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魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
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幕間 木下蕾


 ワルキューレの彼女の話を聞いて、自分の事を語りたくなったのが正しいかも知れないが、彼女の心境を深く理解するためにも一度、私が木下蕾だった頃の話をしよう。


 私の体験した出来事を、もう誰も体験しないことを願って。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 中学生の頃の話だ。


 その頃の私は高校時代と比べるとかなり地味で、大人しく本を読んでいそうなイメージの子だった。 まぁ、実際その通りなんだが。



 そんな子は目をつけられやすい。 単刀直入に言うならばイジメに遭っていたのだ。


 まぁ具体的には上履きに泥水を入れられたり。机に暴言罵倒の限りを書き込まれたり。


 カツアゲや暴行は日常茶飯事。むしろ無い日が珍しいくらいの物だった。



 犯人は同級生の女子(ここではEとする)を中心とする不良グループ。


 Eは中学生にもかかわらず、化粧なんかをたっぷりしているような奴だった。 夜に高校生や大学生と乱交しているという噂や、援助交際の噂も立つような奴だった。


 幸い、うちの学校の男子はマトモなのしか居なかったようで、彼女と関わる者は居なかった。



 Eが私にイジメを始めたのは中学二年生の頃。


 私はその頃図書委員をやっていて、放課後当番を進んで受けていた。 静かに本を読んでいるのが好きだった。


 だが、その事件は唐突に起きた。


 Eが息せき切らした様子で図書館に駆け込んでくる。


 後から聞いた話によると、学校外で問題を起こしたらしく、そのお叱りから逃げてきたんだとか。 その時は平日にもかかわらず、Eの両親も呼ばれていたらしく、彼女にはそれだけの問題があったということなんだろう。


 Eの両親はまともな人で、彼女の事を家庭内でもかなり心配していたが、彼女が手のつけられないところまで行ってしまい、どうして良いか分からない状態だったという。



 まぁその時の私はそんなこととは全く思って居なかった。


 追っ手の先生が飛び込んで来たときに、もの凄い剣幕でEは居るかと聞かれ、少々ビビりながらも奥に走っていきましたと伝える。


 そして、図書館で勉強していた受験生が皆、不快そうな眼差しを私に向けたため、図書館では静かにするように伝えてください。と付け加えておいた。 ……これは先生に向けて言ったことでもあるが。


 今思うと、これが失敗だったのだ。 しかし、天狗面の偽善者諸君。君たちはよく知らないような奴を庇うか? だだでさえ悪い噂の立つ奴だ。先生の状態も合せてマイナスしかない。 奴に恩を売って何が残る? 役に立つような物が残らないのは言うまでも無いが、自己満足や偽善の心も残らないのだ。


 その翌日だった。Eが私の元へとやってくるなり、荒れた様子で口を開く。


「アンタ、昨日私のことチクったらしいね。ついでに図書館では静かにしろ?ふざけてんの?私、絶対あんたのこと許さないから。覚悟しとけよ地味虫。」


 Eは、そう吐き捨てて去って行った。


 これも後から聞かされた話なんだが、家庭内で会議となり、そこでかなり厳しい仕打ちに遭ったんだとか。 つまるところは八つ当たりって奴だ。


 私的な感情を挟んで、今だから言えることだが、あの教師は屑だ。 絶対に許さない。 今見ているなら土下座で私に懺悔しろ。



 内容としては、最初は些細なものだった。内履きを隠されるというベタなもの。


 私は動じずに保健室でスリッパを借り、1日それで過ごすことになった。 だが、それが彼女の気に障ったらしく、どんどん行動はエスカレートしていく。



 翌日、私の下駄箱にはドブに浸かった内履きが入っていた。


 臭くて仕方なかったので、すぐにゴミに捨て、その日もスリッパを借りた。


 教室に入ると、机に落書きをされているのが分かった。 クソ女だとか、本に集まる害虫だとか書かれていた。


 消しゴムで消すのはアホらしいので、ぬらした布巾で拭く。その後にから拭きすれば大半は消える。 残ったのを消しゴムで消せば良い。


 今になって思うが、この頃の私は反骨精神というか、なんかそんな感じの抗ってやろう感がもの凄かったのかも知れない。 冷静に対処法を考える辺り、当時の私は狂っていたのだろう。



