66話 カルグル地下迷宮
カルグル地下迷宮と言っても、入り口は地上にある。最初のフロアというわけでは無く、完全に「入り口」と言うべき物だが。
このダンジョンは、エドワードさん曰く26層になっているという。
そして、1階層毎にボス部屋があり、最後のフロアはボス部屋のみの構成。まぁありがちな奴だね。ちなみに難易度は1階層毎に上がってゆき、15層辺りから、エドワードさんでもソロはキツいみたいだ。
とりあえず、その入り口に来ているが、序盤のフロアは初心者にも優しいようで、人の出入りもそこそこ多い。
エドワードさんと話し合った結果、ボスは5分毎に復活するらしいので、別の冒険者達が倒すであろう、序盤のボスは無視し、ちょっと進んだ辺りから頑張ろう。と言う感じになった。雑魚も、無視できる範囲で無視していこう。
と言うことで、早速一層に入る。そこは迷宮と呼ぶのにふさわしい、入り組んだ石壁で作られた空間だった。
踏破済みのせいで地図が出来ているから、迷宮もクソも無いが。
我々は深層に用があるから、浅いところは地図に従っていこう。
もう何の苦労も無く、一回の戦闘も無く、5階のボス部屋まで来てしまった。
流石にここまで来ると初心者もいないのか、ボスが見える。
あいつは前に見たことがあるな。武装トカゲのリザードだ。後は少しでかくて、良い装備の奴が一匹いるな。ボスと、その取り巻きと言ったところか。
群れだと、キリエを抱えながらでは戦いづらいな…
「ツボミ様、ここは私にお任せください。」
おう。格好いい。でも正直助かった。
そう言ったエドワードさんは、左右の剣を一本ずつ抜き放ち、群れに向かって駆け出す。
その細身の剣は、右が炎を、左が吹雪を纏い、更にエドワードさん自身も加速して、まるで風が吹いたかのように、一体、また一体と確実に葬っていく。
10体が屍に変わったとき、エドワードさんは更に加速する。
常人が捕らえられないような速度で動き、踊るように敵を蹴散らしたエドワードさんが戻ってくる。
私は無意識のうちに拍手を送っていた。
ずんずん進んでいこう。ちなみに、素材なんだけど、肉は私が、それ以外はエドワードさんが貰うことにしている。
6層、7層、8層と、全く問題なくエドワードさんが攻略していく。全く、惚れ惚れするような剣捌きだ。
9層のボス部屋にさしかかった頃、肩に担いでいたキリエが「…むぅ」と声を上げる。目を覚ましたらしい。
「……次は…背中で良い」と言っているあたり、今回は全開を上回るトラウマだったようだ。
9層のボス戦からは、私たちも参加することにした。
と言うのも、私は前回から気になっているスキルがある。『次元斬』。キリエの聖剣についていたスキルだが、私も使えるようだ。
・次元斬『次元を超えて、切りたい場所を切る』
ほら絶対ヤバいよ。
この階層のボスは、目玉に羽が生えたような「モノアイバード」というそのまんまの名前のモンスターの群れ。その数およそ100。
クッッッソ気持ち悪いから殲滅しよう。まずは次元斬から。
発動しながら剣を振ってみるが、全く反応がないようだ。敵を狙って剣を振ってみても、何も起きない。
だが、魔法の範囲指定のように、一定の場所を指定してから振ってみると、一瞬空間が歪み、その場にいた目玉の化け物が真っ二つになって消えていった。
ほう。これはなかなかヤバいじゃないか。
次は光翼斬。これは発動した瞬間に、やり方が頭に流れ込んでくる。
まずは敵を切り上げて浮かせる。すぐさまジャンプで追いかけて一撃、二撃、三撃と斬りつけ、そのまま上から唐竹割りの如く斬りつけてたたき落とす。
何とも格好いい連撃だ。目玉野郎じゃ全然耐えきれないようだが。
ちなみに闇滅斬は、闇属性へのキラーダメージだった。
キリエの方を見ると、「…ほーりーばーすとー」と気怠げに言ったキリエが敵に向けた左手から、真っ白な太いレーザーを放って、一掃している。
凄ぇ…キリエってあんな感じなのか…
エドワードさんは、持ち前の氷炎剣技で、一体ずつ、確実に倒している。
私も「ホーリーバースト」をやってみよう。
キリエのように左手を構えて発動するが、何故か手が光っただけだった。何故だ…
・ホーリーバースト『光属性適正に威力の比例する攻撃』
へぇ…つまり私は光属性適正が圧倒的に無いんだね…
もしかすると、聖刻弾が、死影弾や紅蓮弾より弱いのはそのせいなんだろうか。と言っても、狂ったくらい高威力だが。
多分、必殺の「グローリーライト」に関しては、グレイスオブクイーン自体が、光属性なんだろうな。
さて、目玉も一掃したし、次に進みましょうか。
10層も全く問題なく進んでゆく。ボスも死影弾でパーンして一撃。
次に進もうとしたところで、エドワードさんから声がかかった。
「ツボミ様、次の階層からダンジョンの構成が変わります。次は確か平原だったかと。」
ん?地下で平原てどういうことだろうか。
その疑問の答えは、実物を目にしてすぐに理解できた。
広がっていたのは平原だ。本当に平原。地下のはずなのに、足下の草は青々としていて、太陽の光が暖かく、風がさわやかで、木々が所々生えている。
もう謎過ぎる。物理法則とかは考えない方が、精神安定上良いだろう。
そんな私たちに走ってくる影がある。
「ドドドドドドドドドド」と音を立て、土煙を巻き上げ、もの凄い速度で走ってくる影。
それはダチョウのような、そんな感じの走る系の鳥だった。
まじかぁ。と思いながら、私はカースオブキングを構える。
あいつら…美味そうだな…
食欲解放した私の銃口を見た鳥たちは、哀れにも、肉塊へと変わってゆくのであった。
鳥の数に比べると何故か圧倒的に数が少ないが。
そろそろご飯にしようかな。
今の奴らを使って、鶏肉料理にしよう。
おっ、卵も落ちてるな。と言うことは…アレだな。