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魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
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71話 ミノタウロス再び


 23層。


 またもいきなりのボスステージだ。

 現れたのは二体のゴーレム。片方は炎を、もう片方は吹雪を纏っている。

 まるでエドワードさんの魔法剣みたいだね。


 コレは分担して倒すのが得策だろう。


 と言うことで、炎をエドワードさんとキリエ、吹雪を私が担当することになった。


 焼き払ってやっても良いけど、せっかくだし、新しいスキルの練習でもしながら倒すか。


 雷電纏から行こうか。それ。

 私の体をライトニングアクセルの時とは違う、青い雷が厚く包み込む。まるで、私自身が放電しているように。

 コレはそのまま肉弾戦に使うのが良いだろう。マンティコア時の新しい攻撃にもなるな。


 ゴーレムは、攻撃せずに帯電した私の行動を挑発と取ったのか、大きな腕を振り上げ、地面に叩き付ける。そこから氷柱が次々と飛び出し、私に向かって一直線に向かってくる。

 私は、青い雷に加えて、黄緑の放電を行い、加速する。ライトニングアクセルは本当に便利だな。そのまままっすぐ氷柱に向かって走り、すぐ横をスレスレで通り抜け、『超化装甲』と『武装強化』を右手の拳に乗せる。


 ゴーレムの横に一瞬で現れた帯電する少女。少々の溜めの後に繰り出された拳は、加速の影響で音の壁を越え、衝撃波と爆音を生みながらゴーレムの頭部へと突き刺さった。

 重い一撃を受けたゴーレムの頭部は、純粋に高すぎる威力の拳と、その拳が纏う雷によって砕かれ、跡形も残さずに吹き飛んだ。


 だが、ゴーレムは頭部を消し飛ばされてもその動きを止めない。

 そのまま近くの私に向けてその拳を振り上げる。そのまま殴りつける気のようだ。


 肉弾戦ならば優秀なメタスキルが私にはある。『爆裂壁』。これは直接攻撃のみを受け止め、爆発によってカウンター攻撃を行うスキル。

 実はそのスキルを聞いたキリエが興味を持ち、事前に試していた。多分防御の専門家として気になったのだろう。

 その時に分かったことだが、このスキル、そんなに便利では無い。と言うかぶっちゃけ産廃に近い。

 だって…『直接攻撃』って書いてあるから、物理なら何でも防げるのかと思ったら、“素手のみ”だったんだよ…

 キリエが剣で攻撃しようとしても、障壁は発動せずに剣は素通り。そして、蹴ってみたら爆発。殴ってみても爆発。ただ、それ以外では全く何も起きなかった。体当たりとかは試してないけどね。多分それは大丈夫だろう。ちなみに爆発を喰らってもキリエは微動だにしていなかった。ステ廃め…


 だが、今は直接攻撃に含まれる拳の攻撃だ。コレは防げるな。

 私の周りに現れた赤茶色の透明な壁は、振り下ろされた拳をがっちりと受け止める。そして、その瞬間に障壁自体が爆発し、振り下ろされた拳にヒビを入れる。


 追撃にも新しいスキルを使ってみよう。『爆雷刃』だ。前の衝撃刃は地面を魔力が吹き上がりながら進む、あのバフォメットがやってきた攻撃と全く同じだったが、今回はどうだろうか。

 とりあえず発動。すると剣に魔力が集まるので、これを撃ちたい方向の地面に思いっきり叩き付ければ良い。だが、今までとは違い、今回は剣が激しく帯電している。それはもう衝撃でも加えたら即行で爆発しそうなくらいに。


 大丈夫かコレ…と思いつつ地面に叩き付けてみる。

 一気に放たれたソレは大地を砕きながら、激しい雷と爆発を伴ってゴーレムに向けて直進し、そのまま直撃する。

 追い打ち程度に放った攻撃だったが、結果から言えば両足が吹き飛んだ。

 地面にいる敵にしか当たらずに、進む速度も斬撃波から比べれば遅いが、威力は相当な物だろう。

 空中には斬撃波。地上には爆雷刃。臨機応変にカースオブキングや投げナイフ、攻撃魔法なんかを使っていく感じが良いかな。遠距離に強すぎるな私…まぁ近づいた方が戦いやすいけど。


 さーて、動くことも出来なくなったゴーレム君にとどめを刺そうか。なんだか狩人の気分だ。

 私は動かないゴーレムに向けて少々黙祷し、ゼロ距離で紅蓮弾をぶち込む。

 しっかりと跡形も無く“蒸発”させたのを確認してキリエ達の方を見る。


 二人は既に撃破していたようで、私の戦いを見ていたようだ。少し遊びすぎたか…

「…ツボミ…種族まで悪魔?」

 キリエがなんか言ってるけど無視して先に進もう。いいや、無視しきれないね。「種族まで」の“まで”って何だ…まるで言動が悪魔だと言ってるみたいじゃないか。私は言動も種族も悪魔じゃ無いですぅ。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 24層。 

 

 どうやらここが最後の迷宮エリアのようだ。25は休憩フロアで、26がボスらしい。

 ここについてもエドワードさんが地図を持っているので、サクサクと進んで行こう。

 だが、ここの雑魚敵はひと味違った。甲羅が繋がったような長い体はくねくねと蠢き、大量に生える足と大きな顎。そう、大ムカデだ。それだけでは無い。ハサミムシもたまに混じっている。


