解決策
一睡してとある結論に至った私は疑似空間に引きこもって特訓を開始した。
早く気がつけば良かったと自らを追い立て、以前のままのつまりで全力を振り絞り、そのまま地面に倒れ伏したのである。
あぁ、キッツこれ。 いつぶりの魔力枯渇だろうか。 こればっかりは何度経験しても慣れない物だ。
「え、何してるんだい…?」
顔上げられないけどツバキの声が聞こえるって事はツバキが乱入してきたって事だろう。
この失態を見られるとは…。 しかし、ここまで弱体化しているとなれば、アイリスってどれだけ強大な力を持っていたのだろうか。
しばらくして。
「さぁツバキ。魔力も回復したしここは一発練習に付き合って死んどく?」
「なんかそれをしようとして倒れてたように見えたんだけど大丈夫かい?」
きっと大丈夫さ。なんとなくコツは掴んだし。
「さぁ…出でよ!我が同胞達よ!!」
両手を広げ、空に吠える。 そして虚しく魔力切れになり、再び地に倒れ伏した。
やっぱり失敗か…。流石に無理かなぁ…。そう思った矢先だった。
「ツ、ツボミ…?君は今一体何をしたんだい?」
なんとか顔を動かしてツバキの方を見ると、私の後方を指さしながらぷるぷる震えているツバキがいた。そして。
「召還にお答えし、参上致しました、我が主よ。」
聞いたこと無い声だ。誰だ一体。
動かない体をツバキに持ち上げられ、その方向を見やる。
全身を覆うボロボロの外套。覗き出る骸骨の頭部。そして大きな鎌を持つ骨の手。 まさしくイメージ通りの死神だ。
「ツボミ、これ誰!?」
「え…だれだろ…」
死神は執事とかがよくやってる右手を胸の前に出すあのお辞儀の体勢を取ると、言葉を続けた。
「私は主の思考内で作り上げられた擬似的な存在で御座います。 主よ、私は特にイメージがはっきりしていたため、なんとか顕現できましたが、ぼんやりとした存在を100騎同時に構成し、存在を作り上げ、召喚するのは流石に無謀ではありませんか?」
「へぇ…。なら失敗していたわけではないのか。どうやったら上手くいくかとか分かったりする?」
死神は少し考え込んだ後に申し訳なさそうに話した。
「構成の段階で名前を与えてみては如何でしょうか。“名”という物はあるだけで存在をはっきりさせますので、成功率の上昇だけでなく、顕現したときの戦闘力も向上します。 しかし、100騎の名付けなどは難しいと思われますが…」
ほう、名前か。
何でも良いなら良い考えがある。
「種族名を名前に当てよう。どうせこの世界には存在しない種族だし、混同されることもないと思う」
「……と言いますと?」
「手始めに、お前の名前は“死神”だ。そんな風に、他の魑魅魍魎にも同じように名前付けをしよう」
死神の名前を呼ぶと、彼の纏う魔力が一気に跳ね上がる。どうやら効果絶大のようだ。
「いやいやツボミ!?何を簡単に話してるんだい!?」
「は?」
「……普通ね、召喚術ってのは契約した者を召喚するんだよ。生きていようと死んでいようと、絶対にそれは“存在したことのある”者なんだ。僕みたいにね。 でも、君は今、自分の思考内で、つまり存在しない者を召喚しているんだよ? それはとてもイレギュラーで…そう、普通は出来るはずも無いことなんだ。」
「別に難しいことじゃない。自分がよく知ってる物だったら材料さえあれば創るのは簡単だろう? それを召喚という原理を使って素材を省いているだけのことさ」
ツバキの手の力が緩み、私は再びずるずると地面に横になる。
「我が主よ。私からも言わせて頂きますが、私のように自我さえ確立するのは本当に異常なことなのです。一体どのような工程を踏んだのですか?」
まぁ、何だ。
疲れてて応えたくないから企業秘密って事で。
1時間遅れました。
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次回更新は2月2日(金)の20:00予定です。