはん



 帰っても寝るところが無いのを思い出した私は、図書館に忍び込んだ。病気の時に思った事だが、私にはこの世界についての知識や危険意識が足りていない。


 朝になるまで調べていよう。危険生物図鑑なんかを読み込んでみるか。



 結構色々調べたが知識が知識を呼ぶような感じで、まだまだ調べ足りない。仕方ない。書庫に忍び込もう。閉館中に忍び込んでるんだ。今更立ち入り禁止なんて関係ないね。



 書庫を漁っていた私は更に奥に1つ扉があるのを見つける。禁書庫と書かれた扉には「立ち入り禁止」と書かれている。さっきの書庫の扉は「関係者以外立ち入り禁止」だったはずだ。一体何があるんだろうか。


 悪びれも無く扉を開ける。今更だが、透明化している私は警報装置なんかにも見つからないらしい。全く問題ないね。


 禁書庫内には、朽ちかけの文書や、古びた本なんかがある。どうやら年代順に並んでいるらしい。更に、隔離されている本なんかもある。実に興味深い。素晴らしいじゃ無いか。



 端から端まで読んでみることにしよう。一番入り口に近い奴から。『冥府の書』というタイトルだ。どうにも厨二心がくすぐられる。


 内容としては宗教臭い本だった。冥府では意志の強さを問われる。冥府でもなお、抗い続けるのであれば、道は開かれるだろう。と言った内容だった。何の話だ…。


 つぎー。『幻惑の書』。本文はメッチャ短く、その後は意味不明な暗号のみで構成されている。「私は幻を司る魔物である。この術は非常に危険な物だ。精神にすら介入しうる危険な物だ。よって、暗号にて使用法や概要を記す。これを解読できる者は現れることは無いかもしれないが。」これが本文。残りは暗号だ。どうも挑戦的だなぁ…。まぁこんなもん見てもわからんよ。………ん?見て解れば良いのか?


 ハイ。『魔眼』っと。



 魔眼を使用した私に激しい頭痛が起こる。頭の中に直接書き込まれているような、そんな感覚だ。そして。


【生物図鑑により、『幻惑+』を取得しました】


 え?マジ?本読むだけでも良いの?生物図鑑さん優秀すぎない?


 本の解読を終えると、最後のページだけ文字として読めることが解った。「よくこの読ませる気のない文書を読み解いた物だ。貴殿のような枠組みにとらわれぬ者ならば上手く使いこなせるだろう」と、書かれている。


 まさかマジで魔眼で読むのが正規だったのか…?ってことはこの部屋の文書、全部読めばいくつか習得できるんじゃ無いか?


 そうと決まったら読み漁るぜ!



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 その他のスキル習得は無かった。なんてことだ…。少々気になる文章はあったけど、今は触れる必要も無いだろう。


 帰ろ。




 宿に着く頃には日も昇り、朝になっていた。


「ただいまー」


 静かめに言って部屋に入っていく。まだ皆寝ているようだ。雫も早めに帰って来ていたのか、ベッドに入って寝ている。


 勇者君も、疲れているのかぐっすり眠っている。


 朝ご飯でも作っておこうかね。




 今日は昨日仕込んでおいた物を使います。メニューはカナッペで行こうか。


 あまり聞き覚えは無いだろうけど、誰でも簡単に作れて、好きな人には大ウケだろうから、一度作ってみると良いよ。出費もかさまないし、簡単だし、一人暮らしにもおすすめだ。


 ただ、バジルとか嫌いな人はやめとこうね。



 早速作っていこうか。フランスパンを薄く切って焼いていく。具材を乗せる奴だね。人によっては上顎がボロボロになるからって言ってコッペパンを焼いて代用する人もいるとか。でもそれだとふにゃふにゃすぎる気もするんだよねぇ…。


 次に冷やしておいた具材を使うよ。これは昨日のうちに作って冷やしておいた物だね。


 トマトをバラバラに切って、バジルをちぎって、一口チーズを袋から出して混ぜるだけ。他に入れたい物があればご自由に。チーズはモッツァレラがおすすめ。水っぽいのが嫌ならトマトの切り方を工夫すると良いよ。


 そしたらにんにくを取り出します。皮をむいた小粒をさっきのフランスパンに擦りつけます。好きなだけ擦りつけてね。


 ちょっと「好きなだけ擦りつけてね。」ってフレーズ卑猥だな。……ホントゴメン。


 後はパンに具材のっけるだけ。簡単でしょう?


 味薄かったら塩か、胡椒で味付けてね。でもサラダ感覚みたいなもんだし、問題ないけど。



 もう一つあるんだよ。これは万能で、デザートにも使えるんだ。


 同じようにパンを切る。焼かなくても良いかもしれない。


 そしたら今度はお好みのフルーツを切る。リンゴとかおすすめ。ミカンとかは崩れちゃうかも。夏場はスイカなんかも良いね。


 フルーツは3種類くらいあると面白い。切ったフルーツは混ぜても混ぜなくても良いよ。ミックスで楽しんでも、バラバラでもどっちでも面白いからね。今回は混ぜるけど。


 パンにはにんにくを擦らずに、何もしなくて十分。マーガリンとかほんのちょっとなら合うかもね。


 これも冷やして乗っければなかなか完成度高く見えるよ。メッチャ簡単だけどね。


 こっちは子供受けも狙えるし、デザートにもおやつにも良いし、万能だぜ。



 コツは具材を冷やしておくこと。他は特にないし、工夫次第でレパートリーも広がって万能。しかも安上がり。1回作ってみてね。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 作り終わった辺りで皆が揃った。ツバキなんかは途中で起きてきてから料理中の私を凝視すると言う新手の嫌がらせをしてきたりしてた。本人曰く、料理とかあんまり見る機会が無いから興味深いんだとか。