 だが、それも仕方の無いことだったのかも知れない。


 言っていなかったが、私には家族が居ない。


 元々、母親は私が小さいときに男を作って出て行き、私は父親によって育てられた。


 父は優しくて、いつも私を助けてくれたが、私が中学に入る直前、高速道路で起こった事故に巻き込まれてこの世を去った。


 父の姉は有名な音楽家で世界中を飛び回っており、私はひとりぼっちになってしまった。


 その頃の私は、叔母が送ってくれる仕送りを頼りに生活していた。


 幸い、叔母がお金持ちで、そこそこの金額を送ってくれるため、あまり不便は無かった。


 家事は好きだった。料理と読書とゲームがその頃の私の趣味だった。


 しかし、中学生の私にその現実は辛い物があり、そのせいであまり人を寄せ付けないような性格になってしまったのかも知れない。



 それにしても、朝早くか放課後私が帰るのを待ってか、は知らないがずいぶん手の込んだ行為をするものだ。


 図書室で大半を過ごしていた私は強制下校時間位までいたはずだし、朝も一番速く来ていたはずなんだけどね。


 そう考えてみるとちょっと可愛いかもしれないね。 一生懸命さが伝わってくるよ。



 その後も行為はエスカレートしていった。 彼女だけでは無く、彼女の取り巻きも加担してくるようになってからは酷かった。


 そうなってくると、流石の私も精神的にまいってくるわけで、毎日の学校がつらくなっていた。


 そんな私が救われる事になるのはもう少し後の話である。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




 ある日、私はEに校舎裏に呼び出された。 私はいつでも逃げられるように準備を整えて行った。


 私がそこへ着くと、Eはタバコを吸っていた。 中学生がタバコて。 格好良いと思っているのかも知れないが、それは恥ずかしいことだ。 脳みその代わりにカニ味噌が詰まっていた方が幾分かマシなんじゃ無かろうか。 いや、それは蟹に失礼か。



 Eは私に気づくと、歩み寄ってきて私のすぐ前に立つ。


 私は後ずさりして距離を取ろうとするが、すぐに周りを囲まれている事に気づいた。


 どこからか現れたEの取り巻き(ここではNとMとする)が私の斜め後ろに立ち、三角形に囲まれていた。


「あのさぁ。私たち、お金ないんだよねぇ。貸してくんない?」


「生憎だけど、貴方に貸すお金は無い」


 私は淡々と答える。 下手に出ない方が良いと思ったからだ。


 だが、Eは逆上し、「アァ!?」と私を突き飛ばす。


 私は地面に倒れ、持っていた鞄を落としてしまう。 すぐにNが私の鞄を拾い上げ、中身を漁っているのが分かった。


 鞄の中身は数冊の本と財布。財布の中にはバス代や、緊急用として二千円が入っていた。


 Eが「チッ。これだけかよ。マジ使えねぇ」と吐き捨てて、私の財布の中身を全て持って行った。


 その日、バスにも乗れなかった私は4キロ強の距離を歩いて帰ることになった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 E達のいじめは日に日に過酷になっていった。


 私はカツアゲ対策として、学校に来るためのバス代以外を持ち歩かないようにしていた。 多分ささやかな抵抗がしたかったんだと思う。


 教師への相談は、更に酷くなりそうで出来なかった。 あのキチガイ教師は、主任の立ち位置を持っており、他の教師に相談しても奴に伝わる可能性が高い。 奴が関わったら、更に自体が悪化しそうだったのだ。



 その頃になると、私はそのストレスをゲームで発散するようになっていた。 知らないうちに複数のゲームで世界ランクに入る程度のレベルだったから、かなりのものだ。


 FPSなんかは私のストレス発散にちょうど良かった。 皮肉なことだが、今の私の動体視力や先読みはこの頃鍛えられた。



 中学三年になった。その頃の私はだいぶやつれていた。 周りの生徒も、この頃になるとイジメになんとなく気づき始めていた。


 だが、私を助ける者は居なかった。当然だ。そんな面倒なことに進んで関わる奴なんて居ない。 もし居るとするならば、愉悦を求める狂人か、心の底から真っ白な聖人くらいだろう。



