過去編:砂漠へ
少しくらいの寄り道は許されるだろう、と言う事で、私の住んでいた家にやってきた。
「へぇ、結構こぢんまりとしたところに住んでたんだねぇ…。」
ツバキの言うとおり、私の住んでいた場所は、山の中腹辺りにある小さな家だ。
「アイリスがいつ来ても良いように、私達で掃除しといたのよ。 まぁ、私達が昔住んでた家でもあるけど」
そういえば、何故かユリアも着いてきていた。
しかし、それは嬉しいな。掃除から始めようかと思っていたところだったからね。 いや、別に滞在するわけではないんだ。しかし、昔住んでいたところが汚いというのは、なんだか嫌だろう?
「それにしても、アイリスはここに何をしに来たのかしら。 感傷に浸るため、って訳でもないんでしょう?」
流石ユリアだ。よく分かってるじゃないか。
「ここを出るときに、置いていった物があるんだ。それを取りに来たんだけど…」
「そんな大切そうなモノあったかしら…?」
べつに、大切なモノ、というわけでは無い。だが、危険なモノではある。 万が一の時、この辺り一帯を守れるように、隠して置いていったのだが、まだ見つかっていなかったのか。
隠していた、と言っても、屋根裏に入れておいただけなんだが、まぁ普通そんなところ見ないか。
埃を被った桐箱の封を解くと、そこにあったのは石のようになった一丁の銃だった。
「アイリス、これは?」
覗き込んできたツバキは興味津々のご様子。
「これの名前は“極夜”。私が作った魔道具だ」
「どんな力を持ってるの?」
「……特にないさ」
全ての物を魔素に返す弾丸を放つ、なんてあまり口に出す物では無い。
私が極夜を握ると、すぐに極夜は色を取り戻し、元の赤黒い色へと変わった。
この状態でなければ崩壊弾は放てない。石の状態でもそこらの魔銃と同等の性能はあるが、たかが知れているというものだ。
よく考えたら、普通の魔銃と変わらないなら、置いていった意味がないじゃ無いか。 まぁ、私がすぐに駆けつければ良いだけの話だが。
「さてさて、次はどの辺りが狙い目かねぇ…」
「……うーん、あんまり近場でもダメだしね。どこがいいかな。」
他種族への交渉の結果を聞くため、一度獣人族達のところに戻っても良いと思うが、いったいどうすべきか。
「……砂漠なんか良いんじゃ無いかしら」
ふむ、砂漠か。サラマンダーやワービーストなんかを中心として、いろいろな種族が集まる場所だ。
たしかに、そこの中心種族を取り込んでしまえば、魔物側陣営の統合はほぼ完璧になる。
「アリだな。それでいこうか」
「えぇ、砂漠って熱くて…。」
なんか弱音を吐いてる奴がいるぞ。
今私達がしてることは、そんなこと言ってられないような大事なんだが、それでもこのツバキは芯が通っているというか、図太いというか…。
再びエーデルト達と合流。
「ってことで、また旅立つよ」
「……ヤケに早いじゃねぇですか。もう少し滞在していく訳にはいかねぇんですかい?」
「ええ。その通りですよ。もう少しゆっくりして行かれては? ……と言いたいところですが、どうもそうは行かないご様子ですな」
「次に会ったときは、一夜を共にしましょうね?」
それは絶対にお断りだ。禁煙席でのタバコやくらいお断りだ。
次の目的地は砂漠地帯。
私の印象としては、どうもあそこの連中は喧嘩早いというか、脳筋というか、まぁそんな奴らである。
無駄なトラブルにならないことを願おう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
砂漠への道中。 既に地面はひび割れ始め、照りつける太陽が体力を奪う。……ツバキの。
「……ア゛イリス…なんで……そんな……元気なの……。」
「いやだって私、不死力のおかげで常に全回復状態だから、疲れとか関係ないし」
「……このクソチート野郎………。」
よろよろと歩くツバキに、同じ言葉を返してやろう。
お前、生まれたての子鹿みたいだぞ。
明日は久しぶりに暇なので、ちょこちょこ改稿作業やろうと思います。
と言っても3話程度だと思いますが。
インフルエンザがはやり始めそうな時期になってきましたね。
皆さん、予防接種は済ませましたか?
なんか、やってもやらなくても発生する確率は変わらないとか聞いたことありますが、かかったときの重さが変わってきますから。しっかり予防しておきましょう。
次回更新は12月10日(日)の20:00予定です。