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魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
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賭けの強者



 10回ほど勝負を終えた。 私が…大きく負けている…。こんなのあり得ない。今まで最強と呼ばれたこの私が…。


 私の背後には壁があり、幸い手札を覗かれることはない。よって、誰にも見られずに手札のすり替えが出来る。


 しかし、私の前に座るこの方は沢山の観衆の目があるにもかかわらず、私よりも強い手を出してきている。一体どういうカラクリだ。


 それにこの方の立ち振る舞いには異常な物がある。 表情も少し慣れてきた方の無表情な物とは違い、常に表情豊かでいて、その全てがブラフかこちらへの煽りとなっている。


「そろそろ帰らなきゃだし、ラストゲームにしようぜ」


「そうですか。残念でございます」


 これが最後。負け分を取り戻すことが第一だが、この1回でこの方のイカサマを見抜いてやろう。


 そう思っていた矢先だった。


「最後くらいはちゃんとやろうよ。お互いにイカサマ無しで。観客も私ばっか見てねぇでディーラーさんも見ろよ」


 とんでもない提案が飛び出した。 私に見抜かれたとでも思っていたのだろうか。


 しかし、私のすり替えもバレていると言う事。 その上、観客も彼女の発言によって私の斜め後ろへと移動し始めた。バレない程度の物しか。行えなくなった訳だが。


 十分だ。



「ではお配りします」


 シャッフルを行った後、交互に札を配る。


 伏せられたこのカード。スペードの10、11、12、13と何らかのカード。


 相手には2枚捨てるであろう手札が行っているはずだ。 あのままでは4のワンペア止まり。


 しかし、2枚交換すると相手の手札に行くのは6と7。その後に繋がっているのはスペードのエース。


 相手にワンペア以上が行くことは無い。 そして私の手元に来るのはロイヤルストレートフラッシュ。 今度こそ私の勝ちだ。



「ううむ。100枚ベット」


 ここに来て弱気になったか。それもそうだろう。イカサマは自分の発言のせいで行えず、手札も悪いのだから。


「コール」


 そう。そして彼女はここで2枚以上を捨てるのだ…。



「交換はしない。さぁどうぞ」


 なん…だと…?


 これでは私の元に来るカードは6だ。何も揃わない。


 エースの後に何が行っているかもわからない。ここは5枚捨てるしかない…。


 私が5枚捨て、引いたそのカードを見るよりも早く、彼女が口を開く。


「いま引いたカードは、ハートのの6、スペードの7、1、ダイヤの11、クラブの8だ。残念だったな。10000レイズだ」


 ………これには私もぽかんと口を開くしかなかった。


 この女は化け物か。 私の引いたカードを当てるどころか、私の知らない場所のカードすら記号まで合せて当てて見せたのだ。


 最初から勝てるはずもなかったのか。私ではこの方に抗うことすら無駄だったのか。


「降参です。私では貴方には勝てません。何故カードがわかったのですか?」



「上手なフォールスシャッフルだった。確かにあれは普通の奴にはわからんわ。でも、表側になったカードの位置を全暗記している私の前じゃ無駄だったね。むしろ見やすかったよ」


「んなっ!?」


「今の積み込みは甘かったな。スペードを最後にしてエースを4枚重ねれば良かったんだ。 そうすれば1枚投げても5枚投げても私は負ける。どちらにしろ1枚も投げなきゃ私の勝ちだけどな」


 カードの位置を全部覚えているなんて……そんなのもうイカサマ以前の次元じゃないか…。


「ちなみに私が勝った分は全部この店に寄付するよ。 ここは良い賭場だ。掛け金が青天井なのが何よりも素晴らしい。また来たいよ。だからつぶれて貰っちゃ困るからね」


 へたへたと座り込む私に軽く手を振ると、そのお方は人混みを避けてスルスルと出て行った。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



「ツボミ、やっぱ狂ってるね。」


「そう?この体のおかげだけどね」


 実のところ、以前の私ではカードの把握とか出来るわけが無い。 その点、知覚能力や動体視力などが並外れたこの体は些かギャンブル向けと言えるだろう。


「最初の方の爆勝ちしていたのはどうやったんだい?私の知識でも分からないけど」


「あぁ、それについちゃ簡単だ」


 右手の袖から取り出したのは1つのトランプの束。


「受付で売ってたからね。1デッキ買っておいたんだ。 あそこでのポーカーは1つのデッキを無くなるまで使うだろ?だから相手もすり替えたカードは後で使わざるを得ない。 私も同じだけど、読みで勝ってたんだよ」


 相手が消化のために弱いカードを出すときはそれよりも少し強いカードを。最強を出すときには掛け金を低くして最弱を消化に、といった感じで総合的に有利になるように戦った。パズルゲームのような物だ。



「そういえば私のキリエが見えないんだけど?まだ来てないの?」


「私のって……。まぁ良いけど…。」


「ほら。ご到着のようだよ?」


 アイリスが指さした方向には走って帰ってくるキリエが居た。


 そして。


「……ん…」


 キリエが差し出したのは1つの箱。


「これは?」


「………開けて…みて……」


 言われるがままに開けてみると、そこから出てきたのは1本の包丁。それもかなりお高そうな奴。


「………ぷれぜんと…。……いつも…の…お礼……」


 ……いままでこれほど嬉しかったことがあるだろうか、ってくらい心に響いた。


 なんか涙出てきたよどうしよう。


「こんなの貰ったら美味しい物作るしかないよね。うむ。腕によりをかけて振るおうではないか!」


「半泣きで言っても締まらないねぇ。」


 思わず公衆の面前でキリエに抱きつきそうになったのをこらえただけで褒めてほしいものである。



 さて、帰るか。 カルグルの思いでは全部キリエになったよ。




モンハンワールド良いなぁ…やりたいなぁ…。

PS4さえあれば…。


次回更新は1月29日(月)の20:00予定です。

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