 私の前に、その聖人が現れたのは突然の事だった。 転校生がやってきたのだ。


 彼女の名前は小春川雫(こはるかわしずく)と言った。


 触ったら柔らかそうな、可愛い子だった。彼女は明るい性格で、すぐにクラスに溶け込んだ。



 彼女がやってきてから二日が経った日のことだ。


 雫が私の席にやってきた。一体何だろうかと思った。


「蕾ちゃんからは私と同じ匂いがする。」


 彼女は、フンスという効果音が似合いそうな顔で、突拍子も無い事を言ってきた。


「生憎、私はそんなに明るくないよ」


 突き放すように言った後、私は立ち上がって廊下へ出る。


 あまり関わって欲しくなかった。 その頃の私は拒絶体質の絶頂期だった。 まるで心に深い闇でも抱えているかのようだった。



 だが、そんなことで引くような雫では無かった。


「待ってよー」と叫びながら追いかけてきて、私の袖を掴む。


「ちょっと二人で話がしたいんだ。今日の放課後、図書館行っても良い?」


 雫は私の目を見てそう言った。断っても聞かなそうなので、仕方なく了承する。



 放課後、図書室は珍しく誰も居なかった。 新学期始まりたての頃は人が少なくなるものだ。


 そこに雫はやってきた。


「良かったー居てくれたー。どこかに行っちゃったらどうしようかと思ったよー」


「私は図書委員だから。で、何?」


 私の返しは淡泊なものだった。


「それがね」


 一気に真面目な顔つきになる雫。 辺りが神妙な空気に包まれる。私は雫の言葉を不安げに待った。


 そして、雫が静かに口を開く。


「FPS勝てないんだけどどうしたら良いかな」



 私の中に様々な感情が流れ込んでくる。


 まずはいきなり何を言い出すんだ。と。 続いてちょっと緊張して損した。 さらに、なぜ私がFPSやってるのが分かった。


 他人との関わりを断ってきた私にはずいぶん久しぶりに感じた、感情らしい感情だった。



 それらの感情が私の口から笑いとなってこぼれる。


「プッ。アハハハハ! いきなり何を言い出すかと思えば!」


 その時の私の顔は紛れもない笑顔だった。 思えば長いこと笑っていなかった気がする。 


 自分の中で何かが溶け出すような感じがした。まるで長らく閉じ込めていた物が顔をのぞかせたように。


 私が大笑いしたことで馬鹿にされたと思ったのか、雫は頬をぷくぅっと膨らませる。ハムスターみたいだった。


「もう!蕾ちゃん酷いよ!」


「いやぁ、ごめんね。馬鹿にしたわけじゃないんだ。ただ、可笑しくて、笑いが、ね。で?なんで私がFPSやってるって分かったの?」


「なんとなく、かな。言ったじゃん、同じ匂いがする、って。 強いんでしょ?コツ教えてよー」


 その後も雫と話している間、私は笑顔でいられた。 私はどこか雫に心を開いてしまっていた。


 だが、私は更に雫に救われることになる。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




 雫がやってきてから一ヶ月が経った。


 私はすっかり雫と仲良くなり、一緒にゲームをする仲になった。 雫に釣られてか、クラスメイトもたまに私に話しかけるようになっていた。


 相変わらずE達のイジメは続いていたが、少しだけ心に余裕が出来た私は、最初の頃のように落ち着いて対応することが出来た。


 今思ってみると、私のメンタル強度は異常だったと思う。



 そんなある日。


「アンタ、最近調子乗ってない?キモいんですけど」


 E達に呼び出された私は理不尽な言葉を受ける。最近の塩対応が気にくわなかったのか、その日のEの行動は今までとは違った。



 頭から氷水をかけられたのだ。 春先とはいえ、まだ周囲は寒く、私は寒さに震えることしか出来なかった。


 今までは目立たない陰湿な行為だったからこそ、私は塩対応でやり過ごせたが、こればかりはそうはいかなかった。



 私がうずくまっていると、Eが吐き捨てるように言う。


「アンタは所詮その程度なの。分かる?分かったらあんまりヘラヘラしないでくれる?目障りなのよ」


 Eはそう言うと、手に持っていたバケツを私に向かって放り投げ、歩き去って行った。



 Eが完全に見えなくなったとき、私は後ろからふかふかした物に包まれた。


 雫だった。 私が呆然としていると、雫はタオルで私を拭きながら言う。


「蕾ちゃんも私と同じだったんだね。実はね、私も前にいじめられてたことがあるんだよ。でもね。私を助けてくれた子が居たんだ。私はその子に心から救われたの。だからね。今度は私が蕾ちゃんを助けるよ。もう絶対蕾ちゃんを一人にしないから。」


