好況
伝説の竜に鼓舞された魔物達の闘気は凄まじく、ついに敵の数が減ってくるのが実感できるようにまでなった。
同時にツボミが右腕を失ったと言うニュースも耳に入り、複雑な心境となったが、ともかく僕は今僕にしかできないことをやるんだ。守りたい者達を守るために。
……でも今だけは死なないで欲しいものだ。なんて言ったって今の僕はツボミに召喚されているだけの身。 召喚者が死んだら僕だって消えるからね…。
ともかくこのまま押し切れば良い。そして問うのだ。何故魔物を捕らえようとするのかを、これから共に生きようという考えはないのかを。
奮い立つ兵士に機械は押され続け、刻一刻とその数を減らしてゆく。 負傷していた魔物や人間も戦えるようになった者から再び参戦し、こちらの数と戦力は増す一方だ。
更に良い知らせとして、ラネシエル側の戦力がほとんどこっちに向かったおかげで、向こうは無事に撃退に成功したという報告を皇帝が受け取った。なぜここまでこちらに執着するのか、はなはだ不可解ではあるが、とにかく今は良しとしよう。
しかしながら、最初の頃見えていた兵士達は今や一向に姿を現わさない。大型機械と獣型機械のみの戦況だ。それほど殺したわけでもなく、捕らえたわけでもない。
向こう側に回されたわけでもないだろうに、一体どこに行ったと言うんだろうか。まさか自分たちから挑んだくせに怖じ気づいて町の中に籠もっているのか? まったく、そうだとしたら舐められたものだ。
ツボミ軍団はただいま絶好調で暴れ回っている。 今戦う事の出来ないツボミからかなりの量の魔力を贈与されているようで、疲労していた奴らもやる気満々だ。 影鰐なんか獣を二匹同時に食べている。間違って味方も…となりそうなのであまり近くでは戦えないが。
当のツボミは今何をしているのだろうか。いや、そう言ったニュアンスではなく、戦いに参加しようとしていたりしないかなって思ってね。 絶対ツボミのことだから、無理して戦おうとしているんだろうなぁ…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「キリエまだダメ?獣なら良いんじゃない?」
「……おとなしく…ねてるの……」
むぅ、このお医者さん、なかなか手厳しいのである。
私としては足止めしとくぞーとか言って右腕落とされてハイ戦力外って言うのはちょっと恥ずかしいわけで、確かにダメージは共通だけど、マンティコアならまだ腕とか関係なく戦えるしって思う訳なんだけどね?
「……ダメなものは…ダメ……」
この子心の中にまでドクターストップかけてくるぞ…。 というか私はこの後が最大の踏ん張りどころなんだけど、どうしようかな…。
天使との面会、そして救済。こんな腕でどうにかなるもんか? ハッ、100%戦闘になったら終わるね。間違いないね。
ってか格好つけて包帯改造してどうにかしたけど、長い目で見たらどうするんだコレ。力も入らないしロクに動きもしない。ただ腕の形をして体全体のバランス取ってるだけだ。日常生活不便すぎるだろ。
でも痛み止めって言う超重要な役割があるから許すことにしよう。慣れてくればものを掴むくらいはできるようになるはずだ。 それ以上は……ちょっと無理かな。
こんな所で横になって回復して貰っているだけってのは嫌だから奴らに大量に魔力回してるけど、こんなもんじゃまだまだ足りないだろうな。
どうにかして戦う術は無いだろうか。腕のせいでスナイパーは安定した射撃ができないからダメだし…。どうしよう…。
寝てるしかないのか?最終決戦まで? そんなの無理だぞ。私にはそんなことできないぞ。
でも、確かにこの出血で動こうなんて普通の奴には無理だろうな。でもマンティコアの回復力なら……!
「……ダメって……言ってる……でしょ…?」
あ、ダメそうです。
こんな所で終わってしまうのか私は……。
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