偵察の報告
グラスティア帝国に戻ってきた。
勿論だが、武も連れてきている。
向こうで話を聞いている暇が無かったので、無理矢理連れてきて、皆の前で話させようという魂胆だ。
「おお、ツボミ殿!帰還したか!首尾はどうだった?」
「バッチシだよ。この2人のおかげでね」
そう言って雫と忍者を目線で指し示す。
忍者は実際、かなり有能だったよな。隠し通路の発見からマッピングまでこなす有能さ。 雫は…人柱をつとめてくれたしね。
「おお!そうか!勇者雫殿、御影殿、深く礼を申し上げよう。勿論ツボミ殿にもだ」
そう言って頭を下げる皇帝をなんとか止める。
今この場に居るのは私達だけではないし、国のトップがそう易々と頭を下げるものでは無いだろう。
「して、そちらは?」
「うむ!拙者は凰雅武と申す物!今は亡き同胞達の死に場所を巡り、形見を回収しておる! 不死鳥殿とは……知り合い…?知り合いだ!ヌハハハハ!!」
「要約すると、まともなことしてるヤベー奴だから大丈夫。で、遺跡で私がやられた奴」
「なんと!そうであったか! ……いや、何故その彼がここに?」
まぁ、誰でもそう思うわなぁ…。
「いや、向こうで偶然会ってね。あいつらが持ってたアーティファクトについて何か知ってるみたいだから連れてきた」
「ふむ、そうか。では場所を移して早速話を聞かせて貰うとしよう」
皇帝さんは、私達に着いてくるように促すと、その場を立ち上がり、歩き出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
やってきたのは例の研究所。ここならば関係者以外に話を聞かれることも無いだろう。
「で、早速だけど、その丸いのは? 複製もされてなかったけど…」
「む?これはな、ぶりー…なんとかと言う物だ!! 拙者と同じ、異世界の神の力を得た仲間の持ち物でな、持ち主に呼応して炎を生み出すのだ!」
「……ブリーシンガメンだね。きっとそのお仲間さんの力は、北欧神話のフレイヤだ」
流石はこう言った物に詳しい雫だ。すらすらと言葉が出てくる。
持ち主に呼応して、と言ったな。多分連中の中には適性を持った者がおらず、壊れていると見なされたのか、放置されていたんだろう。
「そろそろ報告を貰うことは出来るか?」
おう、そうだった。完全に依頼主が蚊帳の外になっていた。
「まぁ、簡潔に説明するけど、この世界には無い技術を使って、完全に自動化された量産体制が敷かれていた。そして、例の巨大ゴーレムの他に、獣型も確認した」
「なんと!それはまことなのだな?」
「うん。ちなみに、元になったアーティファクトは回収してきたよ」
ゴトッと音を立てて回収してきたアーティファクトを卓上に並べる。雫達の持っている大型は、また別の場所で見せるのだ。
すると、忍者も自分の次元収納から、同じような量の物を卓上に並べた。
「サンプルとして、騒ぎに紛れて回収して参りました」
……忍者はあのどさくさに紛れて、複製の方も1つづつ回収してきていたらしい。
間違いなくMVPは忍者だろう。
「ふむ、ではこれらは預かるとしよう。他にも何かあれば教えて欲しいのだが」
「そうだなぁ、町中は戦前みたいだったよ? 食料品を中心に物価が上がってて、全体的に町の人にも余裕が無い感じだった」
「……ふむ、やはり既に戦争準備に入っているか…。分かった。情報、感謝する。 後ほど、今回の報酬を払うので、少々待って貰えるか?」
……私は報酬の5割を忍者に贈与するおつもりでございます。
そんなことをしていると、再び扉が開き、3人の少女が入ってきた。
その階級に似合わないような大人しい衣服に身を包んだ姫に続いて、愛しのワルキューレと、最近メガネだと言うことを忘れられているであろう黒帝竜だ。
「お姉様、ご無事でしたか? ツボミ様と御影様も、本当にお疲れ様です」
「……おお、例の槍の人もいるねぇ。」
「………ツ『ただいまキリエェェェェ!!』
キリエが何か呟く前に私がキリエに抱きつく。
皇帝と雫とツバキは目をそらし、忍者とお姫様は悔しそうな顔をし、武はヌハハハハ!!と笑っている。
「……むぅ、…うっとう…しい……」
頬をすりすりする私になすすべも無いキリエは、とても可愛かった。
しばらくして、正気に戻った私は、自らの失態を日本海溝よりも深く反省し、その傍らで幸せに浸っていた。
「……つぼみきらい…」
数日会っていなかっただけでここまで取り乱してしまうとは、私も随分キリエに依存してきているな。
まぁ反省する気は無いが。
やってしまった…。
予約投稿一日間違えるミスをやってしまった…。
本当に申し訳ありません…。
次回更新は11月22日(水)の20:00です。