 キモい。キモいキモい。ヤバイ。キモい。出来ることなら近寄りたくない。いや、出来なくても近寄りたくない。今なら不可能でも可能に出来そうな自信がある…

 私はそっと後ずさりする。もちろん口元を押さえ、悲鳴を堪えながらだ。

 私は虫が苦手だ。虫が苦手なんだよ。


 そんな私に話しかけてくるのはキリエ。

「……ツボミ?…どうしたの?…倒さないの?」

 この子は天使の見た目の悪魔だ。この子の方が十分悪魔だ。


 私は半狂乱しながらまた一歩後ずさりする。

「キリエ、頼む。あいつらを出来るだけ綺麗に消し飛ばしてくれるかな…?エドワードさんもお願いして良いですかね?かね?」

 私の顔は当然のように引きつっている。ソレを見てエドワードさんは察したのか、無言で頷き、キリエは不思議そうに了解した。


 倒し終わった後の事だ。キリエがおもむろに私の後ろを指さす。

「…ツボミ…後ろにいる」

 私がギギギと音を立てそうな感じで振り向くと、視界に入ったのは数十匹のムカデの群れ。

 その後、迷宮内には声にもならないような悲鳴が響き渡ったとか。



「クソだな。」

 私の口からそんな言葉が飛び出す。だって…こんなに悲鳴を上げて、精神をすり減らして探索したのに宝箱が無いってどういうことだよオォォォッッ!

 後から聞いた話、薬は最終層のボスを撃破すれば高確率で出るらしいからまだ望みはあるけど…


 そんなこんなしながらボス部屋に入って行く。


 私はそこに現れた敵の姿を見て、一気にテンションが舞い戻る。

 まさかこんな所で再び合うとはな…

 私の前には牛の頭の怪物がいる。その手にはバトルアックスが握られており、ぎらぎらと光る目が私をじっと見つめる。


「ここは私にやらせて貰えますか?ちょっと因縁の相手でして」

 と言った私に二人は頷き、部屋の隅へと離れていく。私は信頼されてるのかなぁ。嬉しいことだ。


 このミノタウロスは体毛が少し赤みがかっている。多分以前の奴の上位種なんだろう。

 いいぜ。私はお前に近接だけで勝ってやる。


 私はインベントリから黒い剣。ブラックオブディスペアーを取り出す。

 コイツは激しい連撃が得意だ。ならば剣は2本あった方が有利だろう。


 両者ともに、にらみ合った状態が続いていたが、ミノタウロスがいきなり距離を詰めたことによって戦闘が始まった。

 ミノタウロスはそのままの勢いで斧を振り下ろす。ワンパターンだなコイツは。

 私は両手の剣にいつものダブル強化を施し、更に自信にライトニングアクセルを発動。そして、両手の剣を交差させ、重い一撃を防ぐ。

 前回は弾いた後に追撃が来た。今回はその隙を与えない!


 私はミノタウロスの斧を弾き上げ、そのまま前方に跳躍し、斬りつける。

 ミノタウロスは斧の柄で攻撃を受け止め、押し出すように私ごと弾く。だが、私は一歩も引かない。そのまま再び突進し、連撃を叩き込んでゆく。だが、ミノタウロスもしっかり合わせるように斧を横薙ぎに振るい、再び私をはじき飛ばす。


 そこにミノタウロスは素早く追撃をしかけてくる。私は縦に振り下ろされた斧にグレイスオブクイーンをかち合わせ、ブラックオブディスペアーをぶつけることによって斧ごと押し返す。

 さて、そろそろやってみようか。『鬼撃』だ。


 発動した瞬間、私の前身を激しい痛みが襲う。だが、ソレと共に、私の中に圧倒的な力が湧いてくるのを感じた。体からは赤いオーラが薄く立ち上っている。


 さてさて、牛野郎に以前の私とは格が違うことを見せつけてやろうか。

 私はライトニングアクセルの加速力で瞬時に距離を詰め、2本の剣を同時に叩き付ける。

 ミノタウロスは、再び斧を振り、私の攻撃に合わせてくるが、私の攻撃はさっきとは格が違った。


 激しい火花が舞う。響き渡るのは金属同士がぶつかったとは思えないほど激しい轟音。

 流石ミノタウロスとでも言うべきか、斧を決して手放さず、受けきる事に成功している。

 だが、その足元はひび割れ、凹んでいる。

 私の剣の衝撃が『鬼撃』の効果でモロに伝わったのか、腕はかすかに震え、体も上手く動かせないようだ。

 

 だが、そこに白銀の髪の少女の姿は無かった。

 ミノタウロスは、気配に気づいたかのように上を見上げる。そこには2本の剣を構えている少女が居た。

 そう、直撃と共に、斧を踏みつけ、真上に跳躍していたのだ。


「もう一発!!」

 かけ声と共に振り下ろされた2本の剣はダブル強化、鬼撃、重力、加速度の全てを乗せ、ミノタウロスの体を構えた斧ごと断ち切った。


 ふぅ。なかなか楽しかったな。

 あの頃から比べれば私もずいぶん強くなったものだ。


「…ツボミかっこいい」「ここまで来ると、もう凄まじいとしか言い様がありませんよ」

 

 褒めてくれる二人に対しての私の答えは、「速く次に言って休憩しよう」だった。

 鬼撃で疲れたわけじゃ無いが、なんか全体的にはしゃぎすぎた。

 あんな火力を出せば誰でも疲れると思う。


 さてさて、休憩所を抜けたらラスボスか。一体どんな奴が来るんだろうか。

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