過去編:砂漠の町
「おお!なんか綺麗なところだね!」
歓声を上げるツバキの視界の先には、オアシスを囲むように美しく整えられた家々が立ち並んでいた。
町と言うには少々規模が足りない気もするが、今まで行った中で一番賑わっていて、町に近いのは確かだろう。
それに、ここは空に架かる暗い雲が晴れている。 これはかなり大きい事で、やはり明るい場所というのは人々の気分も晴れるというものだ。
「で、ツバキ。今回は多分、話し合いじゃ上手くいかないだろう」
「……え?無理だって分かってるところに来たの?」
…人の話を最後まで聞けと習わなかったのか…。
「今回、交渉において、連中は食料を提供できる側になる。共有ではなく、供給だ。 何でか分かる?」
「晴れてるから、砂漠で育つ食料をいつも通り作れてるんでしょ?」
「その通り。でも、こちら側からのメリットがあまり無いんだ。 だから、今回は全身を使って解決することになるだろうね」
「……どういう意味?」
両手で自分を抱きかかえるような仕草を取るツバキ。
……心がすさんでるなぁ。ちゃんとした意味で受け取れないものかねぇ。
「奴らは争いごとが大好きだ。 そしてもうすぐ、と言うか明後日、大会があるのさ」
「……僕に参加しろと?」
「いや? 最終手段は、と言う話さ。 話し合いで終わるならそれに越したことは無いし、もしそうなっても私も参加するから、負けることはないと思うよ?」
「自信満々だね?」
まぁ、実際私は強いからね。 行われるのは疑似空間を用いた戦闘だけど、そこでも死なないし。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
交渉のテーブルにはついた。しかし、やはり良くない流れだ。
「俺らのメリットが少ないように思えるんだが?」
相手に立つのはサラマンダーの男。砂漠に住む魔物を代表したリーダーだ。 砂漠の長とでも言おうか。
「龍族は皆猛者だと聞く。明後日行われる大会に出てみないか? 俺らは強い奴が好きだ。そこで武勇を見せて貰えるのならば、この話について真剣に考えさせて貰おう」
まぁ、やはりそうなるだろうな。
砂漠の民、特にサラマンダーは血の気が多くて困る。 男気だとか、恰好だとか、そんなことばっかりでどうしようもない。
「そういう訳ならば是非参加させて貰おう。あちらの従者も一緒で構わないか?」
「ああ。問題ない。手続きはこちらで済ましておくとしよう」
私の参加も受け付けて貰えたようで何よりだ。
ツバキは実際、そこそこ強い。決勝まで残るのはかなり高い確率だろう。 そしてそれは私も同じだ。
もし、私とツバキが決勝で当たってしまうことになったらどうしよう。 従者役である事は変わらないし、従者が主人に刃を向けるなど言語道断だ。
だが、少しツバキと戦ってみたい気はするのだ。 共に歩む仲間の戦力を知っておくのはマイナスにはならない。
まぁ、それは明後日までに考えておくとして、今日の寝床を探さねば。
私は別に何処だって良いし、もっと言えば寝なくたって良いが、ツバキは一応お姫様みたいなものだし、優しく扱ってあげないとね。
と言う事でツバキに聞いてみた。
「え?僕? 野宿とか死ぬほど経験したし、寝なくたって良いよ?」
……そういえばツバキは各地を旅して回っていたんだったな。これはかなり愚問だったか。
「そういえば、アイリスは強いんだよね? 明後日に備えて、僕に稽古つけてくれない?」
ほう。そう来るか。
たしかに時間も潰せるしいいか。 私としては観光とかもしたかったんだが、まぁそれも悪くない。
ならばそうしよう。 少々遊んでやるか。
昨日結局夜にしか改稿作業出来ませんでしたね。
何かまぁ…。てへぺろ(死語)と言う事で。
まぁ2話更新したしいいか。
って、もう12月半分くらい来てるの!? クリスマス特番までにキリエ戦辺りまで改稿できるかな…。
次回更新は12月12日(火)