 雫はそう言って私を優しく抱きしめる。


 ……クサい台詞だ。しかし、その時の雫は私にとっては女神のようだった。


 安心感を覚えた私の目からは涙がこぼれ、私は雫の胸で泣いてしまった。



 その後から、雫は私にずっとくっついてくるようになった。 私を守ってくれていたのだ。雫は私が思っていたよりもずっと強かったわけだ。



 雫は自らがいじめにあっていた当時のことを私に話してくれた。


 父の仕事の都合で転校が多かった雫はあるとき、転校した先の学校で私のようにちょっとしたきっかけから虐げられるようになったらしい。


 だが、その時、雫といじめグループの間に立ってくれた子が居たらしい。


 本気で自殺まで考えていた雫はその子によって心だけで無く、命まで救われたわけだ。


 だが、雫はその子に恩を返す前に再び転校となってしまったという。



「蕾ちゃん、私、絶対蕾ちゃんを救うから。蕾ちゃんが悲劇のヒロインなら、私がそれを助ける勇者になるよ」


 と雫が言う。RPG好きな雫の言葉は傍から見れば痛いセリフだが、私の心には深く、そして優しく響いた。



 だが、このことをE達が良く思うはずが無かった。


 E達は私が雫と歩いているところを取り囲むように現れる。 だが、雫はこの状況も想定していたようだ。


 私は取り囲まれる直前、雫がポケットの中で何かを操作しているのをはっきりと見た。 その雫の行為にE達は全く気づいていなかった。



「あんたら、最近何なの?調子乗ってない?」


 私たちは無言でEを見つめる。雫が心強いことこの上ない。


「まぁいいや。転校生、アンタそこの使えない奴と違ってお金持ってるでしょ?出せよ」


「嫌だと言ったら?」


 雫は怯まない。凄く格好良かった。


 するとEがNに目配せをする。すると、Nが私を突き飛ばした。


 私の口から痛っ…と声が漏れる。


 そしてひるんだ私の首ををMが締め上げた。


 いつもの私ならば微動だにしないが、今回は雫が何か仕込んでいたのを見た。


 私は雫を信じて「痛い…やめてよ」と苦しそうに口に出す。



「早く金出さねぇとこの糞虫が苦しむぞ~?どうする~?」


 挑発するようにEが雫に言う。 雫が私を見る。だが、その目は何かを察して欲しそうにしていたのが私には分かった。


 そこで私は「雫、私は良いから、お金出しちゃ駄目だよ!」と言う。


 するとMの締め上げが強くなる。私の思ったとおりだ。


 これならば怪しまれずに苦痛の声を出せる。多分雫は録音でもしてるんだろうと察した私の作戦だ。


 私が苦しそうにうめくと、Eが「早くしろって言ってんだよ!」とキレ始める。



 雫は「仕方ない。全部あげるから、早く蕾ちゃんを放して。」と言って財布を渡す。


 E達は「チッ、最初から出しゃ良いんだよ。あんたらみたいなのにはそれがお似合いだ」とか言い残して去って行った。



 E達が離れた言った頃、雫はポケットの中から取り出した録音機の停止ボタンを押し、私に駆け寄ってきた。


「蕾ちゃん!大丈夫?」


「私は大丈夫。それより、お金良いの?」


「良いの。ってか、蕾ちゃん、もしかして最初っから録音してたの気づいてた?」


「勿論。それより、私のためにこんな事してくれてありがとね」


「良いんだよ。後は任せて。これで終わらせる。もう二度と蕾ちゃんを悲しませないよ。」


 その時の雫は本当にかっこよかった。私が男なら瞬発的に惚れてるくらいかっこよかった。


 今になって思い返してみると、雫の台詞がいちいちイケメンの口説き文句みたいになっていたのが、個人的に笑えるポイントだ。



 次の日になって、朝のホームルームの時間になった。


 先生が教室に入ってくる。かなり怒っている様子だった。 更に、生徒指導や糞ゴミ主任、教頭、校長まで入ってくる。