 勿論一番遅く起きてきたのはキリエ…と言いたいところだけど、夜中のこともあってか雫だった。



「え゛え゛。蕾ちゃん料理出来るの…?」


 そうだった。雫は私の家事万能性を知らないんだったな。ならば最初は手の込んだ料理を出してやりたかったもんだが、生憎手抜きですまない。


「本当に私も頂いてよろしいのですか?」


「貴族様が食べてるような良い奴じゃ無いけど大丈夫?私如きが作った奴だよ?」


「この料理はまごう事なき良品ですよ。盛り付けの美しさも高級品と渡り合える。いや、それ以上かもしれません。文句などあるわけが無いです」


 コイツメッチャ褒めてくれるなぁ…。凄ぇ嬉しいわ。



 さーて、それじゃあ。


「「頂きまーす」」


 沢山の人で囲む食卓は良いねぇ。あ、椅子とテーブルは即席で作った。私は『作成+』のスキル持ちだし、こういうとき便利だよね。


 基本ぼっちごはんだった私だから、沢山の人と食べるのは新鮮さがあるよ。




「…ん。…おいし」

 キリエは美味しそうにフルーツの奴を頬張っている。どうやら甘い物が好きなようだ。


「ツボミ、今度僕にも手伝わせてくれないかねぇ。料理にも、少し興味があるんだ。」


 ツバキはサラダの奴を食べながらそう言う。「構わんよ。むしろ歓迎」と返すと、嬉しそうな顔をした。


「蕾ちゃんが…。遠のいてゆく…」


 そう呟きながらむしゃむしゃと頬張る雫。ハムスターみたいな小動物っぽさがあって可愛い。


「とても美味しいです」


 素直に褒めてくれるレイモンド。コイツマジ聖人だな。





 食べ終わって、片付けをしていると、何故か誰が一番可愛いかと言う話になった。


 誰が一番美人か部門ではツバキがブッチギリ。可愛いか部門では三人で張り合ってる感じだった。


 私はキリエ。キリエは雫。雫は私を押し、三角構造になっている。


 それぞれの言い分はこうだ。


「キリエは天使なんです。良いですか?」


「……雫は…ハムスターみたいで…可愛い」


「蕾ちゃんの八重歯萌え~。まな板萌え~」


 雫はいつか殺す。胸は気にしてるんだ…。そういえば私、八重歯が目立つんだよねぇ。これは前世からなんだけども。歯並びが悪いんだよね…。




 結局話は結論が出ないまま打ち切られ、またしても作戦タイムとなった。


「まずは昨日の夜のことを話しておかないとね」


 その声で皆が席に着く。


「昨日、私と雫はモーガイ商会に潜入した。で、モーガイに命令をしている奴を見つけた訳ね」


「本当ですか!?」


「うむ。ウァレオスという、マジで強そうな男だった。魔狩りとか言ってたな」


 それを聞いたレイモンドの顔が引きつる。


「魔狩りのウァレオスですって…?奴は今まで、数々の命を散らしてきた、魔物専門の殺し屋集団のトップです。奴に見られた魔物は誰であれ、10秒後には死体になっていると言われるほどですよ…」


 ええ…マジ?そんな強いの?


「で、商会の部屋を漁ったんだけど、めぼしい物は出てこなかったのね?雫は尾行してたみたいだけど、どっちを尾行した?」


「私は豚のほうを尾行した。誰かわかんない奴より、近場から探ってった方が良いでしょ?」


 ナイス雫。それでいい。モーガイの家さえわかれば、私がまた出向くとしよう。


「でね、家はわかったよ…。でも…。」


 言葉に詰まる雫。何を見たんだろうか。


「奴は…。魔物を…奴隷みたいにしてた…。嫌がる女の子を…」「それ以上は良い。十分だ」


 言いづらそうな雫の言葉を遮る。あのクソ豚め…絶対許したくねぇ…。


「奴隷ですって?この国では禁止されているはずです。奴め…」


 レイモンドも怒り心頭のようだ。だが…



「居場所を教えてくれないかい?灰燼に変えてくる。」


 もっとキレてる子がいた。ツバキはどうにも、魔物の話となると、神経質になるなぁ。過去に何かあったのだろうか。


「まぁ皆落ち着け。とりあえず今日私が忍び込んでくる。話はそれからだ」


「何故そんなに忍び込むのが上手いんです?他にも色々忍び込んでるんですか?」


「うーん、まぁ秘密だけど…今朝は図書館の禁書庫に忍び込んだとだけ言っておこう」


 唖然とする勇者。警報装置がもの凄い数置かれてるはず…。とか言ってるけど、所詮私の前には無意味と言うことか。



 とにかく、モーガイの家の場所も聞いたし、すぐにでも潜入してこようかな。私としても、奴の言動にはイラッと来ていたところだ。色々暴いてやる…。

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