カジノへ
なんだかんだあって、ツバキのお墓を訪れることになった。
アイリスは既に訪れていたようで、既に数本の花が束になって置かれていた。
崖の上に位置するその場所からは、崖の下、そして崖に位置するカルグルの町を一望することが出来、死んだら私もぜひこういった所に葬ってほしいものである。
「こんな所にいてもつまらないだろう?町を回ろうじゃないか。」
それを聞いて、隣にいたアイリスが「私は煽れて良いけど」だとかなんだかボッソボソ言っていたが、私は聞こえなかったのでセーフだ。
「そういえばこの町、名物とか名所とかってあるの?」
「無いねー。特に何もない。ダンジョンだけだ。」
無いんだ…。じゃあどこを案内するつもりだったんだコイツ…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
まぁまぁ、とツバキに連れてこられた場所は、大理石で出来た神殿を模したような入り口が特徴の大きな建物。入り口の左右には、黄金の像が並び立っていた。
出入りする人の姿を見てみると、きらびやかなドレスに身を包んだ女性や浪人のような風貌の男性など、かなり多様な種類だが、決まって子連れや児童などはいない。
……回りくどいから率直に言うと、カジノ、賭博場、その類いである。
「お?分かってるじゃないかツバキぃ。君も染まったねぇ」
つんつん、とツバキの脇を肘でつつくアイリスは、いつ着替えたのか、白いタキシードに身を包んでおり、胸さえなければ超美少女顔のホストのようであった。
構築スキルとは本当に便利な物である。
今日の私は死神モード。なんとなく大丈夫そうな見た目だ。 ツバキもフードを被れば凄腕に見えなくもない。 しかしキリエは舐められそうなものだ。 どう見てもあどけない少女である。
というか入ることになっている辺りがお察しである。 このメンツで大丈夫なのだろうか。
「ちょっと聞きたいんだけど、腕はどうなんだい? 下手すぎると楽しめないと思うんだけど…。」
むしろお前がどうなんだツバキよ。
「私はそこそこかねぇ。全部擦るって事は無いと思うよ」
「………運…良い…」
ほう。アイリスはともかくキリエも大丈夫そうだ。
私?なめんじゃねぇ。
「ツバキよ。此処に1つのコインがあるだろう? 今から私がコイントスをするから、地面に落ちたコインが裏か表かを当ててみてくれ。掛け金は金貨1枚。 予行演習みたいな物さ」
「ううむ。良いよ? じゃあ僕は裏だ。」
ツバキは裏。ならば私は表。 表が出るように投げれば良い。
心地よい音を立てて弾かれたコインは放物線を描きながら落下し、石畳で撥ねた後、表で静止する。
「あちゃー。やられた。」
「コイントスだってギャンブルの内。つまりコツさえ知ってれば結果なんて当然良い物になってくる。 今、私は表が出るように計算してコインを投げた。詰まるところがズル。イカサマさ」
「そういえば君は、向こうの世界でひたすら多種多様なゲームについてズルが出来るような練習をしてたっけ…。トランプでも切りながらカードの位置を操作するくらい…」
まぁ、得意である、とだけ言っておこうじゃ無いか。
法に引っかからないでギャンブルが出来るんだ。楽しまないとね。
前回でも書きましたが、海外へ行ってしまうため更新が出来ません。
具体的には次回は23日(火)の20:00になると思われます。
長らく更新が止まってしまい、申し訳ございません。