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魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
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最初の出会い


 おはよう。


 いやぁ、下が岩でも体がこらないってのは素晴らしい。


 そういえば今になって気づいたが、全くお腹がすかない。トイレにも行きたくならない。


 本当に便利な体だ。



 この森、そこそこ長そうだし、大人しくここから飛んでいこうと思う。


 山越えの時に…とか言ってたら、結構時間がかかりそうだ。



 と言う事で『飛行』を発動。


 発動すると同時に、私の体はフワーっと浮かび上がった。 ……コレは…『浮遊』じゃ無いかな…


 まぁ形はどうあれ、私は今、空中にいるのだ。 人間では体感できないこの感じ。なかなか楽しいな。


 前後移動や高度調整なんかも念じることでコントロールできるらしいが、曲がることが出来ない。


 ボートのオールのように、羽で調節すればなんとかなりそうだが、小回りはきかないだろう。難しいな。


 そんな感じで試行錯誤していると、私の横を銀色に輝く鳥が、バサバサと飛び去っていく。


 ……魔眼で。



【メタルバード】


 Bランク。鋼の体を持っているが、魔法耐性が非常に高い。



 どんな鋼だよ…。 まぁいいや。物理でやれば良いんだろ?


 硬化魔法便利そうなのあった気がする。



・補強『物体を補強して耐久力を増加させる』

・強化装甲『自分の体を強化する。強化した部位は攻防一体の武器のようになる』

・障壁『一定以下の攻撃をはじき返す透明な壁を付与する』

・武器強化『武器や武装の火力と耐久力を超強化する』



 強化装甲なんかが良い感じだね。では全身に付与して体当たりしてみよう。


 発動。 視覚的には何も変わっていないが、本当に発動できているのだろうか。


 とりあえず特攻。


 一気に推進力をつけ、弾丸のように飛び出した私の顔面に、メタルバードがぶち当たる。


 どうやら私は地上ほどではないが、空中でもクソ早いらしい。 気をつけねば。


 強化装甲と元々のステータスのおかげでそんなに痛くは無かったが、鋼の塊とぶつかった訳で、かなり額がヒリヒリする。


 メタルバード…貴様やるな…



【生物図鑑により、メタルバードから『アーマーブースト』を取得しました。スキル同士で複合が発生。】



 お?複合? 何だ? いくつかスキルを得ると合体して強くなるとか、そんな感じか?


 でも、まとまってたのもあるし、数が増えると集まって、似たのが増えると強化なのか?


 まぁこれから何回もある事だろうし、後々分かるか。


 そして、肝心のメタルバードはと言えば、私の体当たりで山の麓あたりまでブッ飛んでいる。


 今の体当たりだけで山脈の近くまで来たのか、と思い、後ろを振り向くと、さっきまで居たはずの森が、もう遠くなっていた。


 ……スピードの出し過ぎに注意。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 いったん地上に降りてメタルバードを回収した後、山脈を越えるために再び飛び上がる。


