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魔物で始まる異世界ライフ  作者: 鳥野 肉巻
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過去編:結託




 僕は仮にも1つの種族を束ねる長だ。 我らが龍族を危機にさらすであろう、こんな提案を受けることが出来るはずが無い。


 でも、どうしてなのか。 何が歪んでしまったのか。 


 僕はその手を取ってしまったんだ。



「なんでこの手を取ったの? 泣き虫君は一族を滅びに向かわせる気?」


 その言葉は、僕の心を貫く物だった。 でも、彼女の浮かべたなんとも言えない表情は、僕の心から後悔を消し去ってしまうほどに美しかった。


 もしかすると、僕の中の一族を思う気持ちはずいぶん薄れてしまったのかもしれない。



 最初は長になるために、強くなるために修行の旅に出た。 気弱な僕でも皆を守れるようになりたかったんだ。


 龍族の長は、その性格や長年の風習から一番強い者が選ばれる。 そのために僕は里を抜け、各地を巡ったんだ。


 しかし、僕が戻ってきたときには、里は国になり、まるっきり風変わりしてしまっていた。 だが、強者が長になる風習は残っており、僕は当時の長に挑んだ。


 何故だか分からないが、僕は強くなりすぎていたらしく、当時の長には苦戦することも無く勝利を収め、僕は長の座を得たんだ。


 だが、最初はその力故に怖がられていたものの、時間がたつにつれて僕の性格が配下にバレていき、最終的な結果は今の傀儡状態だ。


 今感じているのは後悔。そして居場所が欲しいという願いだ。



 ぽろり、と僕の頬を涙が伝う。 さっきまで泣いていたせいで涙腺が緩んでしまったのだろうか。


「あぁ、ごめんごめん。泣かせるつもりは無かったんだよ。 さっきのは冗談だから。ね?」


 焦ったように慰めてくる彼女はどこか可愛くて、僕は彼女の事がもっと知りたくなってしまった。


「……貴方の名前を、教えて欲しい。」


 少し震えてしまった声を、彼女はクスリと笑って、少し考えた後、ぽつりと呟いた。


「アイリスだよ。君は?」


 僕が名を名乗ろうとした時、ある思いがその邪魔をする。


 新しい名前を使えば新しい自分になれるのではないか? ……いや、そんなはずは無いのだが、僕は藁をもつかみたい気持ちなんだ。


「……名乗れるような名前が無いんだ。 僕に名前をつけてくれない?」



 彼女は少し困ったような表情を浮かべたが、すぐに僕へと向き直ると、真っ直ぐに瞳を覗き込んできた。


「……ツバキ…。うん!ツバキが良いかな!」


「どの辺りからツバキだと?」


「え?花は嫌い?」


 花、か。僕は生まれてこの方、武道に生きてきたからな…。そういえば花を見る機会も無かったかもしれない。


「“椿”の花言葉は誇りと控えめな優しさなんだけどね。この花は色によって花言葉が変わってくるんだ」


「………?」


「完全なる美しさから控えめな美しさまで。果たして君はどの色になれるのかな」



 ……アイリスにはかなわないな。 僕が変化を欲している事まで、今の一瞬だけで見抜くなんて。


「ツバキ、私はこれから世界を崩壊させに行く。 改めて聞くけど、私と一緒に来ない?」


「僕も連れて行ってくれるの?」


「君の意思しだいさ」


 そんなの、決まっているじゃないか。



 僕は、何も言わずにアイリスの手を取った。


 満足げな表情を浮かべたアイリスは、じゃあ、と言って立ち上がる。


「行こうか。まずは戦を潰すんだ」




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 




 魔物が牛耳る地帯の奥深く。 獣人達が内戦を繰り広げている場所に来た。


 縄張り意識が強く内乱の絶えないこの種族は、大戦が始まってもそれを止めずに内戦を続けている現状だ。


 ちょうど今は鳥人と熊人がぶつかり合っているところだ。


