過去編:次の場所へ
「……と言う事だ。いかがだろうか。」
ツバキは以前獣人族に行ったような当たり障りのない説明をする。 勿論仲間を売ることも忘れない。 私が言うのも何だが、ツバキは結構エグいところはエグいな。
「ふむ。状況は理解した。 しかし、その話が虚偽ではない証拠はあるのか?」
「言葉だけでは証明できないこともある。 先程の話で信用して頂けないならば、噂に聞く嘘を見抜く魔法などを使ってはいかがだろうか。」
ちょっと、ツバキさん? 事前に話し合ったときに、まぁなんとかするとは言ったが、こっちから使わせに行くのか? 少々厳しい物があるぞ?
「では、そうさせて頂こうか。」
エルフ連合の長は部下に、魔道具を持ってくるように伝える。 どうやらその魔法も魔道具を用いるらしい。
魔道具を使用する魔法ならば、どうとでも対策できる。今回はラッキーだったな。
ほんの少しして、命令された部下が、水晶玉のような魔道具を持って来た。
「言葉に偽りがあれば、この水晶が赤くなる。真実ならば透明なままだ。 先程の話をもう一度頼めるか?」
「ええ。」
ツバキが話し始めるのに合わせて水晶に魔力を送り、内部の術式を破壊する。 元々水晶は透明だから誰も気づかないと言うわけだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふむ。どうやら嘘ではないようだな。失礼した。」
「いや、構わない。 改めて聞くが、同盟の話はいかがだろうか。」
「……我々もそろそろ、外界との交流を図るべきかと思っていたところだ。 参加させて貰おう。」
まぁそうだと思った。 実は下調べでエルフ連合が少々食糧不足気味になっている事が分かっていたのだ。
連中以外は森に入れない代わりに、連中は森の外で活動できない。 そこはもう他の種族の領地だからだ。
そして、最近森の中のモンスターが減っており、それに伴うかのように植物系も減り、困窮気味になっているという訳だ。
世界的に食物が減っている今、あまり変わることはないだろうが、今よりはマシだという判断だろう。 民衆のことを思いやる、良いリーダーだと言えるな。
形はどうあれエルフ連合を仲間に引き入れたのは大きい。 魔物の中ではかなり名のある団体だ。これを機に他の少数種族が加入を申し込んでくるかもしれない。
この同盟は協力して敵を倒そう、という物だが、種族単位で見れば、それはおまけ。 真の目的は同盟を理由にして多種族と交流し、少しでも食糧事情を何とかしよう、という物になるのだろう。
次の目的地はどうしようか。 少し離れていて情報の伝達が遅い山岳地帯辺りが良いだろうか。
あの辺りはスケルトンやサキュバス、ドワーフなど、魔物らしい魔物が住んでいるはずだ。 いや、獣人やエルフも魔物らしい魔物か。
なんとかツバキを説得して、そこに向かうとしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ハァ、ハァ…。まだ歩くの…?」
「竜なんだから飛べば良いんじゃ無い?」
「あっ…そうか…。」
ただいま山岳地帯に向かって歩行中。 どうやらツバキは少々アホらしい。 顔を赤らめた後、竜に姿を変える。
「ほら、アイリス、乗って?」
「別に飛べるから良いんだけど」
「え゛ぇ!?じゃあなんで今まで歩いてたの!?」
「ツバキが歩いてるから、わたしもあわせようと思って…」
だが、私はあまり鳥の姿が好きではない。別に理由はないが、あまり人に見せたくないのだ。
感謝してもしきれないような時、代わりに見せるくらいの、そんなレベルで見せたくないのだ。特に理由はないが。
そうは言っても、翼くらいなら問題はない。今回も翼だけ具現化して行こう。
突如現れた燃えさかる翼に驚いた様子のツバキ。
「そういえば、アイリスって何の魔物なのか聞いてなかったけど…。」
「まぁ、とりあえず行こう。日が暮れてしまう」
私達は山岳地帯に向けて飛び立った。
だが、あまり良い気分はしない。 前回もそうだったが、私は面倒くさい物から消化する派なのだ。
つまり今回も面倒くさいと…。まぁそう言う事なのである。
改稿作業再開。どんどん進めていこうと思います。
ペース的には本編の更新無い日に1話分、位でいけるのが一番良いんですが、まぁそう上手くはいかないでしょう。
それと、前回の話から保身に入ってるの気がつきましたか? 次回更新が予定になってるでしょう? まぁ、許してよ…。
次回更新は12月4日(月)の20:00予定です。