プロローグ
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底知れない深い闇を連想させるような漆黒の巨大な城。光を拒絶するかのようなその真っ黒な姿はありとあらゆるものを飲み込んでしまうのではないかと、何とも言えない不安を煽る。
そんな闇の巨城の前に七人の男女がいた。皆それぞれが不安と恐怖の色はあれど、光に満ちた真っ直ぐな意志を持った瞳を宿している。
彼ら彼女らの正体は勇者と聖女を筆頭とした、人類最後の希望であり人類が誇る最高戦力ーー勇者パーティーである。
その勇者パーティーの目的はただ一つ。全ての闇の元凶ーー魔王を打つ事である。そしてその魔王は今目の前の城の中にいる。
やっとだ。やっとこの戦いが終わる。
だが、全員の足はまるで地に生えたように全く動く事が出来ない。それは、目の前にいる白い仮面を付けた漆黒のローブに身を包む人物がいるからだ。
「魔王の右腕、賢帝のユーガ」
勇者パーティーの全員が息を飲む。
魔王を守る魔王軍最強の六人の柱、六覇星の一柱にして六覇星最強がそこにいるのだ。しかもまだ、城にも入っていない状況でだ。
ーーー何かある。
そう思うのは相手が“あの”ユーガだからだ。他の六覇星ならそういう思いには至らなかっただろうが、ユーガなら全くの別物だ。
その理由は多々あるが、その中の一つが類い稀なる英知の持ち主だと言う事だ。
魔王軍にははっきりと言って脳筋の筋肉バカ共しかいない。力こそ全てな完全実力主義者の彼らに頭を使って戦おうと言う概念すらない。ただ腕っぷしにものを言わせる考えしかない彼らは、その力こそ脅威だが協調性の無い利己的な彼らに集団で挑めばその脅威は飛躍的に半減する。
しかし、そうやって悪魔達を狩っている最中、ユーガは現れた。
彼はその英知を使い次々に悪魔や、人間達に虐げられていた亜人や奴隷達を助けていき、そして魔王軍を誕生させた。彼がどうやって彼らをまとめあげたのはさておき、彼は他の悪魔達とは違う。事実上、彼が魔王軍の創始者と言っても過言ではない。
ありとあらゆる策と知力を用いる彼はまさに魔王に次ぐ脅威、それが眼前に堂々と対峙している。それもたったの一人で。
七対一、明らかに勇者側が有利だ。他の悪魔なら即戦闘に入る。“他の”悪魔なら。
「よくぞここまで来た。勇者御一行」
仮面のせいかくぐもった声で言うユーガに警戒を強める勇者パーティー。
そんな彼らにユーガは少し明るめに言う。
「突然の事で申し訳ないが、どうだろう?。私から君達に提案があるのだが」
その言葉に警戒と困惑をする勇者一同、その中から「提案?」と声を発したのは白銀の鎧を纏う青年ーー勇者アルドだった。
「聞く必要なんかねーぜアル。悪魔の言う事なんざろくなもんじゃねー」
アルドの隣にいる三十くらいの茶髪を短髪にした軽装備だがその下からでもわかるはち切れんばかりの筋肉をした男ーーバロードは相手を挑発するような口調で目付きを鋭くする。
「そうよ。あんな事言ってるけど罠よきっと」
バロードに続くように赤いローブに身を包んだ二メートルはあろう杖を持つ少女ーーリリエは眉を吊り上げて言う。
「待って下さい」
そこへバロードとリリエを制するのは真っ白な純白の修道服を来た綺麗なブロンドの髪を持つリリエと同じ十七ぐらいの少女だった。
「どういう内容なのか。聞くだけ聞いてみましょう」
「エリー!。駄目よそんなの、相手はあの賢帝のユーガよ」
「そうだぜ聖女のお嬢ちゃん。あんな奴の口車に乗るこたぁねーぜ」
バロードとリリエが慌てた様子で抗議の意を唱えているとそこに勇者アルドが「エリーの言うとおり聞くだけ聞こう」と真剣な表情で言った。
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