「いつの時代も変わらないな。もう少しなかよくすれば良いのに」


「いつの時代も、って、僕とそんなに年は変わらないでしょ?」


 アイリスの歳は僕と同じか、1つ2つ上くらいに見える。だが、時折おばあちゃんみたいな事をぽろっと言うのだ。


「……私、確実に2000は年上だよ?」


 一桁どころか四桁と来たか。


「アイリスって、冗談も言うんだね。」


「まぁ良いけど…。 私は武力にしか自信が無いんだよ。殺戮以外の解決方法、思いつく?」


 殺戮とか物騒だな。でもこんな人数相手にして勝てるわけ無いし、きっと冗談だろうね。 もしかしてアイリスは冗談が苦手なのかな?



「やっぱり共通の敵を作ることが出来れば、争いは収まるんじゃ無い?」


「へぇ、頭回るねぇ。仮想敵を作れば誰も戦わないと。そういうことか」


 別にそこまでは言ってないんだけど…。まぁ良いか。


「でもこの戦乱の中、話を聞いてくれるとでも?」


「うっ…」



「拡声魔法、使えるでしょ?」


 拡声魔法。その名の通り遠くまで声を届ける魔法で、一応僕にも使えるが…。


「私が中央に特攻して気を引くから、その間になんとかして?」


 え、なんとかって何…と言おうとしたところでアイリスは走り出してしまった。


 いや!?こんな中心に単騎で乗り込んだら死ぬでしょ!! バカじゃ無いの!?



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



 ツバキを仲間にしたのには理由がある。


 私とて、今まで見守ってきた世界を簡単に壊したくは無い。 いわゆる抑止力だ。彼女が私の枷になってくれるのを願っている。


 しかし、今の彼女はどこか弱々しい。これでは確実にこれから先を共には歩めないだろう。 だから、少しづつ彼女に強くなって貰わなければならない。


 だから、まずはヤケになって貰おうではないか。



 そのためには、敵陣の中央で目立つ必要がある。 そのためには、誰も殺さない訳にはいかない。世界のための犠牲になって貰おう。


 もし、彼女が私よりも強くなったとしても、この役目は私がやるだろう。 彼女の手を汚すわけにはいかない。




 あの辺りがぶつかり合っている中央だろうか。 まずは一撃で注意を引きつけるのだ。


 右腕に赤黒い魔力が集約する。 その具現化された崩壊は、1本の剣を形成し、その刃を赤熱化させた。


「大切断」


 剣を振り下ろすのと同時に、戦線の中央が大地ごと切り裂かれる。 激しい衝突をしていた鳥と熊の両者は、その衝撃を認知することなく、その命を散らした。


「ツバキ!今だ!」


 我ながら果てしない無茶振りだ。 しかし、彼女ならばこの程度、なんとかして切り抜けるだろうと信じている。



 ……いや、そうでもないかもしれない。


 そのツバキと言えば困惑しきった表情を浮かべ、おろおろと戸惑うばかり。


 もう少し時間を稼がなければならないようだ。




もう開き直って遊戯王の話するね!


昨日発売されたリンクヴレインズパック、素晴らしいですね…。

なんと言ってもシンクロに救済が来たのが素晴らしい。 もうこれでクェーサーがバリバリですね!! しかし、使われるのはコズミック優先であった…。

ペンデュラムも救済を貰えましたね。強すぎないバランスに留まっているのが個人的にグッと来ています。

更に、今回のパック、各テーマの主要カードが再録されており、今までバカみたいに高かったカード達が格安で揃うんですよ!

まぁ、シャドール使いの私としては低レアリティの子達が出回るのは少々複雑な気分なんですが(シェキナーガアジアシク勢)、皆は高レアリティ使うよね!


そんなわけで旧環境にだいぶ戻りつつありますね…。場合によってはもっと酷いですけど。

なので、新ルールで引退した方や今から始めよう、って方は今が始め時かもしれませんね。

ルールとマナーを守って楽しく決闘!


次回更新は11月28日(火)の20:00です。

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