苦痛と暗転
ぼちぼち始めようかと思います。
気味の悪い夢を見ていた。
それは、数十、数百の手に全身が絡め取られているというなんとも奇怪なものであった。
夢の中で自分は黒い襤褸衣を纏っていた。
それが何を意味するかはまったくもってわからなかったがそこまで状況を整理した所である事実が突如身体を襲った。
「痛っでえ……」
靄がかかったようなぼんやりとした視界の中で朧げに捉えることができたのは一帯に広がる緑色。
今にも頭の上に【?】が浮かびそうだ。
「頭…あだま?」
頭が痛くない。痛いのはーーーー
「ッガ!……ゴホッゲホッ!!」
喉だ。
激しい喉の渇き、焼け付くような痛み。読んで字の如く、正に水への渇望。
先の方に岩のようなもので出来た人工的なものが見える。
それは田舎の寺に生まれた菫には良くなじみのあるものだった。
「井戸!!!」
走る、走る、走る。
全力疾走だ。喉の激しい痛みによりまともに呼吸もできないがそれでも走った。
やっとの思いで到着。
目の前の藁に縋り付くような物凄い勢いで縄を引くと、重みを感じた。
この井戸は生きているようだった。
汲み上げた水はとても透明度が高く、どこか神秘的なものさえ感じられる。
心の底から欲したもの。それを、手を杓のようにし、ひと思いに飲み干す。
もう一杯と、まだ水の入った桶から水を掬い取り口に運んだ。と、口に含んだ二口目の水を物凄い勢いで吹き出した。
「ゴフッおろろろろろ……」
何が起こったのか。
簡単だ、クソ不味かったのである。
一口目は必死で気がつかなかったが、二口目では気分的に余裕が生まれ、その余裕で気づいてしまった。
「んだよこれ……!」
言葉を吐き捨ててすぐ、恐らくこの世で最も悍ましいと思われる苦痛を、菫は味わうこととなった。
「いたっ……いたたたたた!!!???」
刺す、千切れる、焼かれる、捻れる、折れる、潰れる。
ありとあらゆる痛みが同時に、更にゆっくりと菫を蝕んでいく。
「ああああ!!痛い!!苦し…うあ…ぁぁ……」
薄れゆく意識の中、良く秒単位も耐えられたなと菫は自身を褒めていた。
そして、意識は完全に暗転した。
書き溜めしてたやつを加筆修正して投稿していくスタイルでやってみようと思います。