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銀の鎖  作者: 仙崎無識
3/3

新人錬元師、達人侍と出会う(3)

【眠れる妖精の森】:「ガルム辺境村」からいけるダンジョンの一つ。超初心者のチュートリアルダンジョンでもある。森の最奥部に居る妖精に「亜空間の鍵」を貰っていると、森の中の一角を誰にも邪魔されずに使用することが出来る。近辺には「治癒の泉」があるので、「亜空間の鍵」を求めるプレイヤーは多い。


「眠れる妖精の森」で、シンキとカグラが戦闘訓練を始めて早一時間。

「…本当に、調合しかしてこなかったんだね」

 シンキと向かい合うカグラはぜはぜはと肩で息をしている。対するシンキは汗一つかかず、涼しい表情で立っている。シンキはカグラの調合好きに、呆れを通り越して寧ろ称賛したい気分であった。

「そのために、このゲーム始めたん、です、よ!!」

 カグラの両手に握られた色違いの液体の入った試験管がシンキに向かって投げられる。 試験管は空中でパリンと割れ、一瞬で劫火を生み出し、シンキを飲み込んだ、ように思えた。

「「薬品調合:ケミカルインフェルノ」からの――」

そこは歴戦の戦士たるシンキが難なく避ける、ことはカグラも百も承知である。

 避けたシンキの顔面にカグラが茶色い袋を投げる。

「!!」

シンキが予想外の、能力以外の攻撃方法に刀で袋を斬り払う。一瞬で真っ二つになった袋からは微細な粉末がこぼれだし、あたりに充満する。 カグラはドヤ顔で言ってのけようとした。

「―――粉塵爆は―――――」

「爆発させるわけないでしょ」

一瞬後の新規の冷静な声。「五稜青龍刀」が蒼色に輝き、薬品の劫火と粉末が一瞬で水浸しになった。

「ええ~~」

 カグラが残念そうな声を上げて草地の上にへたりこむ。

「全く…粉塵爆発とは、空恐ろしいことを平気でやってのける」

 シンキがため息を吐く。

 「五稜青龍刀」は、武器固有のスキルとして、「水神の登竜」という水系魔法が使えるのだ。劇レアアイテムの中には、こういった付与効果を持つ者も多数存在していた。

「シンキさん、鎮火するとは酷いですよぉ…。そしてその刀、一体なんなんですか……」

 へたりこんだまま唸るカグラ。自分のオリジナル必殺技を武器固有のスキルに封じられたのが悔しかったようである。

「これは、「五稜青龍刀」って言うらしい。俺の先輩から譲り受けたんだけど、作り方は知らない」

 シンキの「作り方不明」という言葉に、カグラの眼が輝きだす。どうやら、調合魂に火を点けてしまったようだ。

「それ、貸してください」

 有無を言わさぬ口調に、シンキがカグラに刀を渡す。如何に強大な能力を持っていようと、「銀の鎖」の効果に違反することは出来ないのである。

 カグラは両手で刀を握ると、何の前フリもなく「解析」を使いだした。

 刀が輝きだし、カグラの周囲を意味不明な文字記号の羅列が浮遊する。

「な……」

 間近で見る調合系能力に、圧倒されるシンキ。戦闘能力とは全く異なる能力であるが故に、そして自身が全く扱えないがゆえに、ただただぼうっとその光景を見つめていた。

 数分後、光も文字記号の羅列も消え、カグラがゆっくりと口を開いた。

「―――――解析。「五稜青龍刀」。レア度7。作成には7種類の材料が必要。「最高級の多田羅」「聖空の星屑」「七支刀」「イーストエデン・アミュレット」「虹色の宝玉」「妖刀:幻夢」「北斗七星」現時点でプレイヤー「カグラ」が入手しうる材料は、「虹色の宝玉」「イーストエデン・アミュレット」のみ」 まるでカグラではない何者かが話しているかのような解説にシンキは戦慄を覚える。

「カグラ…さん?」

恐る恐るカグラの名を呼ぶシンキ。

「う…え…はい。「解析」終わってますよ?」

 シンキが肩をゆすると、先程知り合ったばかりのカグラの様子に戻った。 解析内容を二人で見ると、シンキにとって驚愕の事実が明らかになった。

「「聖空の星屑」…?まさか、これは……」

シンキの戦いた声とは対照的な、カグラののんきな声が森に響く。

「「聖空」ってところが、「ノヴァの星空」っぽいですね~」

「「ノヴァの聖空」っぽいんじゃなくて、これは「ノヴァの聖空」の産物だ」

シンキの言葉に、カグラは先ほどまでの呑気さはどこへやら、目を見開いて絶句した。


* * * * * *

「え…ちょっと待ってください、さっきシンキさん「ノヴァの星空」に辿り着いた人は居ないって…」

驚き慌てふためくカグラを余所に、シンキが語りだす。

「これを俺にくれた先輩は、「魔法召喚士」で、刀を作ってはみたものの、自分では使えないからと俺に譲ってくれたんだ」

 「魔法召喚士」は、高度な魔法能力と全職業中唯一の召喚能力を有する「魔法使」の上位職業である。 「つい一か月前までは俺と組んで討伐をしていたのに、急に姿を消してしまって…。まさか、「空」に行っていたことがあったなんて、そんなこと俺には一言も言わなかったのに……」

 件の「先輩」の話になると表情が幾分か豊かになったシンキを見て、カグラは内心では「ノヴァの聖空」の話より驚いた。

「その先輩って方…誰なんですか?」

シンキが畏怖や憧憬や尊敬や疑念といった諸々の感情を湛えた表情で口を開く。


「…嘉納先輩、だ」

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