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魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
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幕間 未開の砂漠監視員


 俺はアシトラギルドの役員で、未開の砂漠の監視と観測を担当しているガレオと言う。 具体的な仕事は、出現するモンスターの観測や冒険者の救護なんかだ。 たまに一般人が迷い込むこともあって、そのケアなんかも仕事の内だ。


 

 そして今は、未開の砂漠第3エリアのモンスター調査を部下二人とやっている所だ。


 こんな所まで来るとDやCランクの中堅モンスター達がまとまった数湧いてくる。


 俺やその部下は皆Bランクの上辺り。ギルド内屈指の精鋭と言っても過言では無く、ここらの魔物に後れを取る事も無いだろう。


 だが、ダンジョンにおいて油断は禁物だ。 いつ何処で何が起こるか分かった物では無いからな。



 この未開の砂漠にはエリアと言う区切りがなされている。 結構単純な物で、入り口から第1エリア、第1ボス、第2エリア…と言った区分になっていて、他のダンジョンに比べるとエリアごとの出現モンスターの強くなり方がかなり顕著だ。


 そういうわけで、駆け出し冒険者達が第1をクリア出来たからと、第2に踏み込んで大けがをするケースが多い。 だから俺らのような観測部隊が配置されるって訳だ。



 勿論、観測部隊は俺たちだけでは無い。持ち場ごとに今は20チームに分かれている。


 と言うのもこのダンジョンはかなり広い。 上から見ると円のような形で、中心に行くにつれてモンスターは強く、ボス部屋ごとの間隔は広くなっていく。


 現状で踏破できているのは第4ボス部屋まで。10年前に行われた集団攻略作戦の時のものだ。


 その作戦はアシトラを中心にモーラウッド、カルグルと言った魔物ギルドの連合に所属している町が協力して精鋭を集め、数で押して攻略してしまおうと言うものだった。 そして、勿論俺もアシトラ組として参加した。


 

 結果的には第3ボス部屋や第4エリアで脱落者が増え、満身創痍で第4ボス部屋を突破したが、これ以上は危険と判断され、そこで打ち切りとなった。


 第4ボス部屋はBランク29人、Aランク21人、Sランク2人の構成でクリアされた。 俺は当時Cランクなりたてでボス部屋の外から見ていただけだったが、アレは紛れもない死闘だった。


 ボスの『バフォメット』。奴は本当にヤバかった。


  俺たちが第3ボス部屋にて撃破した『ミノタウロス』をそのまま強くしたような奴で、両手には大きな鉈、山羊のような頭には大きな巻き角や背中にかけての毛。更に黒い翼を持った巨体。 あいつはまるで悪魔のようだった。いや、本当に悪魔だったのかもしれないな。


 

 10年前。何故そんなタイミングに急に攻略作戦が行われたかと言うと、スッパリ言ってダンジョンの変質が原因だ。


 ダンジョンの変質ってのは、その名の通り、急にダンジョンの質が変わることだが、今回、この未開の砂漠に起こった変化はかなり大規模な物で、ダンジョン自体の難易度が跳ね上がったんだ。


 それまでは中心こそ難関だが、序盤は優しく、当時に攻略作戦があればクリア出来ていたかもしれない位だったが、今ではこの有様。屈指の難易度を誇るようになってしまった。


 ダンジョン全体に起こるケースは前例が無く、今までは一部のみの難易度があがったり、下がったりする物だったのだが、今回は訳が違った。


 

 一般的に、ダンジョンの変質は一度ダンジョンクリアが発生すると元に戻るのが普通だったので、アシトラがこの難易度の急増を問題視し、それを解決するために、急遽攻略作戦が企画されたって訳だ。


 この未開の砂漠の変質にはもう少し特殊な点があって、何の関係があるのかは分からないが、中心部の雲がぽっかりと晴れたんだ。コレについては解明すら出来ていないがな。


 

 むしろそれまでなぜ攻略作戦が起きなかったかと言えばやはりここが『砂漠』だからなんだと思う。


 昼は狂ったように暑く、夜は寒い。こんな気候でこの広さだ。攻略する気も失せるだろう。 今までは難易度も高くなく、そんなに旨みも無かったからな。



 ここからはついさっきの話だ。


 俺は見てしまったんだ。 白銀の髪をサイドで結び、黒のロングコートにマフラーの女の子が一人で第3エリアをボス部屋に向けて走っていたのだ。


 だが、その後に起こった砂嵐でその女の子を追いかけるのが不可能になってしまった。 コレはマズい。



 第3ボス部屋と言えばあの『ミノタウロス』。 第2に比べ急に難易度が跳ね上がるそこは、攻略作戦でも苦戦を強いられた場所だ。


 Bランク60人、Aランク42人、Sランク3人で構成されたパーティーでもかなりの犠牲が出た相手だ。 そんなところに一人は無茶苦茶すぎる。 むしろ第3エリアを一人で歩いていることが奇跡に等しい物だ。



 こんな時のために俺たちには『転移石』が支給されている。 これは登録された場所と場所を一瞬で、触れた物ごと移動するもので、この石はギルドに繋がっている緊急時用の物だ。


 コレですぐに戻ってギルドマスターに報告、そして救助隊を編成してもらおう。今からなら間に合うはずだ。


 頼む。間に合ってくれ。


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