 山を越えればすぐそこは魔物領なのだ。どんな場所なんだろうか。栄えた町なんかがあるのだろうか。そんな期待に胸を膨らませながら山脈の上を楽々と飛ぶ。


 この山、登るにはかなり辛そうだなぁ。飛べて良かった…




 山を越えた私の目に飛び込んだのは…平原だった。


 まぁ考えてみればそりゃそうか。山を越えてすぐに町なんかがあったら敵に襲ってくれと言ってるような物だ。


 だが、遊牧民の村落のような物はちらほらと見える。ちょっとばかり立ち寄って、町の場所でも教えてもらうとしよう。


 そう思って、見渡してみると、少し奥に大きめの村落が見える。 視力も滅茶苦茶良くなってるな。


 うむ、あそこにしよう。



 私がゆっくりと村の近くに降りると、村の入り口に人が何人か見えた。


 いや、訂正する。人では無く“鬼”だ。 筋骨隆々の巨体で、牙や角を生やし、体には毛皮を巻いている。


 よく聞く“オーガ”という奴だろうか。 初の魔物との出会いだな。



 その屈強な鬼の中の一人、恐らくリーダー格であろう男が質素なバスターソードを構える。


 だが、その足は震え、顔は引きつっていた。


 たぶん私に怯えてるんだろうな…。こんな姿だし、仕方ないとは思うが、武器を向けられるのは少々抵抗がある。



 とりあえず危害は加えない旨を伝えようと私が近づくと、バスターソードのオーガが声を張り上げる。


「そこで止まれ!村には近づけさせんぞ!」


 格好良い台詞なんだけどなぁ…。声が震えてるんだよなぁ…。なんだか申し訳ない気分でいっぱいだ。


「大丈夫。私に危害を加える気は無い。ただ少し道を聞きたいんだ。」


 と、なるべく優しい声色で言ってみる。少しは恐怖心が減ってくれると良いんだが…



 すると、人だかり…もとい鬼だかりをかき分けながら、老いたオーガが歩み出てきた。 そして、周りから「長老!危険です!」と声が。


 襲わないって言ってるのに…。と複雑な気分になる。


 と言うか、この鬼が長老か。年期が入って熟練になった鬼、と言った感じの風格があり、凄く格好良い。


 なんだか大事になってきてしまったな。



「そのお姿、まさかあなた様は伝説の魔物、マンティコア様ではありませぬか?」


 おっと。分かるのか。というかマンティコアって伝説扱いなんだ…


 正直に頷いてみる。すると、一気に不安そうだった長老さんの顔が更に青ざめる。


「どうか若者の非礼をお許しいただきたい!村を思っての行為だったのです!」


 急に膝と両手を地面につき、土下座。 それを見習うように、そこにいた一同も土下座を始める。


 正直、ちょっとビビってしまった。



「別に良いよ。立派なことだと思う」


「ありがとうございます! どうか謝罪もかねて、本日はこの村に泊まっていってくださいませんか?」


 安心した顔に戻った長老。


 しかも止めて貰えるらしい。町の場所とか聞きたかったし、ちょうど良いかも。



「良いの?私、遠慮しないよ?」


「もちろんでございます。 皆の者!宴の準備じゃ!マンティコア様に無礼の無いようにするのじゃぞ!」


 鬼達に指示を飛ばす長老。町に行くのは遅れるけど、そんなに急ぐことでも無いし、今日はゆっくりしていこう。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




 色々話を聞きたいと伝えると、長老は自宅に招いてくれた。


 流石は巨体のオーガの家だけあって、入り口はそこそこ広く、デカい私でも入ることが出来た。


 オーガの家は簡易的に木や布や藁なんかで作った家で、移動しながら狩りをして暮らしているらしい。 マジで遊牧民だったんだね。


 そういえば案内されている途中、村の中に柵で囲まれたモンスター達が居たな。 多分家畜なんだろう。



 腰をおろすと、長老は、いろいろなことを話し始める。


「我々オーガは“伝承を守る者”として知られているのです。 集落毎に違った伝説の魔物を祀っているのですが、我々はちょうどマンティコア様を祀っているのです。 実際に会える日が来るとは思ってもみませんでした。いやぁ、神様に感謝ですな。 そういえば町の場所を聞きたいと言っておられましたね。それならばここから北西に行ったところにある町が一番近いでしょうな。我々の足でも5日はかかってしまいますが」


 おお、なんという偶然。伝承とかよく分からないけどとにかく流そう。スルースキル発動だ。


 そして町は北西か。それに、かなり距離があるみたいだな。



 それにしても、色々教えて貰って、尚且つご飯まで頂くのはどうなんだろうかと思った私は、何か困っていることは無いかと聞いてみた。


 最初は「マンティコア様にそんなことはさせられません!」とか言っていたが、私の押しに負けたように話してくれた。



「実は最近アームドマンティスというモンスターが平原で暴れ始めたのです。今までは長い眠りについていたのですが、最近になって暴れ出したのです。アームドマンティスはSSランクにほど近いSランクのモンスターでして、この平原に住んでいる魔物達は日々恐怖しているのです」


 アームドマンティス…格好いいな。 でも、それなら力になれるかも知れない。 Sランクがどれだけ強いかは知らないが、とりあえず見るだけ見てみるか。


「では今から行ってきますね」


 と言うと、驚いた顔をしていたが、大丈夫だと伝えて出発する。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 さーて。『飛行』で空から探そうか。と思って高度を上げていくと、もうなんかそれっぽい奴が見えた。


 オーガの村くらいある、馬鹿でかいカマキリが見える。あれだろうな。間違いない。



【アームドマンティス】


 Sランク。鋭い鎌と、自身のスキルで作り出す武器を操って戦う凶悪なモンスター。


 長年眠り続ける習性がある。このモンスターを素材として作られた武器は鬼神のごとき力を得るとされている。



 どうやら間違いないようだ。素材も貴重らしいし、いっちょ戦ってみるか。


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