報酬
ひとしきり報告を終えた後、皇帝さんが部下に三つの袋を持って来させた。
「では、今回の報酬を支払わせて貰う。少し足りないかもしれない。要望があれば言って貰えるだろうか。 そして…また協力して貰えると嬉しいのだが…」
受け取った袋はかなりの重量を伴っており、軽く構えていた私の腕は机に強打される結果となった。
「3000枚ずつ入れてある。やはり足りないだろうか」
……もうどこの国でも、トップは金銭感覚が狂っているな。 いや、それほどに重く見て貰えているのだろうか。
「こんなに受け取れませんよ!!」
「……頂いておきます」
これが勇者と忍者の反応の差である。まぁフリーの忍者とか、ニートこじらせたみたいな物だからな。これで一生暮らせるだろう。
「まぁまぁ雫殿、フリード王国に渡すような物だと思って受け取っておいてくれないか?」
「……分かりました…」
……ちょっとよく分からない理論だが、純粋な雫ちゃんは言いくるめられてしまった。
「そういえばツボミ殿は何も言わないのだな。てっきり雫殿のような反応をすると思ったのだが」
「……この半分、1500枚で情報を買いたい。その辺りは後で二人きりで頼みたい」
「む?それほどの価値のある情報など、我々が握っているとでも?」
「……握っているさ。…私の中のもう1人の私がそう言ってる」
「よく分からぬが、まぁいい。後ほど、こちらから連絡をさせて貰うとしよう」
そしてこのもう半分は忍者にあげるとしよう。何もしなかった私のせめてもの罪滅ぼしだ。
でも普通に渡しても受け取ってくれないだろうな、と言う事で、このお金で何かをプレゼントするとしよう。
……そんなにお金使うような物あるかな…。 出来るだけ使って、それでも余った分は貰っておくか…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
深夜、皇帝さんの部屋へと呼び出され、そこに向かう。
「してツボミ殿、ここまでと言うことは、ずいぶんと大事な情報なのだな?」
「……記憶を取り戻す場所について…それを聞きたい」
「………ふむ、一体何のことか…」
なんだ?しらばっくれる気か?
「なら具体的に言ってやろうか。『追憶の祠』の場所を教えて貰おう」
「……それを何処で…?」
「古の時代からずっとある場所だ。でも、私にはその時代の記憶が部分的に存在しない。場所が分からないんだ」
私の直感が正しければ、もうすぐ大戦が始まってしまう。そして、ラネシエルの内戦がその火ぶたになりそうな気もしている。 どうやら私は、自分で自分の首を絞めていたらしい。
だが、悔やんでも今更どうしようも無い事だ。 だからこそ、今できることをしておきたいんだ。
具体的にはアイリスの、大戦中の記憶を蘇らせたい。 古を生きた英雄が、どのようにして大戦を終わらせたのか、そしてそこで何があったのかを、知りたいんだ。
皇帝さんはゆっくりと頷いて地図を取り出すと、その中の一点を指し示した。
「トップシークレットなのでな。口に出すことすら出来ないのだ」
「ありがとう。助かったよ」
受け取った内の1500枚をその場に置き、ベランダに身を乗り出す。
「じゃあ私もトップシークレット晒しておあいこって事で」
体を炎が包み込む。
その炎はやがて燃えさかる翼となり、私の姿は紅の巨鳥となった。
不死鳥の姿。アイリスの力を継承したその証である。
夜に映える赤き翼をはためかせ、ベランダから飛び立つと、指し示された場所まで一直線。
ついに、私は全てを知るときが来るのか。
番外編とかでやろうかなぁ、と思っていた過去編ですが、本編内でやってしまうことにしました。
なんだか長くなりそうな感じはあります…。
次回更新は11月24日(金)の20:00です。