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三話『迷いの森OF THE DEAD』

「んっ……?」

ハロルドが目を醒ますと、目の前には満点の星空が見えた。

周りは木々が囲んでいて、どうやら森の中らしい事は判る。

(ちょっ――)

ハロルドは唐突に昔祖父から聴かされていた話を思いだし、飛び起きる。

改めて身を起こして確認すれば、レーネの姿はない。

だが、起こした覚えの無い焚き火が煌々と輝いていた。


「あ、起きた? 犬に噛まれてオチる(気絶)なんて、つくづく虚弱ね貴方……」


「れ、レーネ! ビックリするじゃないかぁ……」

彼の背後から現れたエルフ――レーネは心底呆れたように呟く。

やはり腰にはしっかりとリボルバーがホルスターに挿されている。

「貴方ね、そんなんで魔王倒せるわけ? さっきも言ったけど、そんなんじゃ衛兵が行った方が千倍マシよ」

剣を抜く前に犬にやられたのはレーネも知っている。

「うるさいよ。それより、なんでこの森に入ったの!?」


「ハァ? 貴方が向かってたんじゃない」


「そうだけど! この森は迷いの森だよ!? 隣国が僕達の国に攻め入れないのは間にこの森があるからだって言われてる位だ!」

ハロルドが言っている間に、まるで自己主張するように森が白い霧に包まれる。

まるで綿菓子のように濃い霧だ。

――視界も遠くまで見えるほどは無い。

「ここで何人行方知らずが出たと思う?」


「さぁね、グールの類いは全部撃っちゃったから数えよう無いわ」

レーネはそんな冗談に聞こえない冗談を吐いて、突然リボルバーを引き抜いた。

リボルバーの銃口を見てハロルドは漸く叫び、後ずさる。

正確なリアクションだ。

「な、なにするつもりなのさ!」


「黙って」

そしてまた突発的にレーネはハロルドを押し倒し、覆い被さった。

何もかもが突然過ぎるレーネに対し、全てが遅いハロルドは全く付いていけていない。

(――慎ましやかな膨らみが……じゃない、じゃない! 僕も少しは勇者らしい所を……)


「2、4、6、8――もっといる。ハロルド、貴方も剣抜いて! アンデッドどもが集まってる」

銃口を使って、森の木々を指していったレーネ。

間からは死に損ねた人間達――云わばグール達が彼等目指して包囲網を狭めていた。


「無理! あんなのと戦えないよ!」


「さっきの犬っころより簡単よ! こうやって――」

レーネがハロルドを下敷きにしたままモデル53の引き金を絞る。

彼の耳元で激しい炸裂音が響き、耳なりと共に脳が揺れるような感覚に襲われた。

「――頭を狙って攻撃すれば……こら、寝るな!」

銃声での一時的な難聴と慣れない騒音にまた気を失いかけたハロルドだったが、モデル53のグリップが頭に叩き付けられて彼は寸での所で意識を繋ぐ。

「どうせ森を抜けるには『太陽の方向うんぬ~ん』でしょ? 朝まで待てないわ。とにかく闇雲に突っ切るわよ」


「なんで知ってるのか判らないけど、出来るかな……」

勇者ハロルドは剣の柄に手を掛けるが、不安から剣を抜くことが出来ない。

「『やらなきゃ死ぬ』。覚えておいて損はないわよ、へっぽこ勇者さん」


「なんで清純の象徴とまで言われてるエルフの少女にそんな荒んだこと教わってるんだ……ちくしょう!」

ハロルドは一気に剣を鞘から引き抜くが、銅製の剣はかなりの重量がある。

重さを乗せればアンデッドなど真っ二つに出来るが、彼には振り上げることすら無理そうに見える。


「持ち上げられないなら振り上げるんじゃなく、薙ぐと良いわ。何も出来ないより万倍マシよ」


「わ、わかった! やってみる」

――こうして二人は迷いの森を抜けるため、アンデッドの群れの中を突っ切る事となった。

頑張れ貧弱代表!

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