ポーカー
ツボミの向かったポーカーのブースには、大きな人だかりが出来ていた。
囲まれているのは1人でテーブルにつくツボミ。一体何があったのだろうか。
「あの人、何かあったのかい?」
近くにいたおじさんに聞いてみることにした。
「俺が聞いた話だと、あの人が強すぎて、今からこの店で一番強い人が相手するらしいぜ」
ええ、ツボミやり過ぎじゃ…。
集団内にざわめきが起こる。どうやら最強のディーラーが到着したらしい。
行われるゲームはクローズドのファイブカードドロー。最もメジャーかも知れない奴だ。
「お待たせして申し訳ありません、お客様。ここからは私がお相手をさせて頂きます」
「んー。よろしくー」
ツボミが、早く始めようぜ、とアンティを払ったことによって素早く手札が配られる。
ちらりと手札を見るツボミ。そして。
「そんじゃ私は1000枚ベット。そっちは?」
んなっ!? ここではチップ1枚は金貨1枚。 あの馬鹿、なんて額を…。それほど手札が良いのだろうか。
「いいでしょう。お受けします。コール」
「へぇ、良い度胸。嫌いじゃないね」
ツボミはニヤリと笑いながら手札を2枚捨て、その分だけ引いた。 相手のディーラーは3枚交換のようだ。
「このまんまコール」
「……なかなかの強者とお見受け致しました。しかし、逃げるわけには参りません。私もコールさせて頂きます」
お互いの手札が公開される。
ツボミの手札は6が3枚、7が2枚のフルハウス。相手は3が3枚、4が2枚のフルハウス。 同じ役だが、ツボミの方がカードの強さが上。 ツボミの勝ちである。
「おー。危なかった。ともかく4000ごちそうさま」
「お次はどうされますか?」
ツボミは無言でアンティを払う。 続けるつもりだ。
再び5枚のカードが配られる。そして。
「今の4000全部ベット」
コイツやりやがった…。
「……今度は先程のようには参りません。コール」
相手も引かない。
しかし、一瞬だけ見えたツボミの表情から、僕は読み取ってしまった。
ツボミは今、新しい玩具を見つけた子供のような表情を浮かべている。しかし、そこには純粋な子供が抱くはずもないような、邪悪な闘志が籠もっていた。
ともかく、相手をカモとしか思っていないような、そんな表情だった。
お互いに3枚のカードを引き直す。
「コール」
「……即断。かなり良い手札なのでしょう。運も貴方の味方と言う事でしょうか。しかし、幸運の女神は最後までどちらに微笑むかわからない物です。コール」
ディーラーの手札には9が4枚。9のフォーオブアカインドだ。これは勝負あったか?
「うわぁ、良いの揃えるなぁ」
悔しげな顔でツボミが出した手札は2-3-4-5-6のストレート。 そして全てのカードがスペードで揃っていた。
ストレートフラッシュ。滅多に揃わない役だ。 またしてもツボミの勝ちである。
……こいつ、どこまで強いんだ…。
カジノ編は次回で終了です。
書いていて楽しいんですよね。以前から書きたいとは思っていました。
また、インフルエンザが流行りだしたようですね。
最近は冷え込んできていますし、皆様もお気をつけ下さい。
次回更新は1月27日(土)の20:00予定です。