狐に認められた
今回は後半に「幕間 未開の砂漠監視員」の続編があります。
15分は倒れ込んでいただろうか。 なんか前は一時間位倒れていた気がするんだけど、今回は回復がやけに速い。
もしかして『マンティコアの加護』の効果だったりするのだろうか。
さてと、まずはドロップ品から見てみよう。
・キュウビの毛皮×1
・キュウビの霊尾×2
なんか尻尾って生々しいな…。ってか今までのドロップ品もだいぶ酷かったか。なんか空気に押されてあんまり感じなかったな。
次は宝箱だ。ゲームとかでも宝箱を開けるときはワクワクするよね。 …今回は宝箱って雰囲気の箱じゃ無いんだけど。
片方は朱塗りに金の装飾が施された綺麗な箱。もう片方は渋いけどどこか神秘的な桐箱だ。
朱塗りの箱から開けてみよう。
【霊狐の巫女装束】
キュウビに認められた者のみ手にすることの出来る巫女服。
様々な効果が秘められている。
着用すると強制的に黒の長髪となる。
一体どういうことなの…。
まずは「キュウビに認められた者」って何だ…。もしかしてあの狐、私を試していたんだろうか…。
そして「強制的に黒の長髪となる。」って何だ。確かに巫女は黒の長髪が正装だが、どういう原理なんだろう…。
それに入っていた物もコスプレとかの巫女服じゃなくてガチの巫女装束。 ちょっと気になるけど、とりあえず即行でインベントリに箱ごと収納。 そしてこれ以来、日の目を見ることは無いでしょう。
次は桐箱だ。
【霊狐の面】
キュウビに認められた者のみ手にすることの出来る面。
様々な効果が秘められている。
面をつけても視界や呼吸が通常時と全く同じという不思議な面。
桐箱には綺麗な布に包まれたお面が入っていた。
この説明だと、お面特有の視界不良や息苦しさが無いと言う事らしい。 まぁとりあえず即収納。
一通り回収した後、目前に広がる景色を眺める。
目の前は雲が晴れた光の差し込む大地。かなりの広さで円のようになっている。 そして中心部に小さなオアシスと小屋があるのが見えた。
ただのレベル上げのつもりが最奥部まできてしまうとは…。 しかもその最奥部に小屋があるって事は誰かが住んでいるのだろうか。
でもここは未開の砂漠と呼ばれ、踏破者はいないはずだ。 ならば、この中心部には一体何があるんだろうか…。
ちょっとビビりながらも、覚悟を決め、足を踏み出す。ここまで来たなら引き返すのはあり得ない。 中心に何があるのか、この目で確かめてやろうじゃ無いか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
―ちょっと前、アシトラギルドにて―
俺はアシトラのギルドマスター。フィリップだ。
種族はサラマンダー。まぁサラマンダーって言っても火さえ出してなけりゃあんまり人間や魔人と変わらない見た目だけどな。 Sランクでもあり、この辺じゃかなり腕は立つ。
急に話は変わるが、俺はこのアシトラが好きだ。
この町は治安も良く、未開の砂漠に挑む、向上心のある奴ばかり集まるおかげで活気もある。
良い場所のギルドマスターになったもんだ。
俺は誰にしたのかもよく分からない自己紹介をしながら書類に向かっていた。
毎日たくさんの冒険者がダンジョン産のアイテムの売買をこのギルドで行っている。その管理は我々の仕事だ。
おかげで、事務の奴でも人手が足りず、こうして俺も一緒に書類を作ってるって訳だ。
そんな中、ギルド内に慌てた声が響き渡る。
「ギルドマスター!大変です!」
何かあったんだろうか。 普通、冒険者同士のトラブルならこんな騒ぎにはならないだろう。
俺はその叫び声に向かって歩いて行く。
その声の主も俺の元に走っていて、すぐに出会うことが出来た。
その男はガレオという未開の砂漠監視員の西側部長の男だが、ガレオは俺をみるなり口を開いた。
「遭難者です! か細い少女が一人、第3エリアをボス部屋の方に向かって歩いていました!」
何だと…?第3エリアと言えばかなり強力なモンスターがうろついている場所だ。そこを少女がソロだと…?
このダンジョンには少し変わった仕様があって、撃派されたボス部屋は二十時間、ボスが湧かないと言う物がある。
まぁ同じ道を進まない限り、別のボス部屋にはぶつかるが。
もし仮に彼女が踏破されたボス部屋跡のみを歩き、モンスターも避けたという奇跡的なことがあるならば、冒険者では無く、外から紛れ込んだ一般人である可能性もある。
「その少女の周りにモンスターは居たか?」
「そういえば全く居ませんでした」
今回ミノタウロスを倒せそうな冒険者は潜っていない。
ならばこのままではマズい。 今からでも間に合うかどうか怪しい。
……緊急クエストだ。
ギルド内に通達できる魔道具を使って大声で叫ぶ。
「全冒険者に緊急クエスト!未開の砂漠での遭難者の救出だ!参加者は10分後に入り口前に集合すること!」
呼びかけた後、私はガレオと転移石の準備に向かった。 集まった冒険者と一緒に転移石で救出に向かう。
今ギルドにはAランクパーティーも居たはずだ。
なんとかなるかもしれない。
俺はその少女の無事を、心から願った。