過去編:大会(後編)
試合は順調に進み、ツバキVS砂漠の長。Bブロック決勝戦となった。
「龍族の長よ。俺はこのときを待っていたぞ。その身に秘めた武勇を見せてくれ」
「勿論だ。最善を尽くすさ。」
長の恰好をしているツバキはなんとなく男っぽい口調になるのが面白い。
しかし、ツバキは見た目的に勇ましい美人と言った感じで、あまりその口調が似合うとは言えないだろう。 勇ましいとは言っても、私に会うまではメソメソしていた泣き虫君だが。
二人が構えた所で、開始の合図が鳴り響く。 長は拳に炎を纏い、ツバキは受け流しの構えを取った。
先に走り出したのは長の方。 力強く大地を蹴り出し、どんどんスピードを上げていく。
勢いに任せてツバキに接近し、その拳をねじ込もうとしたその時、ついにツバキは動き出す。
「黒龍拳:肆ノ型!『焔流』!!」
繰り出された右腕を逆手に掴んだツバキは、その勢いを殺さぬように後方へ逸らし、その後頭部に回し蹴りを放つ。
しかし、長も空中で体をひねって蹴りを躱すと、地面に着地し、追撃を繰り出すが、風を切って打ち出された拳は、ツバキのバックステップによって空を切る。
その隙をツバキは見逃さなかった。
「黒龍拳:壱ノ型!『砕牙月脚』!!」
脚に魔力を集めて繰り出された渾身のサマーソルト。 長の腹部にヒットし、後方へと吹き飛ばした。
壁際でよろよろと立ち上がる砂漠の長。どうやらとどめを刺すには至らなかったらしい。
「やるじゃないか…。この俺が一撃でここまで削られるとはな。流石だと言った所か」
素直な賞賛を口にしながら、拳を構え直す砂漠の長。
「この一撃で決めるとしよう」
両腕に纏った炎が煌めきを放ち、その大きさを跳ね上がらせる。
その瞳に静かな、激しい闘志を滾らせた砂漠の長は、真っ直ぐに放たれた弾丸のように走り出す。
ツバキもまた、応えるかの如く走り出した。
「煌炎拳!!」
「黒龍拳:壱ノ型!『砕牙衝』!!」
両者、全力で放った拳は、ぶつかり合うと共に、激しい衝撃波を産み出す。 拮抗するかに見えた衝突だったが、意外にも勝敗はあっけなく付いた。
砕牙衝は、撃ち込んだ魔力を内部で炸裂させる奥義。 打ち合った砂漠の長の拳ごと、長自身を吹き飛ばしたのだ。
そのまま光に包まれ、消滅する長。 勝者はツバキだ。
流石はツバキ。いざという時も冷静さを保てるのは大きな強みだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして決勝戦。私とツバキの対決だ。
まともに戦う気の無かった私は棄権を申し出たのだが、あえなく砂漠の長に却下されてしまった。
自分を打ち破ったものが不戦勝で優勝してしまっては格好悪いとかなんとか言っていたが、面倒くさいことこの上ない話だ。
「10秒生き残れたらツバキの勝ちで良いよ」
「大口叩いていられるのも今のうちだからね。」
互いに言葉を交わした時、開始の合図が鳴り響く。 先程の試合もあってか、観客達のボルテージは最高潮に達していた。
先程の言葉に嘘偽りは無く、実際に10秒以上生かす気が無い。
こちらの同盟にはこんな奴もいるんだぞ、と言うのを見せびらかすためにも、全力を解き放っておこう。
「顕現せよ!“断界の大鎌”!」
私の腕の中に現れたのは、禍々しい輝きを放つ、赤黒い大鎌だ。
「断界:大禍津日ッ!!」
振り上げられた鎌から、全てを飲み込むような穢れが放たれ、鎌が振り下ろされると共に、広がった広範囲を喰らい尽くす。
災厄の神の名を抱くその一撃は、世界をも喰らい、闇に閉ざす程の破壊力を秘める。 ツバキが立っていられるはずも無い。
一瞬の出来事に観客達が言葉を失う中、砂漠の長は1人、微笑みを浮かべていた。
チーズ揚げって凄く美味しいですよね。最近はまってしまいました。
そういえば、この間ピザを作ろうとしたときに、よくあるクルクル回す奴をやってみようとしましたが、即行で生地を指が貫きました。絶対無理だぞあれ。
そして、出来上がってからチーズを忘れたことに気づく事件。 皆も気をつけてね!
あと10日くらいでキリエの辺りまで改稿できるかな…。
次回更新は12月19日(火)の20:00予定です。