「皆にこれを聞いてもらおう。隠している場合じゃ無い。木下と小春川の許可は既に得ている。」


 と言うと、先生は携帯で、ある録音ファイルを開いた。 そこに記録されていたのは機能の会話の一部始終。E達をちらりと見ると、顔面蒼白になっていた。


 ってか許可した覚えないんだけどなぁ。雫が私に任せてって言ってから色々してたみたいだけど、こんな事してたのか。許可する。もっとやれ。



 録音が全て流れ終わった後、先生が怒りを隠しながら告げる。


「これは本当にあった事か?また、他にも何かあったのを見た者は居るか。」


 すると。 なんとクラスメンバーの大半がその手を上げたのだ。 今まで見て見ぬふりをしていた物達が一斉に手を上げた。


 私は泣きそうになるのをなんとかこらえる。



 すると、担任が級長を指して、「お前が知っていることを話してみてくれるか?」と言う。


「E達のイジメは木下さんを対象に去年からずっと続いていました。それなのに…俺たちは見て見ぬふりをしてしまっていました。木下さん、本当にごめんなさい!」


 と言う。私は何が何だか分からなくなった。 クラスの皆も級長に釣られるように、謝罪の言葉を口にする。 ついに耐えきれなくなった私の目からは涙がこぼれた。


「そんなに長かったのに気づけなかったのは俺の責任だ。木下、本当にすまなかった。そして、E、N、M、これだけの事をして、他人の尊厳を踏みにじって、謝って済むとは思うなよ」


 軽く脅迫なんじゃ無いかな…。私としてはざまぁみろなんだが、教師としてその発言はちょっと危ないぞ…。 つーかテメェ、謝って済むと思うなよ。 私は心が広いから許してやるけどね。



 そしてE、N、Mは教師達に連れて行かれた。 その後、E達にはかなり長い謹慎期間が課せられた。


 私はその一連の後、雫に感謝をしに行った。


「雫、本当にありがとう。そして巻き込んでごめん。私、何て言ったら良いか分からないよ…」


 すると、雫は柔らかい笑顔で答える。


「気にしなくて良いよ。私もしてもらった事だから。だから蕾ちゃんも誰かが困ってたら助けてあげてね。」


 本当に聖人だな。私は一生をかけて、彼女にお礼をしなければならないだろう。 軽く惚れたぜ。



「さてさて、姫を救った勇者への報酬をくれても良いんだぜぃ?」


 雫がふざけて言う。私も乗って返す。


「勇者様は感謝のキスとかが欲しいのかな?」


「最近始めたMMOのパワーレベリングが良いなぁ。蕾ちゃん、確かランカーだったよね?」


「じゃあ今日から一週間で、勇者にしてあげましょう」


 私たちは、その後も親友として、ゲーム仲間として、さらに仲良くなっていった。


 E達の親が謝罪に来て、第1に土下座を披露したとか言うエピソードもあったが、割愛することにしよう。


 高校に入るとき、雫は父の仕事の都合で県外へと引っ越してしまったが、普段から連絡を取り合ったり、雫がたまに家に遊びに来たりしていた。 まぁゲームの中ではほぼ毎日会っていたけどね。



 そして、その三年後、私はトラックに引かれてこの世界にやってきた訳だ。 今頃雫はどうしているんだろうか。 なんだか名残惜しくなって来てしまったので、この話はこれで終わることにしよう。


 私たちのように、愚者の被害に遭う人が、一人でも減ることを願って。









―人間領某所にて―


「ふぅ、このダンジョンも次の階層でラストだね。いきなり勇者としてこの世界に召喚されたときはびっくりしたけどレベルも上がってきたらなんか楽しくなって来ちゃった。でも今頃蕾ちゃん、どうしてるかなぁ…。また会いたいなぁ…」



ツボミに合せて改変致しましたが、これは私の過去の出来事です。

私と同じ思いをする方が二度と現れないことを願ってこの話を書きました。

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