死亡、そして…
もの凄く唐突だが、私は道に倒れ伏している。
次第に体の力が抜けてゆく。体中を駆け巡るのは血の気が引いていくような感覚。
そして、私の過去の思い出が走馬燈のように駆け巡る。
私、木下蕾は女子高生だった。
特にやりたいことも無く、ただゲームが好きなだけの私は、今日も帰ってから何をするか、なんて他愛も無い事を考えながら家路についていた。
いつも通り、大通りを渡るため、横断歩道を渡る。
…まぁ、結果から言えば、その横断歩道には、信号を無視し、スピードを落とさないままのトラックが突っ込んできたのだ。
信号無視は良くないんじゃ無いか? なんて暢気なことを考えている間にも、私の意識は遠のいていく。
私は体を襲う脱力感のなか、ゆっくりと目を閉じた。
目が覚めると、私は不思議な空間にいた。宇宙を連想させるような光が煌めく美しい空間。
ここは…病院じゃ無さそうだな…。 私はどうなったんだ?
自分の体を見ようとする私だったが、異様なことに、自分の体が視界に入ることは無かった。
ふと、前を見ると、私の前には一人の女性が。
私が男だったら一発で惚れそうな位の美人さん。 体に纏うその純白の服からはどことなく“女神”といった印象を受けた。
その女性は私を見つめると、柔らかな笑顔を浮かべ、口を開いた。
「お疲れ様。貴方の人生はトラックに引かれて幕を閉じたよ。ご愁傷様だね」
……全く訳が分からない。何言ってんだコイツ…。
その女性は私に構わず、そのまま続けて話す。
「ん?不思議そうな顔をしているね。とにかく貴方は撥ねられて死んだんだよ。ここまでいいかな?」
全然良くないんだよなぁ…
「つかぬ事をお聞きしますが、あなたは誰なんでしょうか?」
私はとりあえず下手に出て、状況を確認してみることにした。もしかしたら誘拐とかかも知れない。
こういう場合はとりあえず下手に出るのがベストな気がする。
「私は女神だ。そして君を今から異世界に送る」
ダメだ。よく分からん。
しかし、ふと私の頭の中にある考えがよぎる。
『異世界転生』
私のゲーム仲間が好きなジャンルだ。
確かチートをもらって異世界で無双するような奴だったと思う。
大半は勇者として崇め奉られるんだったか?
女神と名乗ったその人物は、私が考え込んでいるのを、どう受け取ったのかは分からないが、そのまま言葉を続けた。
「君の魂は死んだときにギリギリ原形をとどめていたからね。そのまま異世界に送ることにしたんだ。もちろん君に拒否権は無い。でもいろいろ譲歩はするから大丈夫だよ」
なんか分からんけど分かった気がするし、何が大丈夫か分からないけど、多分大丈夫だろう。
まぁ要約するなら、強い力あげるから異世界行ってこいって事ですね? なかなか熱いんじゃ無いか?
まぁテンプレ通りなら、チヤホヤされるんだろ? そんな経験今まで無いからなかなか楽しみではあるな。
うむ。素晴らしいじゃ無いか。
「譲歩って具体的にどんな感じなんですか?」
私は自分の考えと合っているかの確認を取るため、そう質問する。
「君が異世界でも不便じゃないように、君にいろいろな能力をあげるんだ。私は優しいからね。何か要望はあるかな?何でも言ってくれて良いんだよ?」
ほんのちょっとイラッと来たが間違いない。
どうやら私の考えていたとおりらしい。しかも何でも良いと来た。
「ならばやはり火力が欲しいですね。パワーは正義です。でも魔法なんかも使ってみたいなぁ。いや、スピード型はロマン…と言うか異世界なら空も飛んでみたいなぁ…沢山の能力が使えるってのも良いですね」
少し欲を出しすぎた気がする。
体験してみたいことが多かったんだもん…
しかし、女神はうんうんと頷き、口を開く。
「いいよー!」
何でも良いとは言っていたけどあっさりしてるなぁ。
まぁいいや。これから起こることに期待するとしよう。
女神は少し考えて再び口を開いた。
「うーん、今のをまとめると…君を魔物、そうだなぁ…マンティコアにするのが最適かな」
…今何か不穏なワードが聞こえた気がする。
思わず「は?」と声に出たが、女神は私を無視して、にこにこと笑った。
「いってらっしゃーい」と女神が手を振る。
ちょっと待って欲しい。もう一回言って欲しい。
そんな私の思いは届かず、私は真っ白な光に包まれていった。
大規模な改稿中です。
いろいろとグチャグチャになっていますがご了承ください。