戦場3
「黒龍拳:壱ノ型、“砕牙衝”!!」
飛翔して重く打ち出された拳は大型兵器の胴体に直撃し、その機構を内部から吹き飛ばす。
「ツバキ殿、まだまだ来るぞ!!」
着地と同時に皇帝の声が届き、前方からは三体の獣型が迫り来る。
皇帝は弟であるグラスティア帝国の勇者と共に、手にした巨大な大剣でそのうちの二体を両断するが、残りの一匹は二人には目もくれずに僕の方へと特攻してきた。
迎え撃とうと、再び構えを作り、一歩を踏み出そうとする。しかし、それは近くから聞こえた別の声に阻まれた。
「私も忘れて貰っては困ります。この身は我が母上様の物、それなりの戦果を挙げねば顔向けも出来ますまい」
足のないボロ外套の骸骨。ツボミ軍団リーダーの死神だ。
貴族肌というか…それすら通り越して執事のような彼だが、ぞの実力は折り紙付き。 手にした鎌を振ったような動作も見えなかったが、襲いかかってきていた獣型はいつの間にか真っ二つになっていた。
「……しかしながら、不味い事になったな。ツボミ殿の罠はほぼ尽きたと言うのに、敵の数は一向に減る様子がないでは無いか。このままでは数で押される一方だ」
「ええ。巻き添えの形で兵士は減っておりますが、機械は減少の兆しを見せませんな。このまま長く続けばあの二匹を投入せざるを得ませんね…」
どれだけ倒しても減らない、むしろ増えつづける敵。まるであのときのようじゃないか。……対多数用の技も身につけておくんだったかな。
幸いどの機体も見た目ほど固くないし、僕の火力ならワンパンだ。竜になればもっと早いんだろうが、事前にツボミと話し合った結果、ダメかなってなったんだ。
今の僕ってホラ、魔物なら誰でも知ってる大スターみたいな物なんだよ。だから、せっかく命がけで戦おうって士気がどっかに飛んでいくのはどうかな、という話になったんだ。
……僕はアイリスみたいに格好良くなろうとしてたら勝手に祭り上げられてただけなんだけどね。
後方からの攻撃とかでもかなりの数は減ってると思うし、僕たち前衛もだいぶ片付けてはいるんだけど、一向に数が減らないねぇ…。
それでも僕は退かない。沢山の魔物達が背中に控えている限り、僕は一瞬たりとも背中を見せるつもりはない。
……ツボミが退けって言ったら全軍連れて退くけどね…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数がへらない…。
聖域とか回復とかで全体サポートしながら戦ってねってツボミに言われたけど、これじゃ自分の身を守るのでも辛くなってくる…。
でも、だいじょうぶ、私が危なくなってもツボミが守ってくれるから。
私の前で腕の大剣を振り上げる二足歩行。振り下ろされた一撃は虚空から現れた光の壁に阻まれ、直後、光に反射してキラリと光る魔力糸によって切断される。
今度はもう片方の腕についた銃が私を狙うも、弾丸が放たれるよりも早く銃口に突き刺さった苦無が弾丸の経路を阻害し、弾が詰まったところを斬馬刀が切り落とす。
間髪入れずに私の後ろから飛び上がったオールバックの男が拳法のような一撃を胴体に入れ、よろめいたところを鎖が拘束。
とどめに遠方から飛来した正確無比な弾丸がメインコンピューターを吹き飛ばす。
そして私がバフのかけ直しと回復。追加で全体支援。
貴重なヒーラーだから、と私にはお姫様と忍者、そして仕事人三名がガードでついている。 ほかの回復担当にも同じように5名ほどのガードがついていた。
どの者がいつ負傷してもおかしくない状況だから、回復に専念する者がいればいるだけ有利になるってツボミが言ってた。
でも、このメンバーだととどめを刺せそうなのが男性二名しか居ないので、とどめ役はツボミか雫がやることになっている。 雫の矢はいつの間にあんなに強くなったのか分からないけど、装甲を貫いて内部を破壊するには十分だ。
それでもこの数はまずいかもしれない。どんどんどんどん増えているような気もする。負傷者も増えていく一方だ。
それに、いくら支援しても、生物に限界は来る。相手は機械。その差はどうしても埋められない。退くときは退かないと、というのは戦に長けているらしい本能からの言葉。 魔物としては、今は多少なりとも無理をしないといけない時だ。
そういえば私ってワルキューレだったね。忘れかけてたよ…。 最近守って治してだし、戦っても発狂モードの方が強いし…。 才能が別方面に極ぶりなのかなぁ…。
ともかく、この数が減ってきたと思えるまで、私は耐えきろう。
……久しぶりに遊戯王トークさせてね?
空牙団……くすぐられる…くすぐられるよ!!
なんだあのモフモフの可愛い生き物ォ!?
動物好き通り抜けてケモナーまで突っ走ってる私が手を出さないとでもお思いか?いや、無い!!(反語)
厨二心をビシッとくすぐってくるのも高ポイント。
こりゃぁ2セットくらい買っときますかねぇ…。
次回更新は2月27日(火)の20:00以降です。
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