少女の正体と魔の邂逅
自らを「吸血鬼」と名乗る美少女。
彼女が語るのは「助けたリスク」
背負ってしまったのは、「獲物としての運命」だった
深い意識の海。
沈んでいくに連れて体がどんどん蝕まれていった。
苦しい。抜け出したい。声をあげようとしても声が出ない。助けて。誰か……。
そこに一縷の光が差し込む。それは次第に染み込んできて広がり、私の周りを満たした。
とても心地いい。そこで私の意識は途切れた。
目が覚めると、私は布団の上に横たわっていた。見渡すかぎりだと普通の家の寝室だ。
確か、私は「神の使い」と名乗るいかにも怪しい人達に追われて、命を狙われて、逃げて、逃げて、逃げのびた街の暗い路地で倒れた。
疲労で足はパンパン、お腹はペコペコ、服はボロボロってあれ?
自分の着ているものは、ボロボロになった服ではなく、白いバスローブだった。
傷も処置がされており、少し痛むが問題はなさそうだ。
「ガチャ」
動こうとした時、ドアが開いた。
「ッッ!!」
とっさに身構える。
入って来たのは、白髪の少年だった。
「あっ!目が覚めたんだね!」
その少年は嬉しそうに言った。そして目が合う。
「目が……赤い……!?」
驚いた。自分と同じで目が赤い。
「あぁこれね?これは」
その少年はなにかを言いかけたが私はたまらずそれを遮って聞いた。
「あなた…吸血鬼なの?」
少し時を遡る。
もうすぐ夕飯時なので飯を作っていた。僕はうどん、彼女の分はお粥だ。
それにしてもなぜあんなところに倒れていたのか。
なぜあんなに僕を警戒していたのか。
そしてなぜ、あんなに傷を負っていたのか。謎は深まるばかりだが、彼女の目覚めを待つしかないだろう。
時刻は19時。あれから1時間半が経つ。
そろそろ起きているだろうと思い、お粥を持って部屋に向かった。
「ガチャ」
とドアを開けると少女は起き上がっていた。
「あっ目が覚めたんだね!」
近づいたら殺すと言わんばかりに殺気をはなち、そのまま近づけずにいると目が合ってしまった。
「目が……赤い……!?」
やっぱりそうなるよなと思った。初対面で目が赤くて、髪が白いのに驚かない筈ないよな。
でもなんで髪が白いことは指摘しなかったんだ?まぁいいか。
「あぁこれね。これは」
僕が説明しようとすると彼女は横からとんでもないことを言い出した。
「あなた…吸血鬼なの?」
「えっ?」
吸血鬼?吸血鬼ってあの血を吸う悪魔のことか?
どういうことだ?全くもって意味不明だぞ!?いや待て落ち着け、落ち着こう。
まず彼女を見るんだ。彼女は何かに救いを求めているような視線をこちらへ向けている。
きっとこれは僕が『吸血鬼なんているはずないだろwww』なんて言ったらきっと殺される。
ここは嘘をついてまで吸血鬼を装うしかない!
「あぁそうだ吸血鬼だ。」
すこし真剣そうに声色を変えて言った。
すると彼女は
「ふむ。なら吸血鬼についての知識をすこし言ってみろ。」
と言った。
どうしよう。
僕が知ってる知識はあくまで「そう言われてきた」というだけに過ぎない。
彼女の持っている知識と違いがあればそこでこれが嘘だとバレてしまうのでここは…
「すまない、記憶喪失でな。自分の名前とか、自分が吸血鬼だとか、それぐらいしか覚えてないんだ。」
さて、これで乗り切ったんじゃないか?
少し考える素振りを見せる。
「わかった。助けてもらったことだしあなたを信じましょう。」
よし、修羅場を乗り切った!
「同じ吸血鬼として忠告しておく。もしかしたら私をこの場所に連れ込んだことが敵側にバレていた場合、あなたも命を狙われる事になる。きっとここも安全ではないだろう。」
ちょっと待て。命が狙われる?この子を助けただけで?
「ちょっと待て。なんで君を助けただけで僕がそんな目に合わなきゃいけないんだ!?
そもそも敵ってなんだよ!」
命が狙われる。その言葉だけで僕が怯えるには十分だった。
すこし不愉快だったが学園生活をしている方がまだよかった。
「あなたも私と同じ吸血鬼だから。それだけよ。」
少女は冷徹に告げた。
「理不尽だ!そんなのデタラメすぎる!!」
怒ってたんじゃない、怖かったんだ。
ただ怯えていた、焦っていた、その場から逃げたかった。目の前の少女の言葉が嘘だと信じたかった。
そんな冷静さを欠いた僕を彼女はそっと抱きとめる。
「大丈夫。関わらせてしまった以上あなたをあいつらに殺させやしない。
あんな場所まで来てくれて自宅に匿ってくれる人なんてそうそういないでしょ?感謝してるわ。」
とても安心する。
焦っていた気持ちが頭を撫でられると同時に和らいでいく。
「だからせめてあなたを守る努力はさせて頂戴。どのみち帰る場所なんてないのだから。」
彼女撫でる手が止まる。同時に少し震えているのがわかった。
「どういう……ことだ?」
僕は彼女から離れて彼女に問う。
「まだ……あなたには話したくないわ。ごめんなさい。」
申し訳なさそうに彼女は言った。
「あぁすまんな。まだあったばかりなのに辛いことを聞いてしまって。」
追われているといい、帰る場所がないと言ったあたり、彼女はなにか大きな存在と戦っているのだろうか。
「まぁこれからは夜道や人気のないところを通るときには気をつけることね。
私はあなたの通うところまでは目を配れない。だからもしあなたが何かに襲われた時のためにこれを渡しておくわ。」
渡されたのは赤黒い血の塊のようなペンダントだった。
「えっ……これは……?」
なにか……とても禍々しい感じがする。
「そのペンダントを握り締めて私を呼べばその場所にすぐ駆けつけるわ。」
要は発信機のようなものか。
「わかった、ありがとう。」
「ところで私はこの家にいてもいいんだよな?」
「あぁ大丈夫だ。部屋はさっき寝てた部屋を使ってくれ。この家はもともと僕以外誰もいないしな。」
「両親はいないのか?」
「いやお父さんは社長、お母さんはその秘書をやってるからとても忙しいんだよ。
家には半年に1回ぐらいしか帰ってこない。だからここにいてくれるならとても嬉しい。」
「ありがとう!なら私が眠っていたあの部屋を私は使えばいいのかしら?」
「あぁ、そうしてくれ。後で…」
僕が続きを言おうとした時勢い良く窓ガラスが割れる。
「なんだ!?」
ここはマンションの1階。
敵が襲ってきてもありえなくはない。
割れた窓ガラスの向こう側、広い庭の真ん中にまるでテレビや本で見る宇宙人のような浮遊生物と、それを囲うように4匹の黒い狐の姿があった
読んでいただきありがとうございました。投稿遅れてほんとにもうしわけないです。
さて、今回で少女の正体が明らかになりました。個人的にこの少女のイメージは容姿としては少し幼い女子高校生、ちょうど灼眼のシ〇ナのシャナを大人っぽくしてみた感じで書いていました。吸血鬼の少女ってとっても好きなキャラ設定だったので自分が書いてて飽きないようにこの設定にしました。
次の話で魔の正体や少女の秘密について触れて生きたいとおもいます。
できるだけ早めに投稿するので楽しみにしていてください!